『運ですよ』 と答える理由 #ヅカリズム
よくある会話
宝塚歌劇団に居ましたと話すと、
「宝塚ってすごい倍率なんでしょう?」
と言われ、
「いやぁ、運が良かったんです」と答える
いやいや、
運だけなわけないやろ👋て思われますよね?
はい。確かに運だけなわけないです。。
本気で入りたい受験生は努力は当たり前としてしているのではないでしょうか?
でも、
「はい。努力のたまものです」
とは言えないのは、努力しただけで入れると言いきれないのが宝塚だと思うからです。
"東の東大、西の宝塚"
と言われている宝塚歌劇団
毎年タカラジェンヌになる夢を抱くたくさんの受験生達があの宝塚の大階段を降りることを夢みて挑戦しています。
私がなぜ運だと言うのか?
私が思う宝塚受験について語っていこうとおもいます。
※これから話す話しは、約20年間宝塚に携わり、様々な角度からみた景色からみた私の見解でのお話しです
幼い頃からたまたましていたこと
幼い頃の習い事や習慣は
なかなか自分で選べない
だからこそ、たまたましていた事がこんな風に宝塚受験に活かされたと感じる事を話していこうと思います。
🎹
ピアノ
歌劇には音楽は必要不可欠。
ピアノを小さな頃(4歳)から習っていたことで、音感、音楽に対する感性が鍛えられました。
メロディーから生まれるイマジネーションもとても重要だったと思います。
例えば、
「子犬のワルツ」という曲だったら、弾いている時に、草原にいる子犬が走っていたりそこで曲調が変わった時には子犬がある出会いをしたり、、、と。音楽性により物語を作ってイメージをしながら弾けるようになるのです。
すると曲ごとに見えない世界が広がるんです。
ファンタジックな世界をステージの上で描き続ける宝塚にとって"イマジネーション"はとても必要とされます。
また、譜面が読める事は歌を学ぶ時にとても役立ちました。
更に、宝塚を受けると決めた中学一年生からは、コールユーブンゲンという教科書を暗記するまで猛特訓し、新曲試験に向けて毎日連絡をしました。
あとから知ったのですが、宝塚の試験内容に「新曲」という、音程、音感、リズム感の試験の成績が、私は成績が1番だったようで、ピアノに触れさせてくれていた両親に感謝しています。
🎬
映画
映画好きな両親と弟と毎週水曜日には必ず学校帰りにレンタルビデオ屋さんで待ち合わせをし、両親が選んだ映画と私たち姉弟が選んだ映画を家族で見て、映画談議をしていました。
宝塚は様々な世界を旅するかのように、フランス革命や、インド、和物にブロードウェイミュージカル等行ったこともないような世界の人物にコスチュームと共に扮装し、舞台に立ちます。扮装だけでなく、動かなくてはならないんですね。
その為、タカラジェンヌは比較的洋物のニュアンスを持ち合わせている人材かも見られているのではないかと感じます。
映画をとおして私は、海外の俳優さんの仕草、社交界から砂漠までとにかく実感できない世界を旅できました。
また、宝塚の試験課題の中に、声楽の試験があります。内容は"イタリア歌曲"。イタリア語または日本語でザ・クラッシックの歌を歌います。男役志望だろうが娘役志望だろうがみんな歌います。きっと声楽の基礎で実力をみるためでしょうか。一応キーはいくつか選べましたが。やはりヨーロッパの文化に映画を通して文化や発音に触れていたことはここでも役立ちました。
🏊♂️
水泳
私は幼稚園の頃スイミングスクールに通っていました。
水泳は今ミュージカル俳優さんの中で流行っているトレーニングで、肺活量が鍛えられるそうです。某ミュージカル俳優さんは開演前に必ずプールへ行く方もいらっしゃるとか。
臆病だった私は水が怖くてあまり好きではなかった記憶がありますが、肺活量や呼吸への意識などは実際に歌に活かされていると思います。
💃
ダンス
両親曰く、私が4歳の頃目を輝かせたのが
"モダンダンス"だったそうです。
そんな私は習った内容よりも、母にレッスンの行きに口頭で頼まれた野菜の買い出しを記憶して、帰りに八百屋で買ってくるという記憶力の訓練を思い出しますが🥦🍅
モダンダンスは音楽の雰囲気を掴んで自由に表現力を使いながら舞うダンスです。
私はモダンダンスのおかげで顔で踊るガンサーよりにはなりましたが、宝塚では表現の豊かさが必要とされるのでその点で良かったと思います。
ただ、試験課題にはクラッシックバレエもあるので、クラッシックバレエはしっかり学ぶことをオススメします。
また、型にはめる基礎の美学のバレエだけでは、今度は崩して踊るダウン系のグルーブがなかなか作りにくくなるので、両方習えていたら最強だなと思います。
私の両親は私を宝塚に入れたくて色々な習慣や習いごとをさせていたわけではありませんでした。ただ、本人がなにに興味を持つかを観察しながら、広い視野で世の中を見て欲しかったそうです。
いくら親が娘を宝塚に入れたくても無邪気な青春時代を受験に注ぐ程の本気の情熱がないと、なかなか宝塚への道は難しいかと感じます
幼い頃の経験や記憶は大人次第なのかもしれません。。
