プロローグ *ようこそkomajo store へ *
"そこ"は、深い深い森の奥……
ではなく、いつも行くコンビニの裏手の道をさらに少し真っ直ぐに進み、小さな脇道を一つ、入ったところにある。
一見すると小綺麗な、まぁよくあるちょっと個性的なカフェのような佇まい。
昔の建物の引き戸をリメイクしたような扉に手をかける。
「あ、開かない!!」
扉にかかる『OPEN』の文字を再度確認し、
さっきよりも力を込めて開けてみる。
「なんで開かない!?」
一瞬戸惑うが、思いついたようにハッと顔を上げると、一つ手を打ち、誰もがよく知るあの呪文を唱えた。
パンッ
『開けゴマ!!』
再度扉に手をかけ、力を込めてスライドする。
「どうして開かないのー!」
「フフフ、それ、スライドじゃなくて、手前に引くんだよ」
背後の声に従い、ゆっくりと手前に引いてみる。
開いた。
「なんだ〜、ありがとう。助かりました!」
振り返るが、そこには誰も見当たらなかった。
扉は開いたので、ゆっくりと建物の中へ足を踏み入れる。また一歩、また一歩と足を踏み出す、すっかり体が建物の中へ収まったところで、声をかける。
「こんにちはー?」
中からはガタガタ、ウィンウィンと機械の動くような音がしている。
先ほどよりも大きな声で繰り返す。
「こんにちはー!!」
バタバタ、ドカッ!
と焦って何かにぶつかった音がして、
奥の扉がガチャリと開く。
「いらっしゃいませ。
ようこそ、komajo storeへ」
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