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日本人もフランス人も同じ


前回に続き、もう少し仕事の環境について。


会社には数百名の従業員に加えて、私のような日本からの出向者が数名。
私が所属する部門は、わたし以外は全員がフランス人です。


いわゆる定時は朝8時-16時半ですが、私の契約に時間外業務の概念はありません。
なので、私が働きたいように働いています。

朝7時に出社(朝型人間です)、17時頃に退勤。
繁忙期でなければ、これ以上はなるべく働かないようにします。

家に戻ったら本を読んだり、
筋トレをしたり、
人と会ったり、
妻と話したり、
半身浴してみたり、
フランス語の勉強をしたり、
料理したり、
バカンスの行き先候補を探したり(これ最高に楽しい)。

やりたいことはいくらでもありますので、こういう時間も自分に与えています。


駐在初期に限れば、7時出社、退勤は21時-22時頃だったでしょうか。
初めのうちは仕事にも生活にも慣れるのに時間がかかるからです。
また、この頃はまだ妻もフランスに合流しておらず、食事をはじめとした家事、
賃貸物件の契約や行政手続き、車の購入(私は車通勤です)などを並行して1人で行っています。

加えて、当時はCOVID19のワクチン接種が始まる少し前くらい。
(見返してみたら、こちらで最初のワクチンを打ったのは21年6月でした。)
買い物ひとつするにもいろいろ注意が必要ですし、ご時世柄、街の人がアジア人を見る目も気になるし(多分気にしすぎ)、PCR検査を予約するにも検査もいちいちフランス語でつまづく…
元来お腹が弱い私は、妻が合流する頃には見事に過敏性腸症候群になっていました。
妻が日本から持ってきてくれたセレキノンのおかげか、久しぶりに食べた妻の料理に安心したのか、そこからすぐに治りました。妻さまさまです。



フランス人と働く上で対応に苦慮することはたくさんあります。
赴任当初から当然、そういうことはいくつもあるんだろうと想像はしていましたが、いざ具体的な問題に直面すると、それを言語化することすら難しかったりします。
なんとなく違和感があるけど、これはなんだろう、と言葉にするところからのスタートになります。

幸い、私はそういう違いを見つけて面白いなと思ったり、新しい考え方や行動を導入してみたりする実験がすごく好きです。
なので、そんなに苦にはなっていません。


ただ多くの人はそこで悩んでいることも知っています。
フランス人とのコミュニケーションがうまくいっておらず、うまく進捗していない仕事もたくさん見かけます。

せっかくこちらに来たのだから、一緒に働くメンバーから信頼を得たいですよね。そして一緒に成果を残したい。
それを目標にしているので、違いをあげつらって相手の不満を陰で言っているようではダメだと思います。
だって、「フランス人は⚪︎⚪︎だからダメなんだ」なんて言っていて、なにか解決するんでしょうか。
結局、これも気持ちよく思考停止するときの行動のひとつに過ぎず、何かを変える勇気と行動力がないことを正当化しているに過ぎません。

多少苦しい時期があったとしても、私はこれを得たと胸を張って帰りたい。

なので、私の方法論を言葉にするとこうかな、と思います。

・相手を変えようとするのではなく、自分のやり方を変える
・自分の見え方/見せ方を常に意識する
・相手のことを理解しようとする姿勢を見せる
・とことん話す(言わなくても分かるでしょ、は仕事してないのと一緒)


改めてこれを読むと感じるのは、別にフランス人と働く上で大事なこと、ではなく、日本人と働く時だって意識した方がいいことですよね。
そうなんですよ、結局人付き合いの原則って国籍が違ってもそう変わらないんじゃなかなという気がします。

日本人はこう、フランス人はこう、というフレーム化には意味がないと常々思っています。みんな個性があるから。
日本人全員が真面目に働くわけではないし、フランス人全員が定時ピッタリに変わるわけではなりません。それはあくまでざっくりとした傾向にすぎないので、自分の目の前にある至極具体的な状況と仕事仲間に適切に対応するためには、それぞれの個性に目を向けることが重要だと思っています。


それでもなお、言語、
会社あるいは組織としてのあるべき姿・目指す場所のずれ、
仕事の進め方など、確かに違いはあります。

例えば日本人は組織行動が得意。多少の障害・無理が発生したとしても運用でカバーしていく従順性と柔軟性があり、オペレーションを回すことが得意です。
フランス人は、まずは原理原則とルールがなんなのかをしっかりと合意することに時間を割きます。「こういう考え方のもとにこういうルールを設けてこう運用しよう」という仕事のフレーム化が先決です。How(どのように対処するか)が先に議論されることは稀で、Why(そもそも本当にこの障害に対処するべき理由)で原則が再共有されてからHowが議論されます。さすが成文法の世界。


ただ、これらは慣習、知識、経験によるところが大きくて、
人と人の付き合いの中で信頼関係を築くための本質的な話とは切り分けて考えるべき
ものと思います。


なので、私は日本人もフランス人も、根本原則は一緒だと考えて常に行動するようにしており、いまのところ上司・同僚は私の提案をよく聞いて実行に協力してくれるので、うまくいっているんじゃないかなと思います。失敗もたくさんしましたけどね。


私の話ばかりになってしまいました。
少し妻の話もしたいと思います。

このように、私は好きなように働いて考え事をしていれば毎日充実して生活できますが、家にいる妻はどうでしょう。


一般的には羨望の目を持たれるこの国。さぞかし素敵な駐在妻暮らしが、
とご想像されるかと思います。実際そういう面もちゃんとあります。
食材は豊富だし、四季はあるし、歴史も文化も掘り下げればいくらでも学べる、
素晴らしい国だと思います。幸い住んでいる街は治安も良いです。


でも妻は家族や友達と簡単には会えなくなることを承知で来ています。
なんなら愛する猫も実家に預けてきました。
わたし以上にフランス語は分からず、最初は買い物もままならない。
そんなところで一日中、家とはいえ独りぼっちにされてはついてきた甲斐もない。
それでは可哀想ではありませんか。


これらの経験や思いもあり、海外勤務とはいえども、
私は長時間労働を是とする気持ちは全くありません。
むしろ、そうではあってはいけない。
厳しい環境下でもいかに効率的に成果を出すか、頭を捻って行動しまくることが重要です。
不慣れな環境だからこそ、身体、そして心(大事!)は資本という当たり前の原則に立ち返り、体調をキープして最大の生産性を保つことに目を向けるのが本当のプロだと思いました。
失敗は次に活かせばただのプロセスですから。



海外駐在を成功させる最大の秘訣は、
家族と自分が心身ともに健康でいることです。

月並みな結論になってしまいますが、
これ以上に大事なことは思いつかないんです。


赴任から2年以上たった現在。
多少の買い物やレストランであれば、妻が店員さんと話し、
私がサポートする必要もなくなりました。私の分も妻にオーダーしてもらいます。
可愛い子には旅をさせよの精神です。

ここまで頑張ってくれたと思います。
そんな妻の努力とバイタリティに感謝して、今日は締め。

いつもありがとう。


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