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大阪市の神社と狛犬 ➎福島区②了徳院~お寺さんの狛犬たち~
大阪市福島区の地図と神社
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大阪市には、現在24の行政区があります。淀川のすぐ南側には5つの区がありますが、福島区は此花区と北区に挟まれる位置にあり、大阪都心6区の一つになっています。かつてはこの辺りも難波八十島と呼ばれる地域でした。福島天満宮の社伝によれば、平安時代に菅原道真が九州大宰府に配流になった際、当地の里人徳次郎が旅情を慰めたことを喜んで、「餓飢島」と呼ばれていたこの辺りの名称を「福島」に変えたといいます。
福島区には、狛犬のある寺社が6つあります。(地図参照)
今回の了徳院は真言宗の寺院です。地元では、浦江聖天の名で親しまれています。JR環状線の福島駅から北西に「福島聖天通商店街」を1kmほど抜けて行くと右手に鳥居が見えます。境内にも鳥居や狛犬があり、神仏習合の色が濃い自院です。通り道の福島聖天通商店街には「売れても占い商店街」という大阪らしいキャッチコピーが掲げられています。ここは占いの町でもあるようです。
了徳院
■所在地 〒553-0002 大阪府大阪市福島区鷺洲2-14-1
■宗派 東寺真言宗
■本尊 准胝観音・大聖歓喜天
■由緒 創建年は不明だが、大坂の陣が描かれた図に「了徳院」の名が見えるというから、江戸時代以前の創建と考えられる。この辺りは、かつては「浦江」と呼ばれる海辺であったが、あるとき漁師の網にかかって大聖歓喜天の像が海中から出現したと伝えられる。歓喜天は秘仏で、象頭人身男の荒神と十一面観音菩薩の化身である女神の抱擁する双身像と言われる。
狛犬1(獅子)
■奉献年 大正元年九月廿八日建之(1912)
■石工 天満天神小橋 石匠平清
■材質 花崗岩
■設置 南側鳥居手前
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境内入り口の鳥居前に、口を開けて向かい合って坐す狛犬。正確には「東大寺南大門型獅子像」と呼ぶべきだろう。台座には「大正元年九月廿八日建之」という紀年銘があるが、正面に剥離があるので、「元」は「九」かもしれない。この獅子像の特徴は、
①正面向きに坐す。
②両者とも阿像(獅子像)である。
③首に鈴のついた飾り紐がある。
④顔を斜め上前方に向け、横から見ると全体が三角形の構図になっている。
了徳院は東寺真言宗の寺院だが、入口鳥居には「歓喜天」の神額があり、いきなり獅子像が迎えてくれて期待が高まる。
参道を進むと、お寺らしく山門がある。
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山門を潜ると、左手に境内の案内図があった。いろいろバラエティに富んでいる。
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狛犬2
■奉献年 不明
■石工 不明
■材質 砂岩
■設置 弁才天前
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山門を潜って境内右手に弁天池があり、弁才天が祀られている。手前には鳥居と狛犬がある。狛犬は砂岩製で、了徳院にある4対の中ではいちばん古そうだ。台座に銘らしきものは見当たらないが、江戸時代末期のものか。阿形の損傷が激しい。
狛犬3
■奉献年 昭和卅四年四月吉日
■鋳工 金井忠義
■材質 青銅
■設置 弁才天前
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正面の社殿の手前に銅製の鳥居があり、その向こうに銅製の狛犬が一対置かれている。1mぐらいある立派なもので、滋賀の大宝神社の狛犬を思い浮かべさせる精悍な雰囲気がある。青銅製だと思われるが、表面が赤っぽいのは、彩色したのだろうか。
阿形はちょうど藤棚の下に置かれている。この附近の藤は「野田藤」といって、室町時代から有名で、「吉野の桜・野田の藤・高雄の紅葉」は三大名所と呼ばれている。写真では、すでに藤の花の時期が終わっていた。
狛犬4
■奉献年 文政十丁亥五月吉辰(1827)
(制作年)文政四年 巳八月日
■陶工 木村杢介 作之
木村茂兵衛 作之
■材質 備前焼
■設置 白鬚稲荷大明神前
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文政年間の備前焼狛犬である。備前焼狛犬としてはかなり古いものである。台座には「文政十丁亥五月吉辰」(1827)とあるが、狛犬本体の大腿部には、次のように刻まれている。
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《阿形》文政四年 巳八月日 木村杢介 作之
《吽形》文政四年 巳八月日 木村茂兵衛 作之
備前焼狛犬本体の紀年銘は「文政四年」(1821)だから、台座銘よりも6年も早い。制作年と奉献年にずれがある。
作者は阿吽で別人である。「木村姓」の陶工は、備前焼狛犬ではよく見かける。阿吽とも、尻尾がなくなっているが、頭部から上半身にかけての保存状態はよい。
聖天さんいろいろ
狛犬以外にも、この聖天さんに関係する「いろいろ」について、少し書いておこう。
売れても占い商店街
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大阪の下町らしいダジャレの商店街名。「売れても占い商店街」。
確かに占いのお店が目立ちました。
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聖天さんのダイコン
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狛犬の台座に交差する2本のダイコン。ここ了徳院・聖天さんのご神紋だ。
なぜダイコン?
聖天さんこと「大聖歓喜天」は、由緒の項にも書いたように、象頭人身男の荒神と十一面観音菩薩の化身である女神の抱擁する双身像。夫婦和合、家庭円満、縁結びなどの神様として信仰される。このダイコンの姿から想像されたし。
芭蕉翁もやって来た
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杜若語るも旅のひとつ哉 はせを
この地は「野田の藤」で有名な地だが、「浦江の杜若」も有名であったとか。芭蕉もこの地を訪れて、句を詠み残したということだ。
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