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神社と狛犬~大阪府八尾市①玉祖神社
古代の玉造部の里
大阪府八尾市の東の山腹にある神社です。この山を越えると、奈良県の平群町になります。神社は標高130mほどのところに鎮座し、大阪平野が一望できます。
『延喜式神名帳』に記載される式内社で、創始は710年(和銅3年)に周防国一宮の玉祖神社から分霊を勧請したものだと伝えられています。この地には古くから玉造部の人々が住んでいたため、その祖神を祀ったものでしょう。
御祭神は天明玉命(あめのあかるたまのみこと)で、玉祖命(たまのおやのみこと)と同神です。
神社の少し北側には、大阪市の玉造を起点とする十三街道が通っています。この街道によって玉祖と玉造が結ばれ、さらに大和国ともつながっていきました。
常世の長鳴鶏
日本の神話では、天照大神が天の岩屋戸に隠れて世界がことごとく闇になったとき、八百万の神が常世の長鳴鶏を鳴かせ、天鈿女命に舞わせて、天照大神を誘い出したとされています。
玉祖神社には、この鶏に由来するものがたくさんありました。
拝殿前の狛犬
現在の社殿は、享保10年(1725)2月に再建されたものです。まもなく三百年目を迎えようとしていますが、背後の本殿には極彩色の装飾が今でも残っています。
目指す狛犬は拝殿前に安置されていました。
■紀年銘 なし
■石工銘 なし
■材質 花崗岩
■像高 約90cm
■左(向かって右)阿形 雄
■右(向かって左)吽形(雌)・角あり
■顔の特徴
四角い顔は彫りが深く、頭の上部左右に小さい耳がある。
目は銀杏形で薄く瞳が彫られている。
両眼の間と目から左右の耳にかけて2本の皺が刻まれている。
鼻はトランプのクローバー形で平べったく、鼻孔が正面にある。
頬が盛り上がる。
上唇の中央が尖った山形に切れ上がり、鼻と接する。
上の歯が直線的に並び、短い牙が2本ある。
顎下の毛が左右から中央に向かって、縦に垂れる毛と交差し、先端が小さく巻毛になる。
大きな巻毛はなく、ほとんどが直毛の流れ毛である。
■尾の特徴
阿吽でデザインが異なる。
阿形の尾は、毛先が9つに分かれた木の葉状になって、背中に密着しながら立ち上がる。
吽形の尾は、先端を巻いた蕨状の毛房が左右に4本伸び、その上に巻毛と直毛の毛房が背中に沿うという複雑な曲線を造っている。
〈考察〉
紀年銘も石工銘もないのが残念です。台座(基壇)は3段になっていて、かなり苔やカビが生じています。表面をきれいにすれば、もしかしたら文字が出てくるかもしれませんが、現状ではまったくわかりません。
ただ、上記の顔の特徴などから判断すると、おそらく江戸時代の明和年間(1764年~1772年)の狛犬であることは間違いなさそうです。明和の狛犬は、大阪では10例余り残っています。
花崗岩製なので、大きな損傷もなく、今後も長く大切に保存してほしい狛犬です。
〈補足〉
玉祖神社には、拝殿と本殿の間の瑞垣内に、もう一対狛犬が保管されています。花崗岩製の浪速狛犬で、吽形の台座に次のような銘があります。
「請願成就所/文化九壬申年/暮秋吉辰/願主/久保田傳兵衞」
文化九年は西暦1812年に当たります。
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