AIと人間の狭間で
愛読する雑誌Numberで初の将棋特集と銘打たれれば、釣られて買ってしまうではないか。でもNumberWEBなどを見ると、ちょくちょく将棋の記事はあるので、逆にいままで特集が組まれていなかったのが不思議なくらいだ。
特集が組まれたのは藤井2冠が登場したというのが最も大きな理由であるが、AIが将棋に与えたインパクトというのも相当に大きいと思う。その中でもABEMATVでの将棋放送は特筆に値するかなと思う。対局中、両者の勝ち負けの情勢と次の最善手をAIが予想し、それが画面の上部に表示される。フォーマット的には、ストリートファイターなどの一対一格闘技ゲームの画面フォーマットを踏襲しているといえば想像がつくだろうか。
いままでのNHKの将棋解説では、解説者のコメント(うーん難しい局面ですね。とか、米原先生の「うぉー」という叫びなど)からだけでは、一流プロ棋士同士の対戦の面白みや凄さが理解できなかった。が、ABEMAの将棋放送は、全く将棋がわからない人でも、藤井2冠の強さを数字でリアルタイムに把握できるようにしたのだからこれは革命的だ。いわば将棋番組のDX。一気にショーアップさせて誰もが楽しめるエンターテイメント性を将棋番組に持ち込んだといっても過言ではないだろう。
Numberの特集の中で、面白いと思ったのが、豊島竜王のルポ。豊島竜王といえば、以前情熱大陸で電王戦の模様を放送していたときの中心人物で、あの時はAIと対峙し、そして勝利した。その後、豊島竜王はAIと対峙するのではなく、研究相手として人ではなく、ソフトを選び、AIと対話することを選んだ。そうして、竜王、名人などのタイトルホルダーととなったわけだが、今回名人失冠にあたり、研究相手をソフトから人間に戻そうかと考えているとのことだった。
時として、AIを上回るかもしれない藤井2冠の登場で、もっとも好敵手と目される豊島竜王がAIから人間回帰を模索するというのも非常に人間臭くて面白いと思ったのだ。