DX人材育成講座 2日目
DXの本質
機械にできることは機械に任せ、人は人にしかできない重要なことをやる。これがDXの本質だ。可処分時間が増えた分、人間は別の価値あることに着手する。そしてより大きな価値をたくさんの人に届ける。
デジタル化の意味を考える
デジタルとは
連続的な値を段階的に切り取り、数値や記号で表すことだ。しかしそれ以上に重要なのは、デジタル化する時には必ずデータが欠損するという事実だ。例えば楽器の音を全てデジタル化することはできない。他人が聞ける範囲の音を意図的に切り取っている。
データを取る時も、アナログをデジタルに持ってくると必ずデータの欠損が起こる。だからこそ目的を持って現実世界のリアルな情報を取捨選択しながら、何を残したいのかを考え、人の仕事を楽にできるかを検討することが重要になる。
できないからできるようになるまでの道のり
DX化の話に戻ると、機械にできることは機械に任せて人は人にしかできないことに力を入れていく。では具体的にどんなことをするべきか。
自分の業務を本当に知り尽くし、細かいところまで把握できていないと、どこを機械に任せられるかがわからない。そして今の世の中は正解が分かりにくい。将来自分の職場や仕事がどうなったら正解かは、この変化の激しい時代には分かりにくくなっている。
そんな先の見えない、誰も正解がわからない中で、答えの導き出し方を身につけることが大切だ。そんな状態の中で結果を出している人は、以下の3ステップを踏んでいる。
1. 探索
知らない世界に何があるのかを把握し、やりたいことのために何をどこまで学ぶ必要があるのかを計画する。要するに何ができるか分からないから、試行錯誤して理解していくプロセスだ。
2. 学習
実際に行うための体系的な知識を習得し、自分が行動できるだけの情報を集める。例えばプロトタイプを作るのに何が必要なのかを調べたりする。
3. 実践
実践は成功させることとイコールではない。試しにやってみること、自分で手を動かすことで現実に即した事実情報を得て、実現に足りないものを確認することが重要だ。
SpaceXはロケットの打ち上げ失敗を繰り返しているが、これもこのプロセスを回している。まずここまで行ったらOKという段階を設定し、データを取って段階を踏んで進めていく。やらないとわからないからやってみて、データを取る。そのデータを使って試行錯誤して成功につなげていく。これが「できない」から「できるようになる」ための近道なのだ。
UX設計の重要性
コンテンツを作る時に考えるべきは、ユーザーエクスペリエンス(UX)の設計だ。大前提として、どんなに良いものを作っても使われなければ全く意味がない。
使われるために必要なこと
それは「面倒くさい」「やりたくない」というところを超えるプロダクトを作ることだ。人を動かしたいなら、現場を変えたいなら、価値を新たに作り出さなければならない。今までよりもこちらのほうが良いと思ってもらえるものを作らなければならない。
ここで言う価値とは相手の求める、表面化していないユーザー体験を提供すること。何が正解になるか、何が価値になるか分からない中で試行錯誤して、お客さんが喜びそうなことをやる。これはトライアンドエラーしかない。
ビジネス上役立つことを合理的に作っていくには、まずお客さんが言う通りにしてもうまくいかないことを理解する必要がある。そういうふうに答えが見つかっているなら、相談してくる前に解決している。
お客さんは本当に必要なものが分からない。だから相手は本当はどうなったら嬉しいのかを見つめることが対策となる。
UXの構成要素
1.効果
効果は目的達成ができるかどうかだ。経理システムなら正確な会計処理ができて必要な帳票が出せること。機能が揃っているというだけじゃなく、ユーザーが本当にやりたいことを確実に実現できる完成度が求められる。
2.効率
効率は最短経路で目的に到達できるかどうかだ。3回のクリックでできることを10回もクリックさせるのは論外。データ入力だって、手入力が必要な箇所は最小限に抑え、できるだけ自動入力や選択式にすべきだ。特に毎日何度も行う作業は、効率を徹底的に追求する必要がある。
3.満足度
満足度は快適に使えるかどうかだ。ボタンの配置が分かりやすく、エラー時には適切なメッセージを表示する。長い処理中は進捗状況が見える。操作したらちゃんとフィードバックがある。見た目も使っていて気持ちが良い。こういった要素が満足度を高める。
これを合理的なプロセスで作るには人間中心設計が必要。
お客さんは何が必要か分からないからリサーチが必要で、そのリサーチの結果に優先順位を付けて形にしていく。使う人のユーザー体験を軸にものづくりしていくことが非常に重要なのだ。
注意すべきは、この3つがトレードオフの関係になることが多い点である。
効率を追求しすぎると初心者には使いづらくなって満足度が下がる。
かといって初心者向けに説明を充実させすぎると、ヘビーユーザーにとっては無駄な手順が増えて効率が落ちる。
だからこそ、誰がメインユーザーで、どんな場面で使われるのかを深く理解する必要がある。
これはそのままアプリ開発の場に活かすべき内容と思うので、しっかりと身につけていきたい。