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大阪市の神社と狛犬 ⑯天王寺区 ⑫民家の玄関先で出会った狛犬~

大阪市天王寺区の地図と神社

大阪市には、現在24の行政区があります。天王寺区は大阪市の中南部に位置し、区域の大半は南北にのびる上町台地上にあります。区名は、聖徳太子建立の日本最古の官営寺院である四天王寺に由来します。区内には約200の社寺があるほか、名所旧跡も多く、歴史と伝統の息づく町といえます。
天王寺区には、神社が11社あります。そのうちの1社は、生野区にある弥栄神社の御旅所です。前回までに、この11社の紹介がすべて終わりました。今回は神社ではなく、民家の玄関先で出会った狛犬です。

狛犬

■奉献年 不明
■作者  不明
■材質  石造
■設置  民家の玄関前 大阪市天王寺区東上町1丁目

JR環状線の高架下は、店舗や駐車場に利用されている所がたくさんある。住吉大社の狛犬について調べているとき、住吉大社の古絵葉書があるという「古書 楽人館」という古本屋を訪れたことがあった。その店は、JR環状線鶴橋駅から桃谷駅に向かう線路沿いの高架下にあった。その途中、鶴橋駅を出てほんの2、3分行くと右手に公園があり、その筋向かいの「大阪テーラー」という店の玄関先に、なんと2体のかわいい石造狛犬が置かれていたのだ。

玄関先にちょこんと座っている
案内板の重しとして貢献

ちょうど家の人が自転車で帰って来られて、お話を伺うことができた。
この狛犬は、おじいさんの代から家の庭にあったものだそうだ。とても重いので、外に置いたままでも持っていかれる心配はないという。一度誰かに盗まれそうになったが、重いのであきらめて置いて帰ったとか。確かに持ち上げられないほどの重さだった。

背の高さが少し違う

2体の大きさは少し違っていて、口を開ける阿形のほうが背が高い。しかし、胸から足にかけての線刻を見ると、明らかに阿吽の一対だ。家の人にことわって、いろんな角度から写真を撮らせてもらう。

〈正面から〉

阿形のほうが顔の彫りがはっきりしている

〈横から〉

はっけよい、じゃないけれど・・・本当は左の阿形のほうが大きい

〈斜め上から〉

阿吽で髪の毛先が異なる

〈斜め後ろから〉

脊椎と小さな尾が見える

〈失礼して、ゴロン〉

阿形を寝かせてみた
男の子だった


阿形の頭上には小さな角がある。普通は吽形にあるものだが。どこかに銘がないかと期待したが、それは見つからなかった。
この狛犬の出自が気になる。かなり古いものだと思われるが、大坂の狛犬ではなさそうだ。浪速狛犬にこのようなスタイルはない。思いつくのは、16世紀末から18世紀前半にかけて九州の肥前地方で造られた「肥前狛犬」だ。よくは知らないが、雰囲気がよく似ている。

私が訪れたのは、この数年で3度。無防備に置いてあるが、とてもいい狛犬なので、損傷したりなくならないことを心から祈りたい。

ご覧いただき、ありがとうございました。天王寺区の狛犬は、今回が最後です。次回からは、お隣の東成区に入ります。まだ十分に調査できていない神社があるので、フィールドワークが続きます。


後日談

この記事を投稿した後、地学が専門の先生に写真を見てもらって、石の種類を推測してもらいました。重い石であることと見た感じの石質からアルカリ玄武岩かもしれないということでした。玄武岩なら磁石がくっつくそうです。
そこで本日、さっそく百均で買った磁石を持って現地に向かいました。2体の狛犬はあの家の玄関前にいました。無事再会です。今日は看板の重しの役から解放されていました。
まずは磁石を取り出して、狛犬の背中にペタッ、ポロン!
何回やってもくっつかない。ということは玄武岩製ではなかったということですね。残念・・・。

前回までは採寸していなかったので、簡単に調べてみました。
高さ 阿・35cm 吽・32cm
幅  阿・19cm 吽・18cm
奥行 阿・32cm 吽・18cm

かなりアバウトな測り方だったので、誤差があります。

  

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