アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて⑨~
「MANUSELA TOUR」5日目
この日はワハイを発つ日だ。「幻の巨大チョウ」は、文字どおり幻に終わってしまった。「MANUSELA TOUR」と名付けられたものの、マヌセラ国立公園に足を踏み入れたのかどうかも定かではない。当初の目的とはかけ離れた内容の旅だったが、それなりに楽しめた気がする。
予定表を見ると、移動の一日になりそうだ。
WAHAIーSAKA
まだ夜明け前の4時半。モスクからアザーンの声が響いてくる。なんて早起きなんだ! 半分目覚めた頭で横になっていると、5時に合わせてあったアラームが鳴り出した。眠いけれども起きるしかない。
今日はこのワハイを出発しなければいけない。いよいよとなると、心残りを感じるが、貴重な体験ができたと思う。
朝食はいつものナシゴレン。なかなかのどを通らない。食事はイマイチだったな。
まだ夜が明けきらない、ほの暗い中を、ホテルの奥さんに見送られて港まで歩く。この人にはいろいろ面倒をみてもらった。特にM君は日焼けの治療などでとても親切にしてもらい、感謝していた。
6時15分、ワハイ発。今回のボートは行きとは違い、YAMAHAのモーターを2基取り付けた本物のモーターボートだった。ボートに乗り込み、夜明けの空を後方に見る。ここでしか見ることができない美しい光景だ。
ボートは島の海岸線を左に見て、快調に西に進む。わずかな揺れが眠気を誘う。うとうとしている間に、ボートはスピードを落とし。港に停泊した。どこか別の場所に立ち寄ったのかと思ったが、なんとそこはもうサカの港だった。時刻は8時前。行きは4時間もかかったのに、今回はその半分以下の時間しか要していない。
ここからは車に乗ることになっているが、まだ到着していない。3日前と同じ店でお茶を飲む。人々が珍しがって集まって来る。
来たときと違うのは、子どもたちがいることだ。小さな手作りのビリヤードで遊んでいる。みんな裸足だ。
「フォト!」と呼びかけると、みんな集まって来る。カメラを向けると目が輝いている。みんな写真を撮られるのが大好きだ。
SAKAーAMAHAI
みんなでワイワイやってると、まったく退屈しない。なんとフレンドリーな人たちだと、感嘆さえおぼえる。
8時半を回った頃、チャーターしてあった車が到着する。しかし、どうも車のどこかに不具合があるらしい。運転手ともう一人が車から降りてきて、左後輪のタイヤをはずし始めた。パンクかと思ったら、ブレーキ関係の故障らしい。山道を走るので、ブレーキの故障はおそろしい。
道具らしい道具もなく、釘2本を使って応急の修理をする。いったいどんな修理をしたのか心配だが、彼らに任せておくしか仕方がない。
いったいこの車の走行距離はどれほどになるんだろう。スピードメーターも壊れて動かない。いつ壊れても不思議ではない。しかし、この車に乗る以外、選択肢はほかにない。
修理に30分ほどかけたあと、いよいよ出発となった。時刻は9時10分。すでに気温は上昇しているが、まだ朝だ。
セラム島は東西に長い島で、その中央に背骨のように山岳地帯が横たわっている。いちばん高い山はビナイヤ山(Mt. Binaiya)で、3027mあるそうだ。このサカからアマハイに向かう道も、山越えである。
我々の乗ったオンボロ車は、登りの1時間余りの道を、いかにも苦しそうな音をあげながら、それでも一度も止まることなく走りきった。そして峠を越えて下り道になると、俄然元気づいてビュンビュンぶっ飛ばし、昼前には目的地マソヒのホテル「Sri Lestari 」に、我々を運び終えた。
ホッとする。やっと肩の力が抜ける。
荷物を部屋に置いて一息つく。朝が早かったので、みんな空腹だ。4日前にこのホテルに泊まったときに行った近くのレストランに向かう。麺類が食べたかったので、「Lo Mie」を注文する。「太麺の中華そば」か「ちゃんぽん麺」のような食べ物だ。出てくるまで30分も待たされる。このセラム島では、食事に関しては期待しないほうがいいと、今頃納得する。
この日の午後の出来事については、次回にまわしますね。
サポートありがとうございます。 いただいたサポートは狛犬研究など、クリエイターとしての活動費として使わせていただきます。