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大阪市の神社と狛犬 ㉒住吉区 ⑤神須牟地神社~全盛期の穏やかな浪速狛犬~

大阪市住吉区の地図と神社


大阪市には、現在24の行政区があります。住吉区は、大阪市の最南部に位置し、大和川を隔てた南は堺市になります。この辺りは、古代には「すみのえ」と呼ばれた海に面した地域で、海上安全の守護神として名高い住吉大社とともに栄えてきました。また、大阪と泉州・紀州を結ぶ紀州街道や熊野街道などの交通の要衝でもありました。

住吉区には由緒ある古い神社がいくつもあります。今回は、摂津国三之宮と言われた式内社、神須牟地かみすむぢ神社に参拝します。当社は、長居公園の西500mほどの地に鎮座します。

神須牟地かみすむぢ神社

■所在地 〒558-0002 大阪市住吉区長居西2-1-4
■主祭神 神産霊大神かみむすびのおおかみ 
     手力雄命たぢからおのみこと 
     天児屋根命あめのこやねのみこと
■由緒  由緒書には「延喜式内の古社であって三の宮と称され遠く二千年昔の御創建である」とある。古来より医薬の祖神・酒造の祖神として信仰されてきた。慶長年間に兵火により焼滅し、その後江戸時代始め頃に再建されたといわれている。境内には、儒学者の並河誠所が当社を式内社と比定した標石がある。境外末社に多米ため社がある。
それにしても、「神須牟地」という社名は難しく珍しい。「須牟地」の名がつく神社は他に「中臣須牟地神社」(東住吉区)、「須牟地曽根神社」(堺市)がある。


狛犬1

■奉献年 不明
■作者  不明
■材質  砂岩
■設置  正面参道脇







正面の参道を進むと、左右に安置された砂岩製の浪速狛犬と出会う。吽形の右目辺りに損傷がある、全体として保存状態はそれほど悪くはない。台座にかすかに紀年銘らしきものがあるようだが、読み取れない。『狛犬の研究ー大阪府の狛犬ー』(奈良文化財同好会)には、「文化三年八月吉日」(1806)の砂岩製の狛犬の記録がある。この狛犬と考えて間違いないだろう。
丸目、三角の鼻、口角もほぼ真横で、吽形には角がある。どちらかといえば穏やかな顔つきだ。


狛犬2

■奉献年 不明
■作者  不明
■材質  花崗岩
■設置  正面参道脇




狛犬1の後方に門柱があり、そのそばにも一対の狛犬が安置されている。花崗岩製で顔が小さく、上体をすっと伸ばしてスマートなスタイルである。阿吽ともに垂れ耳で、吽形に角は見当たらない。
「若中」と大きく彫られた第二台座の右端に紀年銘があるが、読めなかった。おそらく明治だと思われる。

さらに参道を進むと拝殿がある。拝殿後方の本殿前には、彩色された木造の新しい神殿狛犬が置かれている。本殿には江戸末期と推定される木造狛犬もあるらしい。


狛犬3

■奉献年 昭和十一年十一月三日 一心講詠歌中
■作者  不明
■材質  花崗岩
■設置  東鳥居前


この日は、毎月開催されているイベントの日だったので、東鳥居側には自転車がたくさん駐められていた。鳥居の手前に、昭和11年奉納の狛犬が安置されている。



頭上に阿吽とも少し膨らみがあるが、角ではない。足元が少し弱い気がするが、顔の表情や胴体には力強さがある。「一心講詠歌中」の奉納と記されている。


〈境内〉

農神社
手水舎
社号標




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