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#1 こまちん版学校の怪談 昭和52年夏

――いきなりですが…マジ話です。
  夏なんで…
  心臓の弱い方はご遠慮下さい―― 

朝晩だいぶんと涼しくなってきましたが、まだまだ残暑は厳しいですね。 

さて、去り行く夏を惜しむ意味も込めて、今回は、こまちん版学校の怪談をお送りします。これは、こまちんが中学一年生の夏に体験した実話です。 

その頃、枚方の中学校に通うこまちんは、ワンダーフォーゲル部(いわゆる山岳部)に所属していました。夏休み最初の週、ワンゲル部では、全学年揃っての校庭キャンプが恒例となっていました。当時、男女30名近い部員数だったでしょうか…。 

学校の中庭にテントを張り、校庭のすみに穴を掘って簡単なかまどを作り、集めた薪で火を焚き、飯盒炊爨をし、また大きな鍋では、カレーが煮られました。 


中学一年生の厨房こまちんには、それはそれは楽しいひとときのはずだったのです。(そう、あのことさえなければ…)

キャンプでは定番のカレーライスも出来上がり、全員で『いただきま~す!』と、元気良く笑顔で食べ始めたその時、まさしくボツボツという感じで、大粒の雨が降り始めました。大急ぎで全員が自分のカレーや荷物を持って渡り廊下に避難したのです。 

途端に雨は勢いを増し、さらには強い風も吹き出し雷雨となる始末。雨も横なぶりとなり全員で立てたテントは、あっという間に吹き飛ばされてしまいました。 

とりあえず顧問の先生の指示で、食べ掛けていたカレーを急いで食べ終え、激しさを増す突然の嵐を不安な面持ちで全員が眺めていました。 

しばらくすると嵐は収まりました。空には綺麗な月と星が輝いています。そう、既に夜になっていたのです。全員が中学校の生徒なわけですから、みんな自宅はその校区内にあります。(こまちんは走って2~3分のところに住んでいました。)

テントも吹き飛んでしまったわけですし、その時に解散してしまえば何事も起こらなかったのです…
が、顧問の先生は夜遅くに子供たちを帰らせることに危険を感じたのでしょう。当直の先生(セコムとかない時代でした。)と相談のうえで、そのまま全員、教室に泊まることになったのです。みんな喜びました。(今さら帰るなんて考えらんな~ぃ!とかって、みんな考えていたのでしょう…)

ここで先ほどからナイスな判断をしている顧問の先生について解説しておきます。名前は高田先生。(下の名前は忘れました。部員はみんなタカセンと呼んでいました。)担当教科は社会科。(当時、京阪神地方にはおかしな先生が多かった…。特に社会科は…。)
この先生、若い頃は山にこもって山伏の修行をしたそうで、霊感というかそんなことにとても詳しかった。
夏休みの終わりにワンゲル部では、年一回、希望者(親の承諾書が必要)による一泊登山があるのですが、この先生は毎年宿泊場所にお墓や古戦場、行けば必ず誰でも漏れなく心霊体験が出来ます。
と、いうような有名な名所名刹を選んで下さいました。(おかげ様でこまちんも中学3年間で数々の貴重な体験を積ませていただきました。)

さて、男女それぞれ寝泊まりする教室も決まり、やっと人心地ついたころ、全員が一つの教室に集められました。怪談話をするという理由で… 


全員が集められたのは、普段から利用されていない教室でした。机や椅子も何もないその教室の床に全員が車座に座らされました。勿論、怪談話をするのは前述のタカセンです。ここからは、タカセンが実際にそのときに話した怪談話です。 

タカセンは静かに語り始めました。

―――みんなは、この学校が出来て何年になるか知ってるか?お、吉田。そうや、ちょうど今年で5年目や。俺は、この学校が出来る前は、○○中におったんや。あの学校は戦前からある古い学校でなぁ、当時、木造モルタル建ての古い校舎の建て替えをしたんや。その建て替えをしたときにな、実は古い校舎の中から何体かの人骨が出てきたんや………。学校の校舎なんかは、いっぺん建ててしまえば、何十年も取り壊すことなんかあらへん。そやから骨が出てきたときには、もう遅いんや。それが事故なんか殺人なんかは分からんけどな。すでに時効が成立してるちゅうわけや。完全犯罪の成立やゆうて、結構、世間でも騒がれたもんやで…。ちょうどその頃、この学校の工事が始まっとったからなぁ~。ひょっとしたらなぁ~。この学校にも何人かは入っとるかわからんなぁ――― 

教室も廊下もすべての電気は消され、明かりといえば部長の吉田さんが持っているか細い懐中電灯の灯りのみ。深夜の学校はただそれだけで不気味に見えるもので、既に女子は隣の子と抱き合っており、男子も顔が引きつっていたと思います。(こまちんはこの時点で何滴かチビッてました。) 

穏やかな低い声のトーンでタカセンの話はさらに続きます。

―――もともと○○中におった古い先生らはな、骨が出てきたとき、「やっぱりな」って言うたんや。なんでかっていうとな、○○中では昔からいろいろなことがあったんや。たとえばな、雨が降る日には、壁に人の形をしたシミが浮かび上がってくるとか、授業中誰もおらんはずの廊下に足音が聞こえて授業を終えた教師が廊下に出てみると濡れた足跡がついとったりとか、夜になると誰もおらんはずの教室の扉が突然ガラガラっとなっ!――― 

と、タカセンがひと際高く言ったそのとき、『ガラガラガラーッ』と誰もいないはずの扉が本当に開いたのです!!! 

「ぎゃ~」「ふげ~」「え”~」教室は大パニックです。女子はうつ伏せになって泣き叫んでいます。男子の何人かは、扉の反対側の窓を開けて逃げようとしてここが3階だということに気付いてやり場のない恐怖を雄たけびによって紛らしています。こまちんはチビッてしまって腰を半分浮かせています。(ほかに同症状を発症した者が知っているだけで男女1名ずついました。こまちん調べ)

収まらない恐怖の中、唯一懐中電灯を持っていた吉田部長は、意を決したかのように震える両手で灯りをその開いた扉に向かって指したのです。(さすがは部長さん!)か細い灯りの元、そこでわれわれは、はっきりと見たのです!! 


全員のあまりのパニック状態に行くことも退くことも出来ずに呆然と立ち尽くす用務員のおじさんの姿を… 

「あのぉ~、お茶ぁ~、持って来ましたけどぉ~」 

おじさんは申し訳なさそうに一言言うと、大きな薬缶を扉の前に置いて立ち去っていきました。 

そして、みんながほっとして気付いたときには、今度はタカセンが居ませんでした。ふと見ると閉まっていたはずのもう一方の扉が開いていました。(タカセン!最初に逃げたな…。)

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