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#9 酒と泪とこまちんと…第三話『トラ・トラ・トラ』 昭和59年6月末日

※不適切な表現等が見られる部分がありますが、当時の時代背景や原作者の意図を尊重し原文のまま掲載しています。あしからずご了承ください。

【注意:お酒は二十歳になってから!】


こまちんが19歳の頃、所属していた学生サークルの打ち上げがありました。

八尾の河内山本という近鉄電車の駅のすぐ近くに…

昔は、あきらかに遊郭だったであろうと思われる平屋建ての下宿があり

そこに、何名かの先輩が住んでいました。

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打ち上げとはいっても、貧乏学生の集団…

『今回はとりあえず、安く上げよう!』

との、先輩方のご提案もあり、自宅生による持ち寄りを中心として行うことになりました。

こまちんは、当時、柏原の実家に居住しており、おやじに内緒でこっそり封の切っていないロバートブラウンをくすねて原チャリで河内山本へ…

距離にして6~7Km、20分ほどの道のりでした。

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狭い部屋に20名ほど集まったでしょうか…

なんやかやと酒も肴も一式揃い、修羅場のような宴会が開催されました。


そう、昭和の学生の飲み会です。

男ばっかりの飲み会です。

『かんぱーい!!』

と、声がかかったあとは、単なるつぶしあいです。


先に酔ったら何をされるか分かりません。

全裸で近くのポリボックスに置いてこられるとか…

眠った途端に顔に油性のマジックが飛び交うとか…

そのようなことは、日常茶飯事でした。

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下級生が一人…

また、一人…

と、潰されていく中、こまちんは、最後まで生き残ります。


最後は、上級生が3名とこまちん一人…

『おっ!まだ、バージンあるやんけ~っ!!』

と、こまちん持参のロバートブラウンを一人の上級生が見つけ出し、ためらわずに封を切ります。


『○○!なかなか強いやないかぁ~。まぁ、遠慮せんと飲めやぁ~!』

封を切ったばかりのロバートブラウンを惜しげもなく、こまちんのロックグラスに注ぎ入れる先輩A…

って、それ、俺が持ってきたんだって…(こまちん心の声)


『ありがとうございまっす。いただきまっす。』

素直に飲み干す、へべれけこまちん。


『おぉ~っ!まぁっだ、いっけそうだっなぁ~!』

あきらかに地方出身者と分かるイントネーションの先輩Bが、こまちんのロックグラスを取り上げる。


中の氷を寝ている後輩の方にぶちまけ、溢れんばかりに酒を注ぎ込む…

『えっ?いやぁ~、そ、それは…』

さすがに躊躇するこまちん…


『なぁにぃ~?Aの酒は飲めて俺の酒は飲めなぁいっ?って?』

普段は言葉の壁に押されて寡黙な先輩Bの目が据わる…


『いっ、いやっ、いただきます。』

断る言葉を捜す前に飲んだほうが早いと酔った頭で判断するこまちん…


当然ながら残りの先輩も同様の行為に走る…

あっと言う間に空っぽになる、黙って持ち出したおやじのロバートブラウン…


キツい酒を短時間に飲み干すと一時的ではあるが不思議な現象が起きる…

酔いも眠気もすっ飛んで、まるで目覚めたばかりのように意識がハッキリするのだ…


『んじゃ!○○帰りま~す!』

今なら大丈夫だ、しっかり帰れる…

何よりこのままいたら大変なことになる…

危険を感じたこまちんが無謀な行為に走る…


『おぅおぉぅ…、らいりょ~ぶらんかぁ~』

ほとんどパンチドランカー状態のタコ八郎と化す先輩A~C

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『やめろけ~やめろけ~あぶないろ~』

あんたの方が危ないがな…


『お~ぅ、気ぃつけてなぁ~』

この人は社会に出られへんな…


様々なありがたい先輩たちの言葉を背に受け颯爽と原チャリにまたがるこまちん…

さて、散々に飲み尽くしたこまちん…

原チャリにまたがったまま記憶をなくすのに、たいした時間はかかりませんでした…

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大和川沿いの国道25号線に出ると、柏原市役所…

その前でハタと我に帰るこまちん…


いかん…

途中からの記憶が完全に飛んでいる…

よくぞこんなところまでこられたものだ…


とりあえず市役所の前にバイクを止め、縁石に腰をおろすこまちん…

すかさず近付くバイクのお巡りさん二名…

『付けて来とったんかいな…はよ止めんかいな…危ないがな…』

まるで他人事のように呟く泥酔者こまちん…


『君、ちょっとおかしいなぁ~ヘルメット開けてくれるかぁ~』

メットのシールドを上げた途端に歪むお巡りさんの顔…


『うっ!き、君、尋常やないぞぉ~っ!なんやこの酒の匂いはぁ~』

近くにある警察署へ連行される、こまちんとその愛車…

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それからは、ほとんどコントです…

ベロベロ状態で夢うつつながら、なぜか明確に憶えています。


『これ、吹いてみぃ…』

差し出される風船型の旧式飲酒測定器…

『あほぉ~、そないおもいっきり吹かんでええわぁ~。うわっ!メモリ振り切っとる…』


二人がかりで廊下に連れ出された後…

『そっちからこっちまで真っ直ぐ歩いて来てみぃ~』

『無理です!ヨッバラっている人は、まっすぐ歩けません!!』

『お前、なめとんのかぁ~っ!』


椅子に座っているところを揺り起こされ

『さっきから言うとるやろぉ!お前はまだ未成年やから家に電話したら泊まらんでええんや!はよ家に電話せぇ~!!』

『お巡りさん!今、何時や思てるんですか?こんな時間に起こされたら迷惑でしょ!泊めて下さい!!一晩だけ。お願いします。』

『あほかぁ~!』


こんなやりとりの中、ふっと気付くとおやじが横に立っていました…

『帰るぞ…』


その後の記憶はありません。

おやじは、この件について一切、何も言いませんでした。


ただ後日、警察署に謝りに行ったとき…

『なかなか楽しいやりとりやったよ…未成年やなかったら、ゆっくり泊めたったんやけどな…』

と、お巡りさんに言われたこと。


家庭裁判所で簡易裁判が行われ、3ヶ月の保護観察処分がくだされたこと。


家裁の帰りに母が

『あんた死んだらどうするんや…』

と、涙を流しながら静かに言われたこと。


これらのことは忘れられません…


これ以降、飲酒運転は一度もしていません…

あたりまえですが…

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