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歴史は繰り返すことはないが韻を踏む。一身独立して一国独立す。あなたには国民としてのプロフェッショナルリズムはあるのかが問われている。

『見えない戦争』を読む。

新書は、専門書を読む前の入り口であったり、できる限り新鮮な情報をまとまった形で届けるのが本来の役割だ。その点、本書は新書本来の役割に徹していて清々しい。

田中さんは、言わずと知れた外交のプロフェッショナルで北朝鮮の拉致問題解決に向けて、現場で任に当たっていただけあって、当時の状況説明に関する記述には非常にリアリティがある。

で、この本の発行は2019年11月であり、このタイミングで本を出すことの意味は、恐らく第二次朝鮮戦争の可能性が高まっていることへの警鐘ではないかと思う。特に現政権に忖度して機能不全となっている官僚達への叱咤激励のメッセージではないかと思えた。

米中韓ロといった日本の周辺国が、自国ファーストの国益優先の態度をとり、しかも政治はポピュリズム化し独裁の様相を呈する今、日本は思考停止に陥るのではなく、対話を通した平和外交を展開し、目に見える有事である北朝鮮との軍事衝突が起こらないように外交僚達は自ら行動すべきであることを繰り返し述べている。

日本が自主独立国家であり続けるためには、細心の注意を払いつつ、近隣諸外国との政治、経済の両面での協調関係維持への努力を続ける必要があり、それを怠れば、大国の思惑に飲み込まれた日本は池に落ちた枯れ葉のごとく波に飲み込まれ沈んでいってしまうだろう。著者の痛々しいまでの危惧が文面から伝わってくる。

ただ、読者に対しては、国や官僚をあてにするのではなく、自分自身がまずはプロフェッショナルにならないとサバイブはできない世の中だと説いている。

その国の政治のレベルは、その国の人民のレベルに比例するとよく言われている。この国の政治をダメだとするのであれば、その原因を作っているのは、我々国民である。

明治維新の頃、かの福沢諭吉先生は、『学問のすすめ』の中で、「一身独立して一国独立す」と説いた。このフレーズは、『坂の上の雲』の中で秋山好古も口にしている。 国や御上に依拠するのではなく、自分自身がインテリジェンスを持って行動しなければならないと説いている。

思えば、あの頃から現代まで、我々が「人民としてのプロフェッショナルリズム」を確立した時代はあったのだろうか。個々は優秀であっても、集団となると空気を読みすぎて、平凡な能力しか発揮できなくなるというジレンマから終ぞ脱却できずにいるのではないだろうか。

目に見えない戦争が可視化され、その災難が現実の火の粉なって降りかからぬよう、仮に降りかかっても、その火の粉を払えるよう。私達は普段から不断の努力をしておかねばならない。著者の主張は明確である。我々に残されている時間はあまりないのかもしれない。

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#一身独立して一国独立す

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