仕事の流儀#03 経営企画/イノベーションセンター 【 鷲尾 有美】
文具メーカー、空間設計の老舗企業として100年の歴史を持つコクヨは今、次の100年を目指して、大きな変革を起こそうとしています。
人々の創造性の解放へ挑戦を続けてきたコクヨがこれからの時代で目指すのは、「一人ひとりの価値観が尊重され、社会や人とのつながりも大切にされる自律協働社会」を創ること。
本企画、「仕事の流儀」では、そんな自律協働社会を創るコクヨの様々な職種のメンバーにインタビューを行い、これまでの挑戦や経験の中から生まれた未来を創るための仕事の流儀を明らかにしていきます。
第3回では経営企画/イノベーションセンターから鷲尾さんにご登場いただきお話をお伺いしました。
予想外の配属。まさか私がコンサルタントに!?
ーー鷲尾さんは建築系採用でコクヨに新卒入社されていますが、設計者/デザイナーとしてクライアントワークをするキャリアのスタートではなかったのですね。
鷲尾さん:そうですね。キャリアのスタートは自分でも予想外のものになりました。大学院で建築を学んで入社をしたので、自分の中では「デザインをするぞ!」と意気込んでいました。ただ、ワークスタイルコンサルタントという仕事ができたことは、今思うとすごく学びが多く、良い経験を積ませてもらったなと感じています。
ーー当時は具体的にどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
鷲尾さん:クライアント企業のコンサルタントとして、経営課題の解決に向けた働き方やオフィス空間のあり方を提案する仕事です。
実際にクライアントの経営陣や現場社員の方々と、働き方を変革するための意識改革ワークショップを実施するなど、空間デザインや家具を提案する手前で向き合う仕事をさせてもらいましたね。
ーー大学院ではデザインや建築設計を専攻されていた中、いきなり入社後にコンサルタントとして活躍できるものなのでしょうか?
鷲尾さん:そこは、一歩ずつ成長に繋がる場を用意してくれるコクヨの環境に救われました。例えば、入社2年目のタイミングでコクヨの社内プロジェクトである「霞が関ライブオフィス」の立ち上げに参加させてもらうなど、顧客オフィスではなく、まずは自社オフィスをどうつくるか?という経験を積ませてもらえたことで、デザイン視点だけではなく、経営者・運営者視点での困りごとや課題が見えるようになったと思います。
左脳と右脳を行き来して考えられる人になる
ーーコンサルタント職をご経験された後には、3年ほど設計の現場で働かれていますね。
鷲尾さん:入社4年目の2014年-2017年に設計現場でキャリアを積めたことも私にとって大切な経験になりました。コンサルタントとして働いた後に、日々、パースや図面を描き、空間提案をしていく中で左脳的な論理と右脳的なクリエイティブを一気通貫で実施することで顧客課題のブレークスルーのきっかけを生み出すことを実感できる機会でした。
この経験があったからこそ、経営企画/イノベーションセンターへ異動後、THE CAMPUSのプロジェクト構想・設計に携わった際に建物1棟の構想、建築領域の設計、社内外の多数の人を巻き込んでいくプロジェクトマネジメントなどをやり抜けたと思います。結果、今まで社内で誰も経験のない領域へのチャレンジとなり経験値もさらに蓄積されたし、社会からの評価も頂けたので自分に自信が持てるようになりましたね。
ビジネスデザイナーを目指す新たなキャリア
ーー経営企画/イノベーションセンターに異動し、THE CAMPUSのプロジェクトを完遂後はどのようなことをミッションとして担っているのでしょうか。
鷲尾さん:経営企画/イノベーションセンターの役割は多々ありますが、私自身のミッションはライフスタイル領域でこれまでの既存事業とは異なる事業の柱を創ることです。例えば、不動産や街づくり、サービス業なども含めた事業を創出しようとしています。
ーーこれまでの、「コンサルタント」や「デザイナー」という肩書きの定義には収まらないミッションを担っていると思いますが、現在のご自身の肩書きを表現するとしたら、どんなものになるでしょうか?
鷲尾さん:現時点は私の自称ですが(笑)…、「ビジネスデザイナー」を名乗れるように頑張っている、というところですね。
自分がこれまで培ってきたデザイン思考を軸にアイディアをかたちづくり、しっかりとしたビジネスモデル・戦略に落とし込んでいけるようになりたいですね。
大切なのは問いを立てる熱量。だけど、それって…。
ーー今、多くの企業が新規事業創出や新たな事業の柱を創り出そうとしているタイミングだと感じますが、ビジネスデザイナーとして新規事業の創出を目指す上でコクヨの場合はどのようにプロジェクトが立ち上がるのでしょうか?
