アジア紀行~ベトナム・フエ①~
ホーチミン(Hồ Chí Minh)からフエ(Huế)へ
今日は移動日。3泊の予定で、ベトナム中部の古都フエに向かう予定だ。
昨夜のうちに、フエから戻ったあと、もう一度このホテルに宿泊する予約を済ませ、余分な荷物をフロントに預けておいた。
フライトは昼過ぎの便なので、朝はゆっくり過ごす。町ではもう人々が活動を始めている。
空港までの足は、昨日ニャンさんに頼んでおいた。10時半に、彼のお兄さんが車で迎えに来る手はずになっている。
10時20分、チェックアウトして、ホテルのロビーで待機する。どんな車で来るのだろうか。しかし、約束の時間が過ぎても、迎えが来ない。アジアでは、しばしばこの種の体験をする。
以前バリ島に滞在していたとき、宿泊地のウブドゥからプリアタンという村に出かけたことがある。夕方バイクで迎えに来てくれるように、宿の青年と約束をしておいた。しかし時間になっても彼は現れない。急用でもできたのだろうか。折悪しく雨が降り出していた。困っていると、プリアタンにいる知り合いが、気の毒がって宿まで送ってくれた。宿に戻ると、なんと約束した青年がいるではないか。なぜ迎えに来てくれなかったのかと尋ねると、返事は、「雨が降ってきたから」というものであった。雨だからこそ、迎えに来てほしかったのに。こちらが、現地の頭に切り替えなくてはいけなかったのだろうか。
バリ島の話はともかくとして、ニャンさんに頼んだ車はあきらめることにする。時間に余裕はあるが、ホテルの人に言ってタクシーを呼んでもらう。
空港までは約20分で到着。4日前に空港から町までタクシーに乗ったときは7ドル支払ったが、今回のメーターの数字は41.0、すなわち41,000ドン。50,000ドン渡すと、5,000ドンのお釣りが返ってきた。45,000ドンならちょうど3ドルだ。これが普通なんだろうな。
しかし、タクシーを降りた場所に問題があった。国内の移動だから、当然ドメスティック・ターミナルに行くように言ったはずなのに、通じていなかったのか、降り立ったのはインターナショナルのターミナルだった。仕方がないので、出迎えの人々の間を縫って国内線ターミナルまで歩く。
11時20分、あざやかなブルーのオアザイを着たカウンターの女性に見惚れながらチェックインを済ませる。荷物を預けて、2階の待合室へ。まだ1時間ほどある。椅子に腰を下ろして目を閉じると緊張が緩み、一気に疲れが押し寄せてくる。
VN252機は、予定通り12:40に出発。フエ到着も、ほぼ時間通りの14:30だった。機内では、パックに入ったジュースとフランスパンのサンドイッチが出る。やはりフランス領だった時代の名残を感じる。パンはおいしい。VN252機は、50人乗りのプロペラ機で、音がうるさい。隣の席のおばさんはずっと寝ていた。
古都フエに到着
いよいよフエの空港に降り立つ。ターミナルの建物はすぐそこだが、全員バスで移動する。人数が少ないので、荷物もすぐに確保でき、手続きも簡単だ。
空港から町までは、バスかタクシーで移動することになる。バスは25,000ドン、タクシーは90,000ドン。カウンターで、バスのチケットを購入する。
空港の外に出てバスを探すが、ない! もう出たのかと不安になってキョロキョロしていると、「これがバスだよ」と指さして教えてくれる人がいた。それはワゴン車だった。日本でのバスのイメージを一度捨てないとダメかも。
ワゴン車にはすでに5~6人が乗っていた。現地のガイドらしい女性がチケットを回収し、みんなに降りるホテルを聞いていく。私が決めていないと言うと、「I help you」と答えて、ホテルを紹介してくれることになった。
20分ほどでフエ市街に入る。フエは人口30万人余りの町だ。
一軒のホテルの前に停車する。「Ă đông 2」というミニホテルだ。
