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若者と海
神戸市立小磯記念美術館
日曜日、朝から六甲アイランドまで車を走らせる。この日の目的は、神戸市立小磯記念美術館で開催中の特別展「秘蔵の小磯良平 ー武田薬品コレクションから」。展覧会については、また別の機会にまわすが、観客のいない静かな美術館で1時間ほど作品を見る。
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さて、その後の予定は何も決めていない。六甲アイランドは人工島で、東・西には工場や港湾施設などが多くある。島の中心を、終点のマリンパーク駅まで六甲ライナーが走る。中央はほとんど住宅地で、マンション群がそびえている。
スマホのマップで見ると、美術館からマリンパークまで1.5km。海が見たいので、ちょっと距離があるが歩くことにする。
六甲マリンパーク
途中にあったコンビニで買い物をして、やっと六甲アイランド最南端の公園に到着する。車で移動すればよかったと、後悔する。なにしろ暑い。
マリンパークには何度か来たことがある。パームツリーやソテツなどの南洋植物があって、熱帯リゾートの雰囲気が漂う。目の前には視界180度の海が広がる。
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日陰がほとんどないのがつらい。コロナ以来休業中のカフェがあり、休憩所のようになっている。ご主人にお願いして、ここで昼ご飯。
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海辺では数人が釣りをしている。カフェのご主人が、釣りをしている若者の竿にエイがかかって、もう1時間近く格闘していると教えてくれた。
若者と海
かかった獲物との格闘というので、アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』を思い出した。あの本を読んだのは中学生の頃だから、もう大昔だ。長い不漁の末、大洋に浮かぶ小舟でカジキと闘う老人の姿が思い浮かぶ。あの時、カジキと繋がる釣り綱を持つ手が痛々しく傷つく様子を我が手に感じた。
食事を終えて、海べりでエイト格闘している若者のところに行ってみる。陽に焼けた裸の上半身がまぶしい。
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エイもかなり疲れているのか、近くまで引き寄せられるが、なかなか海面には姿を見せない。カフェのご主人や、近くにいた釣り人も協力して、何とかタモ網で捕らえようとするが、大きすぎてうまく網に入らない。
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しかし、約1時間半の格闘の末、ついに若者が勝った。カフェのご主人がうまく網で捕らえて陸にあげる。
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体長は、尻尾の先まで計ると143cm、幅は71cmだった。アカエイという種類らしい。尾には強烈な毒の棘があるので、カフェのご主人が包丁で取り除いた。刺されると強烈な痛みがあり、ショックで死亡に至ることもあるそうだ。
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裏返ってしまった哀れなエイ。いったいどれくらいの重さなんだろうか。
老人の釣り上げたカジカは鮫に食べ尽くされたが、若者に釣り上げられたエイは、家に持ち帰って食べるという。どんな味なんだろう。煮付けにするのかな。
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闘いが終わったマリンパークの空は、どこまでも青く、そして暑い。
そろそろ退散の時間である。
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