伝説の老舗「三島広小路 一福」のやきそば
静岡県にある「伊豆の玄関」と呼ばれる三島市は、豊富な水に恵まれた静かな街です。水が良いせいかうなぎが有名で、修善寺まで向かう伊豆箱根鉄道の起点でもあります。
その伊豆箱根鉄道の三島の隣駅「三島広小路」の駅前に、その昔「一福」というお店がありました。40年前とはいえ1人前100円台という驚異的な低価格と、一度食べたら忘れられないその味に、三島のソウルフードとして老若男女に浸透するばかりか県外にも多くのファンを抱える人気店でした。
しかし、この「一福」は2013年に突然の閉店を迎えます。この味を惜しむ声は多いのですが、受け継いだお店の声もなかなか聞きません。当時記憶を頼りに何度か試作も試みましたが、正解からは程遠く距離は一向に縮まりませんでした。
「一福」の焼きそばは、別名「ゴム焼き」とか「ゴムそば」などと呼ばれており、輪ゴムのような四角い断面の麺の少し香ばしい香りや硬めの歯ごたえが特徴です。単体では麺はほんのり味付けされている程度で、自分で2種類のソースを好きなようにかけて頂きます。肉と卵はオプションで、他はキャベツに、紅生姜と青のりが乗っていました。これが旨い。
やはり最大の特徴はこの麺で、一般的に見かけるどの店どの麺を見ても近しい印象を全く受けません。もはやたまに思い出す程度まで諦めかけていた時に、「一福」が仕入れていた製麺所の事業継承の話が偶然見つかりました。
その後製麺所の方のご厚意もあり、決め手は蒸し工程にあることがわかって来ました。とはいえ、単純に蒸すだけでは麺の水分が足りず、浸水や茹でなどによる給水も並行しながら試します。麺の褐変や歯ごたえの変化、またあの独特の風味は、かん水・酵素反応・メイラード反応の合わせ技であることがわかりました。分刻みでパターンを変えて試しながら、試食を繰り返しました。
といった研究を繰り返しながら、今ではオリジナルままとは言わないまでも、7〜80点くらいは取れているんじゃないかな?というところには至るようになりました。いよいよもう少し間口を広げて、往年のファンやお客さんの反応を伺ってみたいところです。
ということもあり、今年2021年のゴールデンウィークに、調布市国領の12さんで焼きそばのポップアップ営業をさせていただくことになりました。現在お店の中は人数を絞っていますが、外でも飲んだり食べたりできるようにお天気の日を狙って窓際で焼きます。
幻の焼きそばの復活、元祖リスペクトの肉玉オンリー500円で行きます。乞うご期待!
(4/24/2021追記)大変申し訳ありませんが、緊急事態宣言を受けてGW中のやきそば提供は延期となりました。また頃合いを見て機会を伺いたいと思います。
(5/2/2022追記)明日5/3に12さんにて焼きそば提供することになりました。急なお話で、しかも限定10食なのでお近くの方に限られるかと思いますが、気持ちの良い天気のなか、美味しい焼きそばとクラフトビールを楽しみたい方は良かったらぜひ。