#3 二十歳のお祝い 昭和59年晩秋
ちょうど、こまちんが二十歳の誕生日を迎えてすぐのことと思う。
突然、親父に『おい○○。飲みに行くぞ!』と誘われた。
生まれて初めてのことでとても驚いた。
二十歳の祝いにどこか素敵なところへ連れていってくれるんだろうか?
と、ワクワクしながらついていくと…
着いたのは『新世界』。
もっといいとこ連れてけよ…
何で息子の二十歳の祝いがよりによって『ジャンジャン横丁』なのよ…
と、思いつつも串かつ屋の汚い暖簾を親父の後に続いてくぐる。
この頃のジャンジャン横丁は、今とは雰囲気が違いとてもガラが悪かった。
出てくるビールも瓶のラベルを貼り足した上からところどころ剥がれていたり…
何よりメニューが串カツ、どてやき、天ぷらと素材が一目でわからないものばかり…
客層もなかなか独特のものがあったし…
そもそも、カウンターの中で串カツ揚げているおっちゃんが、すでに酔っぱらってたりして…
とにかく、さんざん親父とふたりで飲み食いしたあと、『おあいそ』となった。
この道、ン十年といった感じの串かつ屋のおっちゃんがメモ用紙片手に慣れた手つきでめんどくさそうに暗算を始める。
酔ってて大丈夫なのか?
との心配をしっかり肯定する計算結果…
『あ~っと、千六百八十円ね』(絶対違うし…安すぎるし…)
※注:括弧内は、すべてこまちん心の声。以降省略。
親父、場末の串かつ屋で財布からおもむろに出す万券…(やめてくれよぉ~。親父ぃ~。)
『え~っと、一万円から引いてお釣りがぁ…九千六百八十円っ、と…』(おっちゃん!商売成立してないぞ~!!)
また、めんどくさそうに札を数えて親父に渡す串かつ屋のおっちゃん…
『はい。お釣りね。』
渡された札を手早く数える親父…(えっ?今、10枚なかったかぁ~?)
数えた札から、ピッと素早く一枚を抜き取りおっちゃんに渡す親父…
『ありがとうな!』
『へぇ~♪まいどぉ~』
輝く笑顔の赤ら顔、串かつ屋のおっちゃん。(潰れるな…この店…)
串かつ屋を出たとたんに店に入ってからずっと無口だった親父が笑顔で話しかける…
『なぁ~!おもろかったやろぉ~!!』(親父ぃ~!初めてじゃぁねえなぁ~!!)
古き佳き…
今はいない親父との思い出話でした。