アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて①~
新しい「noteの旅」へ
今回から、新しい「noteの旅」に出発します。目的地はインドネシアのセラム島(Seram)。マルク州にある島で、モルッカ諸島の一部です。なぜこの島に行くことになったのかは、このあと話をしていきますね。
この旅は、島巡りの旅でもありました。インドネシアは日本と同じく島国で、17,500を超える大小の島により構成されています。「私たち」は、日本を出国した後、ジャワ島~スラウェシ島~アンボン島~セラム島~アンボン島~バリ島、と空と海の旅を続けました。
「私たち」というのは、私と、高2の息子Yと、妻の弟Mの3人です。私のアジア旅はほとんどが一人旅ですが、今回は珍しく男3人の旅となりました。
この旅は、楽しい一方で、けっこう過酷な旅でもありました。
今からもう30年も昔、1993年の夏の19日間にわたる旅でした。
書棚の片隅に、このときの旅を記録したノートが一冊あります。写真もわずかに残っていますが、この頃はスマホもデジカメもiPadもなく、フィルムカメラが一台あるだけでした。何よりも、私の記憶がいちばん頼りなくなっています。これまでnoteにこの旅のことを書かなかったのは、「書けなかった」と言うべきでしょう。しかし今回は勇気を出して、眠っている私の「灰色の脳細胞」を目覚めさせようと思います。
きっかけはテレビ番組
教職員住宅の狭い一室。隅っこに14型の小さなテレビがあった。モニター画面の下にビデオデッキがついている「テレビデオ」と呼ばれているものだ。私は息子と2人でNHKの自然番組を見ていた。羽を広げると30cmにもなるという巨大なチョウが生息するという島の映像が流れていた。チョウの名前は「トリバネアゲハ」という。鳥のような大きな羽を持つ美しいチョウ が映し出される。
「すごいね!」
「実物を見たいね!」
たぶん、そんな会話が交わされたのだろう。
その数年前、私たち家族は、インドネシアのスラウェシ島の中部、山岳民族のトラジャ族の住む地域を旅した。子どもたちがまだ小学生の頃で、往復の飛行機のチケット以外何も準備のない、無謀としか言えない冒険の旅だった。
家族のだれの心にも深く印象に残ったあの旅の余韻が、テレビの映像を見る父と子の内部で再びよみがえった。
「夏休みに行こうか!」
いとも簡単に旅の行き先が決まってしまった。島の名前は「セラム島」。初めて聞く名前だが、インドネシアというだけで、ほんの少し親しみを感じる。家族で行った冒険の旅「スラウェシ島」もインドネシアだったし、「バリ島」と「ジャワ島」は何度か訪れていた。今回も何とかなるだろう。
当時、高校生の息子の勉強を、妻の弟のM君がよく見てくれていた。そのM君を誘って、男3人で「幻の巨大チョウを求めてセラム島を探検する旅」に出ることになった。
あきれるほどの無計画
さて、セラム島に行くことは決まったけれど、セラム島がどんな島なのか、どうやって行くのか、さっぱり分からない。
たとえば、いつもお世話になるWikipediaで「セラム島」を検索すると・・・。
2023年現在でも、セラム島について調べても、たったこの程度で、まったくイメージがつかめない。ましてや今から30年前のことである。そもそもパソコンで検索して調べるというようなことがまだなかった時代だった。正直、行ってからのお楽しみ、と言うしかない!
とりあえず重要なのは、現地まで行く航空券を確保することだ。もちろん直行便などない。この数年前、ニューギニア島のイリアンジャヤに行く計画を立てたが、飛行機では入れないということで没になったことがあった。今回は大丈夫だとは思うが・・・。
いつも航空券の手配で世話になっている阪急交通社のO君に電話をする。彼は私の最初の教え子である。とても頼りになる。というか、頼りにしている。
「先生、また変なところに行くんですか!」
「乗り継ぎでも、アンボンまでしか行けませんよ。」
「保険に入っておいたほうがいいですよ。」
いろいろアドバイスをもらって、とりあえず半月ぐらい現地にいる計画で、飛行機の手配をお願いする。そして決定したのが、これ。
AMBON(アンボン)で16泊!
すなわち、アンボンから先は、まったく現地に行ってから決める、ということだ。セラム島はアンボン島の北側にあるので、当然船で移動するのだろうが、そのような交通手段も、もちろん宿泊地も、すべて現地に行ってから考えるしかない。
最近はやった言葉に「なんくるないさ~」という沖縄方言がある。
やるだけのことをちゃんとやっておれば、何とかなるよ。
きっと、そんな意味だろう。やるだけのことをちゃんとやったかどうか自信はないが、まあ、何とかなるさ。
そして、ついに出発の日がやって来た!
サポートありがとうございます。 いただいたサポートは狛犬研究など、クリエイターとしての活動費として使わせていただきます。