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斎王からの伝言[創作]5
5 感応現象
今日の野花菖蒲会Skype会議は、珍しくいつもよりグダグダで時間が押していた。それぞれに報告したいことがあって一つ一つが重かったのだ。後半になると本能のままに行動するコウは眠くなり、人間嫌いのエマはイライラして、一番大人で一番年下のミキは落ち込んでいた。
エマ「全く理解不能です。」イライラすると途端に敬語を使いだすので分かりやすい。
コウ「えーそうかな。なんか分かる気がするなぁ。」ファ~とアクビを悪びる事なくするのが彼女だ。
ミキ「医者を望んだのは親だったし、私一人が残された時、何のために生きているのか分からなくなりそうだったから。」小さい声ながらもハッキリ言い切る。
エマ「親御さんもまさか優秀な成績で長い時間を掛けて誰もが憧れる医者になったのに、全て捨てるとは思わなかったでしょうね。せめてご両親を見送ってから辞めてもいいのでは?」
ミキ「能楽師はほとんどが世襲制で小さな頃から稽古を積んできてるの。私なんてあり得ないくらい遅いんだもの。だから今しか出来ないことなの。」今度は声を上げた。
コウ「今日話した気功さぁ、ミキさんはどう思った?」唐突で脈絡のない質問はいつものことだ。
それに慣れているミキは普通に答えた「感応現象だよね。科学的に実証されてはいないけど、私はあると思ってる。」
コウ「もし、証明するとしたらやっぱり誰がやっても同じ結果にならないとダメだよね。」
ミキ「そうなるけど、感応現象は精神感応のように主観を扱うものだから、同じ結果は出せない分野だよ。心理学からのアプローチ以外で超感覚的知覚をどうやって普遍的なものとして証明するの?」
コウ「超感覚?普遍的?オーラとか…」
エマ「いやオーラこそ証明できないでしょ」突っ込みはエマの役目だ。
コウ「電磁波とかどうかな。見えないけど実際あるよね。コードレスで飛ばせるしさ、会話出来るしさ。医療でも使うでしょ。」
ミキ「電気現象なら脳波があるね。数値化の目安としてはいいかも。」
コウ「お釈迦様とか、キリスト様がこの場にいたら徹底的に機械で調べて測定して、目安みたいなものが出来るのになぁ。」
エマ「でもさ全ての人が、お釈迦様のようになりたいものなのかな。ミキさんみたいに優秀な医者なのに辞める人だっている訳だし、みんな一様を目指すってどうなのかな。」
コウ「コピーを作るみたいなものか。う~ん何か私の発想は、足りていないって感じる。何だろう?ずっとモヤモヤしていて、スッキリしない。」
エマ「呼吸をしてみたら?吐くときは吸うときの倍時間を掛けるとしっかり出来るよ。」
ミキ「能楽師も呼吸がすごく重要だよ。結局、科学的には証明されていなくても重要な事は昔から伝えられてきてるね。」
コウ「…何でみんな科学科学ってなったんだろう?」
エマ「出た。なぜなの教えてハイジ!!」
ミキ「また長引そうな問題だから、一旦解散しますか。話を聞いてくれてありがとう。」
エマ「うん。お休みなさい。」
コウ「次の課題が出来たよ~。こちらこそありがとう。お休み。」
今回の野花菖蒲会Skype会議は、お茶を濁すような、尻切れトンボのような終わりかただった。