【実際に機能する魔術の教程本『モダンマジック』】其之一 あるいは本物の儀礼魔術師になるための鈍器本
〈本物の魔術師に、なりたくはないか?〉
「Mr.マリックとか、引田天功?」って、それもすごいんだけど、それってMagicって綴るほうの魔術で、いわゆるマジシャンでしょ!
「ハリーポッター?」って、それってファンタジーの魔法のほうだし!
そうじゃなくって、Magickって綴る魔術で、アレイスター・クロウリーとか、オースティン・オスマン・スペアとか、ダイアン・フォーチュンとかのやつですよ。
さて、このたび当社から刊行されますドナルド・マイケル・クレイグ著『モダンマジック』。原書は第2版までで15万部を売り上げたという魔術書では異例のベストセラー。その第3版には大幅な増補加筆を施し、これを著者クレイグは「プラチナ版」と呼んでおります。
本書の扱う技法はヘルメス的結社「黄金の夜明け」団を核としていますが、それだけにとどまらず、東洋、ペイガン、クロウリアン(セレミック)、さらに現代の体系からもアイデアを取り込み、扱うトピックはというと、タロットとその歴史、占術、小五芒星追儺儀式、六芒星追儺儀式、中央の柱、光体の周回、物見の塔の儀式、瞑想、生命の樹、3本の柱、カバラの四世界、カバラの歴史、ゲマトリア、ノタリコン、テムラー、聖書の解説、タリズマン、アストラル旅行、パスワーキング、ヒーリング、『ソロモンの鍵』、いかなる目的にもデザインできる魔術儀式、性魔術、などなど盛りだくさん。祭壇やローブを始めとする魔術道具のDIYまで懇切丁寧に解説されております(祭壇を作る際には「戸棚を組み立ててるんです」といって材木売り場で材料を切ってもらえとか、仕上げのコーティング剤は薄く重ね塗りしろなどなど……)。
全13レッスン中、「外陣」を構成する1~6では、夢日記や儀式日記をつける意味やその書き方、本書で使うタロットカードの選び方や大アルカナを使ったリーディング、カバラの概論などを学ぶとともに、地・風・水・火という各魔術的元素を身に着け、各元素に関する魔術道具を作成することに主眼を置きます。かつ、各レッスンに関連したいくつかの儀式を習得していきます。
「外陣」で基礎を終えた後には「内陣」に進み、タリズマン原理(レッスン7)、タリズマンの充塡(レッスン8)、中世グリモワの秘密(レッスン9)、性魔術と錬金術の秘密(レッスン10)、アストラル体投射とパスワーキング(レッスン11)と実習し、最後のレッスン12では『モダンマジック』のモダンたる所以である現代魔術の最先端、NLP(神経言語プログラミング)、ケイオスマジック、ポストモダンマジックを扱います。
各レッスンは非常に具体的に書かれており、かゆいところに手が届くアドヴァイスも実例を交えて書かれております(たとえば「魔術に関係のない人との付き合い方」とか、「アストラルむち打ち症とその治し方」とか)。
しかのみならず、巻末には、多くの読者から受けた質問を整理して回答した「モダンマジックFAQ」、魔術用語集ともいうべき「教程の用語集」、そして和訳文献まで補った「注釈付参考文献一覧」も付録として収録。さらに本日本語版には、正しく魔術を学ばんとする日本の魔術志願者のために、日本の現役魔術師Hieros Phoenix氏の訳者解説「『モダンマジック』が打ち立てたもの」を収録。そして分厚い本には必須の索引も完備。
幅広い分野をカバーしつつも魔術を実践することに主眼を置き、多くの図版を使って具体的に説明されているのが、本書の大きな特徴です。このあたりを「訳者解説」では、「繰り返すが、彼の著述の明快さと具体性が多くの読者を獲得してきた最大の要因である。……じつに幅広いトピックをカバーしている。まさにこの点も多くの読者の琴線に触れた主要な理由であろう」と述べられております。しかしそれのみならず、続いてもっと大事な「魔術書事情」も解説では暴露されています。
このような「魔術書事情」があるなか、本書の原著者はというと、「訳者解説」によれば、魔術の実践については次の4つのバックグラウンドがあるとしています。
1.「黄金の夜明け」団系列
2.タントラ結社
3.ペイガン・グループ
4.ケイオスマジックに代表される新しい魔術の潮流
1.については、著者はクリス・モナスターというリガルディーの直弟子に師事しております。2.については「シャンバラの騎士の秘教魔術」団に、3.については「アリディアン・ウィッチクラフト」と「アメリカン・トラディショナリスト・ウィッチクラフト」に参入。4.についてはケネス・グラントの「タイフォニアン3部作」から影響を受け、クレイグの『モダンセックスマジック』には3名の米国におけるグラントの追従者も寄稿しているほどです。
以上の事実で、クレイグが「IROB」(I Read One Bookの略。本を1冊読んだだけで、自分のことをエキスパートだと思っている手合い)ではないことは明らかでしょう。ちなみに「IROB」はレッスン末にあるレビュー(内容確認問題)にも、巻末の「付録4 教程用語集」にも出てきますので、憶えておいてくださいね。
魔術に関する全般的な知識は当然のことながら、儀式魔術のイロハを実際に身に着けて自分(たち)で実践し、さらに応用できるようにするための基礎全般を習得できるのが本書『モダンマジック』なのであります。ユーザーフレンドリーなステップバイステップ形式の魔術書の先駆けとして海外では定番となっているのも、一読なさればご納得いただけることと存じます。本書によって、より強力で成熟した魔術師になるために必要なすべてを、独力で学ぶことができるのです!
ちなみに本書では「黒魔術」の実習は行わず、悪霊や悪魔などの邪悪な存在を呼び出すことなどはありませんので、ご安心ください(あるいは、がっかりしました?)。
という、清く正しい魔術について、道具の作り方まで含めた全部入り、市井の魔術師にとってゆりかごから墓場までのお供となる本書は、重量1.2kgを越え、785頁というボリュームは厚さ約4.5cmに達し、これなら魔術的パワーともども悪漢に襲われてもナイフも通さず反撃の道具にもなろうと、ホームセンターの防犯グッズコーナーから護身用具としての発注が来たとかこないとか(そんな発注も待ってます、仕入れご担当者様♡)。
さて以上のごとく実践魔術のイロハから応用までも扱う本書ではありますが、イ抜きのロハ(=只)で出荷するわけにもいかず、「プラチナ版」にふさわしいお値段(10%税込で9,680円)がついております。当社HPに挙がっている本書概要と目次・索引だけでは逡巡していらっしゃるかたがいるのも無理からぬこと。
この漫談まがいのnoteにまでたどり着き、ここまで読んでくださったのも何かのご縁。そこで、他人ではない他でもない、まさにあなた様の背中を押してさしあげるために、note次の回では、本書に収められている、魔術界のレジェンドみずから筆を執った「序文」を再編集の上(ちょっと長いんで)、ふたつほどお目にかけましょう。
文=編集部(今)
『モダンマジック』
ドナルド・マイケル・クレイグ 著
婀聞マリス/折刃覇道/白鳥至珠/バザラダン/HierosPhoenix/Raven 訳
2023年05月末発売
菊判・上製・総785頁 ISBN978-4-336-07491-1
定価:本体8,800円+税