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大阪市の神社と狛犬 ⑭大正区 ④産土神社~個人宅からやって来た浪速狛犬~
大阪市大正区の地図と神社
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大阪市には、現在24の行政区があります。大正区は大阪市の南西部に位置します。西側は大阪湾に面し、区の三方を木津川、尻無川、岩崎運河に囲まれた島状の地形となっています。江戸時代には泉尾新田や恩加島新田などの新田が開発され、明治時代以降も埋め立てが行われて、大正末期頃に現在の区域がほぼ確定しました。河川や水路が多かったために、船による水上交通が発達しましたが、現在でも、大阪市内に残る8ヶ所の渡船のうち7ヶ所が大正区にあります。
また、大正初期以来沖縄からの移住者が多かった地域で、沖縄料理や沖縄食材を扱う店が多く、「リトル沖縄」とも呼ばれています。
大正区には、神社が6社あります。
今回の産土神社は、JR大阪環状線大正駅から南に約2.3km、徒歩で30分ほどの地に鎮座します。神社の前の道路を挟んだすぐ西側は、大正内港です。
産土神社
■所在地 〒551-0013 大阪市大正区小林西1-7-13
■主祭神 天照皇大神、應神天皇、住吉大神、春日大神
■由緒 天保3年(1832)、江戸時代に開発された小林新田と岡田新田の守護神として創建された。特に材木の町として栄えた大正、昭和の時代は大いに賑わった。社殿は戦災で全焼したが、その後復旧し、昭和50年の都市区画整備に伴い、現在地に遷座された。
狛犬1
■奉献年 昭和五十七年(1982)
■作者 不明
■材質 花崗岩
■設置 拝殿前
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産土神社はこぢんまりした神社だ。昭和50年にもとの鎮座地から現在地に遷座したので、まだ新しい雰囲気が漂っている。拝殿前の花崗岩製の狛犬は昭和57年奉献なので、新しい社殿を守護するために奉納されたのだろう。
狛犬さんはこれだけかと思って、続いて境内社に参拝すると、玉垣の内側、赤い鳥居の向こう側からこちらを見る江戸時代の浪速狛犬と目が合った。
狛犬2
■奉献年 嘉永年間(1848~1854)
■作者 不明
■材質 砂岩
■設置 境内社・小林恵比須神社前
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産土神社の境内には、小社が二つ祀られている。一社が稲荷神社、もう一社が小林恵比須神社である。小林恵比須神社は産土神社の社殿と対面するかたちで、道路を背にして鎮座する。玉垣に囲まれた中に立てられた鳥居と祠の間に、隠れるように古い狛犬が置かれている。
台座などから紀年銘は確認できなかったが、江戸時代末期の浪速狛犬だと推測できる。阿形は顔面などに損傷があるが、角のある吽形は、ほぼもとの姿を保っている。
この狛犬に関して、ある狛犬愛好家さんのブログに、宮司さんのお言葉として、次のような記述を見つけた。
嘉永年間(1848~1854)の作と云うこの狛犬さん達は、元々個人宅の邸内社を守ってらっしゃったそうですが、家のご主人がそのお社を元の神社にお返しするに当たり、狛犬さん達を産土神社に奉納されたのだとか。
ここを新たな住処として腰を下ろされた狛犬さん達は、以来小林地区の皆さんを温かく見守り続けているのです。
やはり江戸時代末期の嘉永年間の狛犬だった。「個人宅の邸内社」をこの狛犬がお守りするようになった経緯や、いつ頃産土神社に奉納されることになったのかなど、まだ不明な点はいろいろあるが、ここを終の棲家として、大切に守り守られてほしいと願う。
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