ワゴン車に待ってもらって、部屋を見せてもらう。最上階5階の部屋だが、エレベーターはなく、階段で上る。エアコン・バスタブも完備していてバルコニーつき。これで1泊15ドルというので、ここに決める。もう一度下に降りて、車からバッグをおろし、待ってくれていたみんなに礼を言う。
部屋に落ち着いて、まずシャワー。やはりベトナムは暑い。エアコンはあるが、まったく効いていない。時計を見ると、もう4時になっている。
ホテルのウェルカム・ドリンクは、近所にある「トロピカル・ガーデン」という店のワン・ドリンク・サービス券だった。その券を持って出かける。
店の人に券を渡して、「カフェ・ダー with ミルク」というと、グラスと氷の入ったカップが出てきた。
ちょっと甘くて濃い味だが、おいしい。飲み終わったあと、ほかの客のいない静かな店で、しばらくぼんやりする。力が抜けていくような開放感がある。
フエの街歩き
夕方になって、少し過ごしやすい空気になってきた気がする。フエの町は比較的のんびりした雰囲気が漂っている。それでも道を歩いていると、バイクやシクロのおじさんが、しきりに声をかけてくる。
フエの町の中央を流れる大きな川はフォン川という。この川をはさんで、旧市街と新市街に分かれる。ホテルがあるのは新市街で、川の南側になる。かつてはフランス人の居住区がこちらにあった。北側の旧市街には、阮朝時代の王宮がある。今日は時間がないので、日が暮れるまで新市街を少し散歩してみよう。
フォン川沿いの道を歩く。西日がさして、川面がまぶしくきらめいている。たくさんの船が停泊しているが、観光用のボートだろうか。フォン川には2本の長い橋が架かっている。長さは400mほどあるそうだ。
町中に古い教会があった。フランス統治時代の建物だろうか。時を経た色合いが古都に似合う。
庭先で子どもたちが遊んでいる。三段重ねの三角形の段の上に柱が立っている。
歩き回っていると、自分がどこにいるのかわからなくなった。狭い町だから、迷ってもたいしたことはないが、シクロのおじさんに道を尋ねて教えてもらう。
フンヴォン通り(Hung Vuong St.)という比較的大きな通りに出る。この道を北に向かうと、橋があって旧市街に行くことができる。2時間ほど歩き回って、ほんの少しフエの地図が頭に入った。
マンダリン・カフェという名前の店で休憩。フレッシュフルーツのシェイクとミネラルウォーターを注文する。シェイクより水の方が高い。
ア・ドン(Ă đông 2)に戻ったのが午後7時。5階の部屋の西側の窓から、黄昏のフエの町が見渡せる。もう日が沈もうとしている。
午後8時を過ぎた。お腹がすいてきたが、たいそうなものは食べたくない。やはり麺がいい。『地球の歩き方』を見ると、「地元で有名なフォーの店」として「マイダオ(MaiDao)」というレストランが紹介されていた。このホテルから、さほど遠くない。
出かけてみると、さすがに人気店なのか、店は地元の人でいっぱいだった。入口近くの席を確保し、一つ覚えのように「フォー・ボー」を注文する。しばらくして、運ばれてきたフォーは、湯気を立てて美味しそう。半透明の平べったい麺に、小さめの食べやすい牛肉がのり、きざんだネギと長いままのネギが入っている。薬味を入れ、香草も少しだけ入れる。スープも抜群においしい。昨日ホーチミンで食べたフォーよりも、絶対にこちらが上だ。これで値段は6,000ドンだから、日本円では50円ぐらい。写真がないのが残念だ。
大満足で、少し遠回りして散歩しながらホテルに戻る。
フロントで、明日のボートツアー「帝陵巡り」を申し込む。
長い一日だった。シャワー・洗濯など、お決まりのコースを済ませてベッドに横になると、すぐに睡魔が襲ってきた。
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