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アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて⑧~

「MANUSELA TOUR」4日目

今日のツアーの予定は次のようになっている。

Day04 WAHAI
Breakfast  at  hotel  and  tour  to  another  direction  of  Manusela  National  Park,  by  exploring  the  flora  and  fauna.

マヌセラ国立公園の、昨日とは別の方角に向かう予定だが、昨日の村人の話だと、そもそもトリバネアゲハが生息しているような森の中まで探検すること自体、無理なようだ。それでも、珍しい植物相や動物相に接することはできそうだが、我々3人は、早くもあきらめの境地。ガイドのジャニスが、実はマヌセラ国立公園については不案内であることもわかってしまった。
国立公園のある地域は、確かに我々がいるワハイからは、かなり内陸である。セラム島の背骨のような東西の山岳地帯が、公園の中心であるようだ。

やっぱり行けそうにない。Yは海で泳ぐことにこだわっているし、M君の日焼けも少しはましになったようだが、炎天下の草原を歩くのはまだつらいだろう。
今日は晴れそうなので、3人で相談してビーチに行くことにした。予定変更。

専用ビーチ

ホテルは海のそばにあるが、この辺りは泳げそうにない。どうせ行くなら、遠くても砂浜のあるきれいなビーチに行きたい。
ガイドのジャニスに話をして、車をチャーターしてもらう。提示された60,000Rpは思ったより高いが、やむを得ない。
午前8時、チャーターしたかなりのぼろ車に乗り込む。水とクッキーを持っていく。舗装されていない道を揺られながら走ること約30分。やがて道をはずれて、椰子の木が繁る林の中を数十メートル進むと、目の前に真っ青な海が見えてきた。我々以外(我々と牛以外)はだれもいない専用のビーチだ。それもとびきり上等のプライベート・ビーチである。

みんな思わず感嘆の声をあげる。Yの声はうれしさで上ずっている。

椰子の林が続くすぐ前が白砂のビーチで、海の水の透明度は抜群だ。海底は砂地からやがて珊瑚や岩が多くなり、急に深くなる。目の前で熱帯魚がいっぱい泳いでいる。海の中はまさに別世界だ。

YもM君もほんとうに楽しそうにしている。もちろん自分も。なこの海の美しさを目に焼きつけておこうと思った。

浜辺には無数の珊瑚の破片や小さな貝殻があった。ジャニスはほとんど海に入らず、きれいな貝殻を拾い集めて、おみやげだと言って渡してくれた。

Yはいつまでも海の中で泳いだり遊んだりしている。M君は海からあがり、バスタオルで日射しを遮りながら、波打ち際を歩いている。湾曲した浜辺に椰子の木が美しく並ぶ。太陽は容赦なくまぶしく燃え、青空に心地よく浮かぶ白い雲がそれを心持ちやさしくする。

午後になり、ほどよい疲労を感じる頃、例のぼろ車が我々を迎えにやって来た。ガタガタ道がかえって眠気を誘う。中国人らしい運転手が、窓の外に見えるヤギやイヌを指さして、インドネシア語の名前を教えてくれる。

最後の夜

ホテルに戻ったのは、もう2時を過ぎていた。昼ご飯の前に、水浴びをして、髪やからだから海の塩気を流す。
その後、今日も遅い昼食になった。魚のすり身の団子やぶつ切りにした魚の揚げ物、ご飯とキュウリなど。少しずつお腹に入れる。
一気に眠気が襲ってくる。部屋に戻ってベッドに横になるとすぐに眠ってしまった。M君とYは散歩に出かけたようだ。
夕方遅く、どこかにあるモスクから礼拝を呼びかけるアザーンが聞こえてくる。その声と同時に電気がつく。昼間は電気が使えないのだ。我々の当たり前とは異なる日常がここにはある。

夕食の時間になるが、まったく空腹感がない。義務的に食べ物を口に運ぶ。明日はワハイを離れる最後の夜というのに、物足りない気がする。
食事を終えて部屋に戻り、ベッドで本を読んでいると、ギターを弾く音と、うまい歌声が聞こえてくる。いったい誰が歌っているのだろう。

気になって部屋のドアを開けて外に出ると、ガイドのジャニスが気づいて、「トゥアック(TUAK)を飲まないか?」と尋ねてきた。トゥアックとは、現地の椰子酒のことだ。
いつの間にか人が集まって、中庭で酒宴が始まっている。みんなで陽気に歌をうたい、時折グラスを合わせて、「カルウィドゥ!」と叫ぶ。乾杯という意味なのか? グラスを合わせたあと、みんな一気にグラスをあける。ギターを弾いているのは「チャック(CAK)」という名前の男性。どこかで会ったことがある・・・と思っていたら、ワハイに着いた日に訪れた警察署のポリスマンだった。彼がギターで奏でる音楽は、インドネシアの民謡のようだ。このセラムのものかもしれない。もの悲しいメロディーは静かに心にしみてくる。
いっしょに飲み、歌ううちに、いつの間にか夜が更けていく。みんな酒に強い。酒瓶が何本も空になっていく。

ささやかだが、しかし我々にとっては別れのパーティーは、日がかわる頃まで続いた。最後の夜をこのように楽しく過ごせたことに感謝。ちなみに、酒代はなぜか我々持ちになった。

明日の早朝、ワハイを発つ。そろそろ休まなくてはいけない。


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