アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて⑦~
「MANUSELA TOUR」3日目
セラム島3日目。
夜中、部屋の外で大きな音がするので目が覚める。雨だった。熱帯特有の激しいスコールだ。短い時間にどっと降るものだと思っていたが、朝まで降り続く。
昨日車で移動したマソヒ(Masohi)からサカ(Saka)までの道路は、2ケ所で川を横切ったが、この雨できっとあの川は溢れているだろうと思う。さらに、もしこんな雨の中で4時間もスピードボートに乗らなければいけなかったら大変だっただろう。実際は、昨日はヒリヒリと日焼けするほどの天気だったが、この雨に比べるとずっとましだ。昨日の天候に感謝。
今朝は8時半出発の予定だったが、雨が降っているのを知って、だれも起き出さない。結局、出発予定の時刻にやっと起きて、朝食を食べる。メニューは、ナシゴレン(Nasi Goreng)。インドネシア焼き飯だ。
いつの間にか雨は止んだが、曇り空が広がっている。
さて、今日の予定は次のようになっている。
ガイドのジャニスは、National Parkまでは車で行くようなことを言っていたが、この予定では「by walking」となっている。どうも「歩き」らしい。
いよいよ出発
少しずつ天候が回復している。青空も見えてきた。予定よりかなり遅くなったが、いよいよ出発だ。Manusela National Park がどんなところなのか、まったく不勉強で未知の世界だが、果たして「幻の巨大チョウ」トリバネアゲハを見ることができるのだろうか。
午前11時、ホテルを出る。日は高く昇って、頭上からジリジリと照りつける。あれほど雨を恨んでいたのに、晴れたらまた太陽を恨んでいる。
M君は昨日日焼けした足が水ぶくれになってきて、歩くのがつらそうだ。Yは今日もまた胃が痛いと言っている。まだ出発したばかりなのに、大丈夫なのか。
ワハイ(Wahai)の村から内陸に向かって歩く。木造の小屋が建ち並ぶ村を過ぎると、やがて草原が広がっていた。インドネシアで、このような草原を見るのは初めてだ。第2次大戦の時には、ここに日本軍が駐屯したそうだ。戦闘機が離着陸したと思われる広場がある。
そこを過ぎてさらに行くと、また別の村があった。ガイドのジャニスに言われて、村長の家に行き、挨拶をする。”よそ者” は黙って通ることができないようだ。村長の家族全員が写真におさまる。
ここから、村人とその子供の2人が道案内をしてくれる。やがて道は森の中に続く。もうここが国立公園に入っているのかどうかもわからない。導かれるままに行くしかない。
男の子が器用に椰子の木に登って、大きな実を切り落として持ってきてくれる。父親がその場で刀を入れて、実の中の汁を飲ませてくれる。少し甘みがあるが、あっさりしていて、のどの渇きを潤してくれる。ココナッツの白い果肉も食べてみるが、こちらはイマイチだ。
マヌセラ国立公園は遠かった!
森の中で、時折チョウを見かける。日本では見たことがない珍しいものばかりだ。トリバネアゲハではないが、いよいよ近づいているという期待感がわいてくる。
手のひらを開いたほどの大きなチョウを見つける。胴の部分は人の親指ほどもあった。まったく人を恐れず、近づいても飛び回っている。しかし、目指す巨大チョウの姿はない。
村人にトリバネアゲハのことを尋ねてみると、「マヌセラ(Manusela)まで行けばいるよ」ということだった。ということは、ここはまだマヌセラではないんだ。
その次の言葉に愕然とする。Manusela National Park は、ここからまだ200kmも先だという。歩いて4~5日はかかるだろうと言われる。目の前が真っ暗になる。
下調べもしなかった自分が悪いのだろうが、アンボンのツアー会社も、ガイドのジャニスも、一言も国立公園までは行けないということを教えてくれなかった。そのことをジャニスに言うと、「今度来るときは、テントや寝袋を持って行こう」と答える。
おいおい、そんな問題じゃないだろ! 今度なんてあるもんか!
しかし、暑い。そして足が痛い。短パンをはいて行ったために、草原を歩くと、日焼けした足に草が触れて痛い。M君は、村人に木を切ってもらって杖にしている。足を前に運ぶのもつらそうだ。それでも、この体験は貴重だ。
見たことのない珍しい植物もたくさんある。
「幻の巨大チョウ」は、文字どおり「幻」になってしまったが、セラム島の草原と森を散策する経験は、他では味わえないものだとわが身を慰める。
出発時間が遅かったので、もうそろそろ引き返さなければいけない。おまけに、昼ご飯も食べていない。超スローペースで、もと来た道を戻る。森をはずれると、暑さが倍増する。
来たときに通った村が見えてくる。
ホテルに着いたのは午後3時過ぎ。わずか4時間の探検だった。水浴びをして、ちょっと体が軽くなる。それから遅い昼食。空腹だが食欲はない。
夜までは、それぞれ自由に時間を過ごす。
夕食までの間隔は短い。メニューは毎日少しずつかわるが、おおよそは、ご飯・スープ・野菜・鶏肉・魚などが用意される。
ホテルの厨房は、客室の向かい側にある。中の様子はなかなか興味深い。水は井戸水を汲み上げて使っている。燃料は薪だ。
鶏肉は、飼育しているニワトリだ。目の前で生きているニワトリが鶏肉料理になって出てくるのには、ちょっと複雑な思いがする。
胃に負担がかからない程度に食べる。
今夜は早く眠ろう。
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