大学で勉強する時のワザ その9
注:この文章の経緯についてはその0をごらんください。その8の続きです。
あまりにも長いことだらだらと同じタイトルの文章をあげてきてしまいました。私は,大学教員をしていた頃に講義していた内容を風化させないためにまとめを作る目的でnoteに投稿をしています。このタイトルのその0からは,大学初年次の学生に向けて「こんなことを意識して大学の講義を受けるといいよ」というつもりで話してきたことをまとめています。これまでに「講義を聞く」「文章を読む」「情報収集」「書く」などについて触れてきました。今回は「プレゼン」について取り上げたいと思います。
大学の活動では,人の前で何かを発表する,プレゼンの機会というのがわりとたくさんあるのではないかと思います。人前で話をするという意味では「スピーチ」「トーク」「ネタ」などいろいろありますが,ここでは「情報伝達」を主目的とする発表について扱います。「トーク」や「ネタ」では,話の内容が伝わる以上にそこから驚き,笑い,感動など様々な感想が生まれます。そういう話を作る技術はすごく欲しいですけど私にはないので,「ややこしい話をなるべくコンパクトに伝える」という,研究発表に特化したプレゼン作りについて,私のやり方を紹介します。
プレゼンをつくる,というと,パワーポイントのスライドを作ることと同じと思っている方がまあ多いのではないかと思います。プレゼンは口頭発表で,スライドはプレゼンの際に聴衆の理解を助けるための視覚資料の一つです。ですから「スライド作り」は「プレゼン作り」の作業の一部分にすぎません。プレゼンをやれ,と言われていきなりPCの前でスライドを作ろうとすると効率よく作業することは難しいです。それは,「プレゼン作りの難しい,頭を使う作業」を「頭の中のイメージだけで行おうとするから」です。プレゼン作りの作業工程(あくまで私流ですけど)は以下の通りです。
「プレゼンをしなさい,持ち時間 x 分」と言われたら
「お題」(何について話すか,ざっくり)を決める。発表のタイトルでなくて良い。与えられたテーマに沿っていて,かつ,「自分の体験/経験」を含むものがよい。
材料を集める。関連するものを幅広く。文献だったり,写真だったり,自分の記録だったり,記憶だったり。使えそうなものを考えておく。発表できるのはここで集めたもののほんの一部であることは,あらかじめ覚悟する。
聴衆の情報を集める。聞く相手が誰かによってプレゼンの内容は変わる。年齢,人数,予備知識の有無など。研究発表なら,同業者ばかりなのか幅広い分野の人が聞くのか,など。
話し始めを決める。聴衆の予備知識とテーマが重なる点から始める。話しはじめは必ず聴衆が知っている話題から。
ゴールを決める。スタート地点が決まって,講演時間が決まると,どの内容まで話せるかが決まる。自分の話したいところまで持っていけない,ということも多々ある。潔く諦めることが肝心。この段階で,聴衆にこれだけは届けたいという情報を決めておくと良い。「お持ち帰りメッセージ(take home message)」と呼ぶ。
ストーリーを作る。スタートからゴールまで,なるべく最短で結ぶように序論,本論,結論の形を整える。お持ち帰りメッセージの理解に必要ない情報はなるべく省く。複雑な内容を短めの時間で発表する場合は「はじめに結論,後から理由」のパターンで作ると理解されやすい。ネタバレ上等。行き先を教えてから道案内をする方が親切,あるいは,荷物を渡す前に適切な棚を用意しておく,というのと同じ。
スライドをつくる。ここまでの作業ができてから初めてPCを使ってのスライド作成に入る。最初の作業はスライドの枚数を決めてしまうこと。私のルールは持ち時間1分につきスライド1枚さらに表紙とまとめ各1枚。式にすると(x+2)枚。少ないのはいいけど多くなるのは良くない。この枚数に上で作ったストーリーをはめ込む。
スライドを校正しながら,話し原稿を練る。読みの原稿は作っても作らなくても良いが,作っても当日それを読み上げない方が良い。文章を読むとどうしても早口になるので。
こんな感じです。次回,どうしてこの手順でやると良いのかの理由をお話ししたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?