鷲尾さん:私個人の感覚ではありますが、コクヨの場合は個人の内的なエネルギーがプロジェクトをスタートさせるきっかけになることが多いと思います。それが正しいかはこの先の結果でしかわからないことですが、そもそも「会社に言われたから、とりあえず新規事業プロジェクトを考える」という進め方は長続きしないと思うんですよ(笑)
新規事業創出はとてもハードな道のりだし簡単には成功しないことを考えると、壁を乗り越えていくには外的なプレッシャーなどだけで動き続けるのは難しいと思います。それに、当事者意識のもとに始まったプロジェクトであれば、成功しても失敗しても、そこから学びを蓄積して次の一歩を踏み出すことができると思います。
もう一つ、そういう内的なエネルギーで動く人、熱量を持っている人と働くのは周りも楽しいんですよね(笑)
ーーおっしゃる通りだと思います。でも、あえて嫌な言い方をすると、会社員が内的なエネルギーを燃やして、「自分はこれがやりたいんだ!」ということを発見する/実行するのは難しいのではないでしょうか?
鷲尾さん:それはあると思います。大企業であるほど、先人たちが築いてきたビジネスモデルのおかげでご飯が食べられている現実もあるし、会社としてさらに成長するために変革を起こさなければ、という意識が薄くなってしまう構造はあるのでしょうね。
実際、私自身もデザイナーとして働いているときに、あくまでその仕事は「クライアントの課題を解決すること」がミッションなので、クライアントは問いを持っているけど、「自分の中には問いが無い」という状態で働いてしまっていた時期も正直に言うとゼロでは無いです。
好奇心を試行錯誤しながら育てていく
ーーでは、どうしたら会社員でも自分の内的なエネルギーを燃やせるのか、「自分のやりたいことはこれだ!」というものを見つけられるのでしょうか。
鷲尾さん:これは今回のインタビュー企画のテーマである”仕事の流儀”の答えに繋がるのですが、「好奇心を刺激するインプットをし続ける」ということに尽きると思います。実際に私もイノベーションセンターへ異動直後はクライアントワークに慣れすぎていて、自分のやりたいことがわからなくなっていました。それでも都市開発からテクノロジー関連の本まで大量の書籍を読み込んだり、実際にその領域で活動されている人やメンバーと話をしたりと、とにかくインプットの量を増やしました。
ちょうど当時は、コクヨの未来を考えるというプロジェクトが進んでいたこともあり、機会に恵まれたこともありますが、そういったことがなくても自分で常に脳を刺激したり、日々の働き方の影響で眠ってしまっている好奇心を呼び覚ますインプットをしていくことが重要だと思っています。
ーー「好奇心を刺激する、呼び覚ますインプットをし続ける」というのは、
鷲尾さんがこれまでのキャリアで築きあげてきた「左脳的な論理と右脳的なクリエイティブを一気通貫で実施する」というスタイルにも良い影響を与えるのでしょうか?
鷲尾さん:とても影響があると思いますね。やはり左脳・右脳を行き来しながら、それまでしてきた点のインプットが線として繋がった時にひらめきが生まれると思うので、スティーブ・ジョブズが言うConnecting dotsのような考え方を持つことは重要ですし、それを意識的に起こす意味でインプット量を増やすことは大事だと思いますね。
もう一つ、Connecting dotsをレベルアップさせるために私が大切にしている仕事の流儀を挙げるとしたら、「まずは目の前の仕事をしっかり実体験する、そこから学びを得てまた違う仕事に幅を広げていく」ということですね。経験=点(dots)に幅や深さを出すには、一定以上の時間や集中度をもって臨むことが必要なので、費やした時間は裏切らないと信じて、すぐに結果が出なくてもポジティブに仕事に向かうことを大切にしたいと思っています。
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第3回「仕事の流儀」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ワークスタイルコンサル、空間デザイナー/設計者、そして新規事業を創造するビジネスデザイナーへ、異色のキャリアを形成してきた鷲尾さんに仕事の流儀を語っていただいた今回のインタビュー。
Connecting dotsを意識的に起こすこと、経験=点(dots)の幅や深さを出していくための日々への向き合い方を意識することで、自分なりの仕事のスタイルが確立されていくことを教えてくれました。
鷲尾さん、ご協力ありがとうございました!
第3回も個性豊かなメンバーの登場で盛り上がった「仕事の流儀」では、引き続きコクヨの様々な職種のメンバーへインタビューを行いながら、コクヨの仕事、人の魅力に迫っていきます。
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