![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155977360/rectangle_large_type_2_f0fa755fd983bc98b79c785cfe874687.jpeg?width=1200)
2024年9月の俳句
やっと「夜長」になりました
9月の陰暦名は「長月」。語源は「夜長月」だと昨年書いたのを覚えているが、「秋の夜長」というには、まだ少し早いようだ。それでも秋分の日が過ぎ、夜の時間が昼の時間を上回るようになった。
「今年の夏は暑かった」とは、毎年だれもが口にする言葉だが、正確には「今年の夏も」かもしれない。いや、さらに正確に言えば、「今年の夏は特に暑かった」という気持ちがこめられているのだろうか。「は」には、他と区別して強める意味がある。
法師蝉鳴きて九月の声を聞き
9月1日に詠んだ句である。西日本を迷走したお騒がせ台風がやっと通り過ぎた日の夕方、今年初めてツクツクボウシの声を聞いた。あれだけ騒がしかったクマゼミは、いつの間にか鳴りを潜めてしまった。
猛暑はいつまでも居座る気配だが、それでも9月には秋らしい行事がいくつもある。その代表は、なんといっても「お月見」だろう。
中秋の名月の2日前の日曜日の午後、孫Mが月見団子を作って持ってきてくれた。月見には早すぎるけれど、「花より団子」「月より団子」である。
早々と月見団子の甘きかな
![](https://assets.st-note.com/img/1727252806-qNCyEu0Xh3HdaZrkK2YSptxB.jpg?width=1200)
翌日の夜、食後に散歩に出た。久しぶりの外出である。足腰が弱っていて、膝から下がふわふわする。十三夜の月が東の空に浮かんでいる。表通りから旧山田村の細い道に入り、光山寺の階段を手すりにつかまりながら登る。虫の声が足元から聞こえる。秋だな、と思う。狭い境内を抜けて竹藪のある反対側の坂道を下ると、再び表通りに出る。この短い散歩に30分を費やす。普通に歩けるようになりたい。
秋の夜の寺静まりて虫すだく
![](https://assets.st-note.com/img/1727252850-G7UA2zMJ9ZpY0afIjFuWVrDK.jpg?width=1200)
翌17日は中秋の名月だった。満月は明日だそうだが、薄曇りの空に丸い月が昇った。小学生の孫MとSがいっしょに夜の散歩に来てくれる。昨夜よりちょっと遠回りして、妙見宮の祠にお参りする。孫たちに手を引かれたり、おいてきぼりになったりしながら、この日も30分ほど歩く。
中秋や孫に守られ月見行
![](https://assets.st-note.com/img/1727252887-Tgy5S0X4lsAu3WiCFvnMzK6N.jpg?width=1200)
19日は「彼岸の入り」だった。「彼岸」とは「此岸」の対義語で、仏教と関連の深い言葉だ。これについては、このnoteに投稿したので、詳しいことは省略する。
波羅蜜の深き意味知る彼岸かな
さて19日は、近代短歌・俳句の先駆者である正岡子規の命日だった。34歳の若さで亡くなったが、近代文学に与えた影響は大きかった。
辞世の句は、
「糸瓜咲て痰のつまりし仏かな」
「痰一斗糸瓜の水も間にあはず」
「をとゝひのへちまの水も取らざりき」
このことから、子規の忌日9月19日を「糸瓜忌」と呼んでいる。雅号の一つから「獺祭)忌」ともいう。
自分は入院中の病床生活で、晩年病臥の暮らしを強いられた子規のことを時々思いだした。自分と子規を重ねるなどおこがましいが、『病牀六尺』の制限された生活の中で俳句を詠むことのすごさに感嘆した。
子規没す彼岸の入りの暑さかな
「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものだ。彼岸の入りの日にはまだ暑いと感じていたのに、いつの間にか長袖の上着がほしくなった。
夕方、マンションの中庭に出ると、赤とんぼが目の前を通り過ぎた。今年初めて見る赤とんぼだった。もう秋だな。
赤蜻蛉すいつと音が聞こえたか
涼しくなった夕方に散歩をした日。うす暗くなりかけた畑の隅に白い花が咲いていた。気になって調べると「ハツユキソウ」らしい。白い花のように見えたのは、葉の先が白くなっているからだった。秋に入ったばかりなのに「初雪」とは時期尚早だなと思う一方で、ここでも季節の移り変わりを感じた。
秋の夕そこだけ白し初雪草
![](https://assets.st-note.com/img/1727410638-NvIW9gCXLYMnEQR4eOKs718q.jpg?width=1200)
病と共に生きる
9月はちょうど3分の1にあたる10日間を病院で過ごした。5回目の化学療法で5日間の入院のはずだったが、血液検査の結果、白血球が激減し治療に入れなかった。
早朝の採血九月の日が昇る
![](https://assets.st-note.com/img/1727512786-WsnVOkZwlMfDmjLv40QET9FJ.jpg?width=1200)
入院中は毎朝日の出を見る。眠りが浅いので、必ず目が覚める。その一方で、昼間でも睡魔に襲われる。夢の中でもJRの電車や貨物列車の音が聞こえてくる。
我がからだ眠り欲すや鉄路聞く
9月9日は重陽の節句だった。いちばん大きな陽の数が重なり、長寿や健康を祝い祈る日だ。入院5日目だが、まだ治療に入れない。
重陽の日の出拝みて床に伏す
白血球数の回復を待って、入院7日目にしてやっと化学療法に入ることができた。この日は9月11日。アメリカで同時多発テロ事件が起きた日だ。ニューヨークのワールドトレードセンターに航空機が激突する映像は、今も脳裏から離れない。
湧く雲に9.11を重ねけり
![](https://assets.st-note.com/img/1727514000-ZS8X9REPdj3UKMQHJxLGO0p7.jpg?width=1200)
翌日の夕方、久しぶりに雨が降った。これで少しは大気が潤い、気温も下がるだろうか。
かき曇り涼もたらせよ秋の雨
![](https://assets.st-note.com/img/1727514830-vG0jUOrT3baZ7w4loiIXkDqu.jpg?width=1200)
9月13日、無事今回の化学療法が終わり、翌14日退院。10日間の入院生活だった。次回は初めて通院による治療に変更する予定だ。
退院からさらに10日が過ぎた。空の雲も変化してきた。あの憎らしいほど力強い入道雲の姿もいつの間にか見なくなった。空が高く見える。そういえば「天高く馬肥ゆる秋」という句があったな。
病気が発症したのが夏の初めだった。いま一つ季節を乗り越えたような気がする。
移りゆく秋空高し命あり
![](https://assets.st-note.com/img/1727569501-W9jycTDzfoGSdU28CkQqHVxN.jpg?width=1200)
夜の散歩は続く。
宵闇やここに友あり秋の道
![](https://assets.st-note.com/img/1727572062-snLd2xoGM1WyO0IDFTCUwYvi.jpg?width=1200)
2024年9月も無事に乗り越えられそうです😊
いいなと思ったら応援しよう!
![komajin](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65571264/profile_207c0f67576b81e66af686f99660ed84.jpg?width=600&crop=1:1,smart)