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うざいうざうざうざったい


省略語と若者言葉

もう20年以上も前のことになります。一般的な国語常識を確認し、就職試験や入学試験にも対応できる問題集の原稿を執筆したことがありました。幸いにも版を重ね、間もなく五訂版が予定されています。それに伴って、内容の見直しが必要になりました。時事用語や流行語などは、変遷が激しいですね。

「若者の言葉が乱れている」という批判は、いつの時代にもあるものです。話し言葉と書き言葉の区別が出来ない人も大勢います。「言文一致」とはいうものの、日常的な話し言葉は、作文や論文には不適切ですね。

新聞を開くと、たくさんのカタカナ語が目に付きます。長い単語は、短縮形が生まれます。「マスコミ」「コンビニ」「セクハラ」「省エネ」「インフラ」などは、もう普通になっていますね。しかし「リスケ」「カスハラ」「サブスク」となると、「んっ?」となってしまいます。
SNSが盛んになった最近は、特に略語が溢れています。「り」の一字で「了解」、「ま」の一字で「マジ」とか。「ガチ」や「推し」なども、よく聞きますね。
こういうのは「若者言葉」と呼べるでしょう。もちろん、もはや若者ではない人も使っているとは思いますが。


うざい

若者から広がった言葉の一つに「うざい」があります。私がとても嫌いな言葉です。しかし小学生の孫たちも、時々口にします。「うざい」は、2008年改訂の『広辞苑』第六版に初めて載りました。市民権を得たということでしょうか。

《形》(「うざったい」を略した俗語)
わずらわしい。うっとうしい。気持ちが悪い。

『広辞苑』第六版より


この言葉が使われ出したのは1980年代で、「うざい・うざったい」の「うざ」は、擬態語の「うざうざ」から来ているようです。「うざうざ」は「うじゃうじゃ」とほぼ同じで、もとは小さいものが多数集まってうごめくさまを表します。『日本国語大辞典』に詳しい説明があります。

うざうざ

① 小さな虫や魚などが多く集まってうごめくさま。うじゃうじゃ。
 『名語記』(1275)「虫のうさめく、うさうさ如何。虫のわくはうさうさなり」
 雑俳『続折句袋』(1780)「のぞみ大きし虱うざうざ」
② こまごまとうるさく言うさま。くどくど。
 雑俳『川柳評万句合』(1769)「うざうざといふなと五十〆て遣り」
③ 態度をはっきり決められないさま。ぐずぐず。
 『古今集遠鏡』(1793)「わるうなつてうざうざと残つてあらうより、さつぱりと残りなしに早う散つてしまうのがさ、あああけつかうなことぢや桜花は」
④ 細かいものがたくさん積み重なってうるさい感じを与えるさま。
 浄瑠璃『忠孝大礒通』(1768)「うざうざする程金設かねもふけ

『日本国語大辞典』より


もともとの「うざうざ」は、ものや物事のようすを客観的に表す言葉だったようですが、これが見る者の主観を表すことばに変化したのが、現在の「うざったい」や「うざい」です。そこには相手を蔑んだり否定したりする感情が含まれています。いわば「悪意」が感じられるので、この言葉が嫌いなんですね。




次回は「ダサい」について考えてみようと思います。
トップ画像は、ソエジマケイタさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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