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ピアノにまつわるエトセトラ、そしてオット。

我が家には古いピアノがあります。
そのピアノは義母のものでした。

義母のピアノ

31年前の夏、義実家にピアノがやってきました。
カワイのアップライトピアノ。
子育てが終わった義母が子どもの時からの夢、習いたかったピアノを始めるために購入した中古のピアノでした。
その時、義母56歳。奇しくも今の私の歳です。
古いけれどピカピカのピアノをそれはそれは嬉しそう眺めながら、
「これから週1回習いに行くんよ」と言って張り切っていました。
私が義実家に行くたびに、
「koma8さん、なにか弾いて!」と言ってくれて、数曲弾くと、
「ああ、今日はピアノが喜んどるわ~。」と褒め殺し(笑)してくれました。

義母のピアノは元来の真面目さと熱意で、日に日に上達していたようでした。
しかし、真面目さゆえの練習のしすぎで、ほどなく慢性的な腱鞘炎になってしまいました。

あるとき、義実家に電子ピアノがやってきました。
「電子ピアノなら力を入れないでも音が出るから、、、」と義母。
昭和12生まれの、ピアノが贅沢だった時代の義母。
イヤイヤ習わされていた私としては、手首を痛めてもなお弾きたいという義母の熱意が、それほどまでしてもやりたいことがあるというのが羨ましく思いました。

「お義母さん、そのピアノはどうするん?」と私。
折しも年中になった長女にそろそろピアノを習わせようかと考えていた時でした。
「えっ!中古だけど、使ってくれる?」
処分したくない念願のピアノを使ってもらえたら、これほど嬉しいことはない、と。

かくして、義母のピアノは我が家(マンション)のリビングに引っ越してきました。

以後、長女、次女共にピアノを習いました。
義母は孫たちが来るたびに、
「電子ピアノじゃけど、何か弾いてくれる?」といい、
「○○ちゃん、また上手くなったね~!」
「上手な人に弾いてもらえると、ピアノも喜ぶわ〜!!」と嬉しそうでした。
(娘たちのピアノの腕が上がってくると、いつの間にか私にはお声が掛からなくなりました、、、笑)
義母のピアノは娘たちが高2になるまで大活躍したのでした。

ピアノはどこへ、、、

8年前、我が家のUターン計画が持ち上がりました。
2年間の断捨離期間を経て、実家の隣に引越しするのです。
その頃の断捨離顛末はコチラへ。

断捨離したものはあまたありましたが、
さて、問題はピアノです、、、
・娘たちはもう習っていない。
・引越し先の実家(隣)にはピアノがある。

義母から譲り受けたピアノは、いただいておきながら恐縮なのですが、、、。
普通に弾くには問題ないのだけど、実は弾きにくいんです。
少しピアノが弾ける人ならわかります。
鍵盤にクセがあるんです、、、。

「あそこ(私の実家)にピアノあるんだから、コレは持っていく必要ないよね?」と娘たち(私も)。

使わないピアノは業者に引き取ってもらおう。
また誰かが手にして弾いてくれたほうがピアノも喜ぶよね!

手放すつもりで、義母に報告がてら話しをしました。
義母は一旦は了承してくれましたが、翌日、「リサイクルはやめてほしい」と。

「ピアノはうちに運んでくれる?」と。
ピアノを置く場所を考えるから、ピアノは処分しないでくれ、と。

腱鞘炎の悪化で、電子ピアノすら弾けなくなっていたのに、その電子ピアノも応接間に鎮座しているのに、、、。
義母のピアノ愛に改めて驚くとともに、これから終活しようかという歳で、私は正直なところ「ありゃりゃ、、、」と思いました。

そうこうしているうちに、断捨離期間の2年が過ぎました。
本当にピアノどうする?、と。

義母は“ピアノを移動させなくてはならない”という事を忘れてしまいました。
もはやピアノに執着があった事さえも忘れてしまったようでした。
(ちなみに、私の事も忘れていました。)

こうなると、人として、ピアノを処分するなんて出来ません。
ピアノの事を忘れているからと言って、義母の気持ちを知っているのに手放すことは出来ません。
(私も鬼ではありませんから!笑)
新居の設計段階ではピアノはない予定で、ピアノを置くスペースは確保していませんでしたが。
こうなると仕方ありません。

置き場のない新居に義母のピアノはやってきました、、、。

現在のピアノは?

去年、義母は亡くなりました。
ピアノは持ち主を失ってしまいました。

それで、ピアノはどうなったかというと、、、?

義母の四十九日が終わった頃。
「ピアノが弾けるようになりたい。」
オットが突然、言いました。

オットはオルガン教室に通ったことのある譜面の読める男子です。
(ピアノ愛の義母の息子ですから!)
娘たちがピアノを習い始めた時、ちらっと「僕も弾きたい」的なことをほざいていた記憶があります。
ですが、私が腕組みして眉間に皺を寄せて、娘たちの練習をスパルタしていたのが怖すぎたのでしょう。
当時、絶対やりたい!までのことは言いませんでした。

あれから25年。
今、オットは毎日ピアノを練習しています。
オットにエールをこめて、大人のピアノ本を買ってあげました。

おとなになって始めたい方、オススメの本です


アラ還の素人は、毎日好きな曲を好きなように弾いています。
近所のおばさんが「koma8ちゃんち、誰かピアノひいてる?」と。
密かに、アレはダレだ?とウワサになっていました。

、、、スミマセン。
近所迷惑にならない程度に気をつけます。

このあいだ、オットが一言。
「長女に追いついたな!」と。

なんちゃって幻想即興曲

、、、百年早いわーーーー!!


お義母さん、ピアノありがとう。
あなたの息子の老化防止に役立ってますよ(笑)

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