実際に宝塚受験で審査される内容
私の学年87期生は
倍率23.7倍 合格者45名
こんな顔ぶれです
https://takaradukawiki.com/the-87th-class/
入学試験は三次試験まであり、はじめに東西二ヶ所で一次試験、合格したら宝塚の本拠地の宝塚音楽学校にて二次試験、三次試験がありました。
第1次試験
面接
第2次試験
面接
歌唱
舞踊
第3次試験
面接
健康診断
入 学
【第1次試験】宝塚音楽学校または東京会場にて
【第2次試験、第3次試験】は、それぞれ第1次・第2次試験の合格者が対象(宝塚音楽学校にて実施)
審査内容
面接では、容姿、口跡、動作、態度、華やかさ等、宝塚歌劇の舞台への適性を審査します。
歌唱試験では、課題曲の歌唱により、声量、声質、音程等を審査します。加えて新曲視唱により基礎的な読譜力を審査します。
舞踊試験では、リズム感など基本的な運動能力や柔軟性、ならびに洋舞の適性等を審査します。課題は、当日試験場において本校生徒が模範演技を示します。
※宝塚音楽学校HP引用
さすが容姿端麗と言われる『宝塚』。
ご覧頂いたとおり、審査も面接がとにかく多いですね。
面接点は容姿、体のラインや声の印象、滑舌、更に『華』『宝塚らしさ』をみられる様な自己紹介やくるくると全角度から全身を見られます。
審査員の先生方は数々のタカラジェンヌを育ててきていらっしゃるので、その子が舞台に立つ姿がイメージ出来るかという部分も大きいと思います。音楽学校二年生の本科生の時に受験のお手伝いをした際に、「わぁ!なんじゃこのキラキラパワー!」と思った受験生はみごとに受かっていました。
生まれもった華やかさもですが、それに劣らず内面から雰囲気を醸し出す子も合格していると思います。
つまり、
舞踊、歌唱、新曲はやはり努力ですが、"華"がズバ抜けてあれば、実力はまだまだでも育てようという考えで受かる事もありますし、声楽や舞踊の成績が良い場合に合格するケースもあるわけです。
しかし、受かるよ絶対という子が落ちたり、難しいかなぁと思う子が受かる場合もある。
審査員の先生方も人間ですから、それぞれの目線での点数のつけ方次第でもあると思います。
更にいうと、宝塚を受けることができるのは
"中卒から高卒の最大4回まで"
なので、
中卒で受けた場合、
もう少し実力がつくよう来年まで成長や様子を見てみたいと思われた場合は一度落とされる事もあるらしく、
高一で受けた場合も
宝塚への想いがどれだけあるかを試されて落とされたり、
毎年受けにきた際の成長や上達をみて4回受けて最後にやっと受かった子までいるわけです。
この様に、中卒1発合格者から4回目合格者までいる宝塚の受験。
だから、宝塚に入りたいと思った以上は、受験年齢最後まで諦めずに毎年成長しながら受け続けてほしいなぁと思います。
更に宝塚は
花、月、雪、星、宙と五つの組に分かれて全てがバランス良いピラミッドを作ってローテーションをくんで公演しています。
つまり、毎年初舞台を踏みこの5組に組配属され、振り分けられるのです。
だからこそ40名〜45名の合格者の実力のバランスや持ち味のバランス。
・今年はダンスができる子を多めにとりたい!
・容姿端麗華やかな未来のトップになるような面接点の高い子を多めにとりたい!
・歌唱力ある子をとりたい!
・全体的に平均点の高い優等生をとりたい!
・背の高い子をとりたい!
など、必要とされる人材が年毎に違う可能性もあるなど、色々なタイミングがあるとも聞いた事があります。
私が合格した当時を振り返り、メンバーをみていて感じるのは中卒、高一はパワフルで物怖じしない勢いがあり、伸び代がありそうな子が多く、高二や高卒はしっかりしていたり、大人で、だいたい体の出来上がる年頃だからか、容姿端麗で成績も良く全体的にバランスの良い子が多かった様に感じます。
宝塚に入って感じたコト
先程からの話しでご理解いただけたかとおもいますが、そんな色々な審査の中、沢山の悔しい思いをされた方々がいる中で合格できた私は"運がよかったんです"と言ってしまうんです。
宝塚になんとしてでも受かりたい子たちは、当然努力をしています。そんな中から入れるのは、本当に色々なタイミング、運なんだと思います。
だからこそ受かった人は沢山の想いを背負ってあの華々しい宝塚のステージに立つために更なる努力をする事は大切ですし、悔しい思いをされた方々もまたその夢を持ち続けた時間を糧にし、活かされて未来で輝いていらっしゃることと思います。そんな共に受験時代を過ごし、別の道でキラキラ輝いている仲間が私の周りには沢山おります。
だからこそ、
結果がどうであれ、若い時に目標に向かいながら沢山の自分の感情と向き合うことは、人生にどの世界においてもとても貴重な経験であり、がむしゃらになって挑戦した事に無駄な事はないと私は思います。
宝塚に入った私は
その後、身長や女顔と言われるコンプレックスと戦いながら私の男役人生が始まるわけですが、、、。
またそんな話しもnoteでしていけたらと思っております。
koma