小説|お月さまアレルギーの治し方
三年前にお父さんが連れてきたウサギに、お母さんはムーンと名づけました。ムーンが家族になってすぐに息子さんが生まれました。今年で三歳になる息子さんに、お父さんはムーンが月から来たのだと教えていました。
ムーンが家を飛び出してしまったのは、誰のせいでもありません。そのとき、お母さんはアレルギー性鼻炎のお薬を息子さんに飲ませてやっており、お父さんは呼び鈴を聞いて宅配物を受け取ろうとドアを空けただけでした。
ムーンは二度と帰りませんでした。お母さんも息子さんもとても悲しみましたが、誰より落ち込んだのはお父さんです。毎晩泣いて、月を見るのが辛いといいます。お月さまアレルギーだね。お父さんは弱々しく笑いました。
それを聞いた日、息子さんは鼻炎の薬を飲むのを嫌がりました。お母さんの手からお薬とコップをひったくり、お父さんがいる部屋まで走って言います。「飲めば治るよ!」お父さんが泣いたのはその日が最後になりました。
ショートショート No.3
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