近年の小学校お受験試験内容の動向1 近年の小学校お受験の内容と特徴 お受験合格への道2022
今回は近年の小学校お受験の動向として、内容と特徴に関してお伝えさせて頂けたらと思います。
近年の試験内容の傾向
最近の小学校お受験の試験傾向として、ペーパーテストを実施しない小学校が増えてきたことが挙げられます。
経緯については、後述しますが、近年の出題傾向について、簡単に触れていきたいと思います。
ペーパーテストを実施しない学校の増加
ペーパーテストを実施しない学校は、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、学習院初等科、立教小学校、桐朋学園小学校、川村小学校などが挙げられます。
これらの学校の試験では、いわゆる行動観察型のテストを実施しています。このように試験の内容が変化したのには様々な理由がありますが、ある私立小学校の学校説明会で校長先生から、面接の実施に関して以下の様な話しがありました。
「私どもが面接をしないのは、親御さんに『趣味は何ですか』とうかがっても、本当は競輪や競馬が大好きでも『読書、音楽鑑賞です』とおっしゃるでしょう。だから面接をしません。しかし、私どもでは二日間、お子さんを預かりますから、どのような家庭環境で育てられているかわかるのです」
試験の場で子ども達が演技をするのは大変難しいことです。そのため、育てられた環境を、学校側にありのまま見せてしまうことになります。
そのため、行動観察型の試験は、ペーパーテストより対策が難しいく、日々の積み重ねが重要になります。
行動観察型の試験では受験者の基本的な生活習慣やしつけ状況、他者との関わり合いである言葉遣いから社会性、協調性といった集団への適応力などを総合的に評価しています。
先生の言葉を聞き取り、理解し、考え、判断し、自分の言葉で表現したり、絵を描いたり、行動する、過程と結果を観察していると言えます。
ペーパーテストを実施している学校
一方、ペーパーテストを実施している学校は、暁星小学校、雙葉小学校、白百合学園小学校、東洋英和女学院小学部、聖心女子学院初等科(一時期、ペーパーテストを中止していた)、立教女学院小学校、光塩女子学院初等科、国府台女子学院小学部などがあります。
学校名をあげてみると、宗教教育を行っている学校が多いのが目立ちます。
そして、いずれの小学校も、名門校で、試験問題の難易度は、高いことも共通しています。
これは推測ではありますが、過去問といわれている、以前に出題された問題を集めた本などを使い、繰り返し問題を解くといった受験準備ではなく、基礎知識をしっかりと身につけ、問題を解く応用力を備えるていることを、学校側は求めていると考えられます。
例えば、試験問題の中には「四方図形」があります。これは、テーブルの上に置かれた左手をあげた縫いぐるみを、前後左右から見ると、どのように見えるかといった問題です。
この場合、四つの方向から見ることになりますから、単純に四つの違った答えがあります。
つまり、学校側は一つの解答だけではなく、多角的に物事を捉えて判断する、そういった力を持つ子どもを求めているとも言えます。
行動観察型の試験の具体例
また、行動観察型の試験としては過去に以下の様な問題が出題されました。
【雙葉小学校】
お皿に入っているプラスチックの玩具の宝石20個ほどを、細かく分かれている箱に、塗り箸でつまんで入れる。
【白百合学園小学校】
プラスチック製の穴の空いた板に紐が通してあるお手本を見ながら、同じように紐通しをする。(暁星小学校でも出題されました)
【暁星小学校】
机の上に弁当箱、弁当箱のふた、弁当袋、箸、箸箱、箸箱のふた、校内着、半袖のポロシャツ、ハンカチ、ティッシュ、本、靴下などがバラバラに置かれ、それをファスナー付きのカバンの中にきれいに詰める。
靴を脱いで、机にある折り紙をとってきて、好きなものを折る。(5個折らせた年や、少し力が必要な折り方が出題されたこともあります)
【青山学院初等部】
靴を脱いで手を洗いにいき、椅子をテーブル代わりにして、煎餅、クッキー、お茶を自分で用意し、いただく。食べ終えたらゴミを分けて捨て、後片付けをし、席で待つ。
【日本女子大学附属豊明小学校】
いろいろなビーズの入ったトレーから、自分のお皿にできるだけ多くのビーズを塗り箸で移す。
細い紐にビーズを通して端を結びネックレスを作る。
クーピーで絵を濃淡に塗り分ける。
【東洋英和女学院小学部】
机に置いてあるカゴの中から、弁当箱とハンカチをとってくる。次にテスターが持っているカゴから、ピンポン玉2個と豆を箸で取り、弁当箱に入れる。そして、テスターの手本どおりにハンカチで箸と弁当箱を包み、指示された机に置く。
【立教女学院小学校】
塗り箸で、さいころの形をしたキューブを隣の紙のお皿に移す。
【千葉日本大学第一小学校】
教室の後ろのテスターのところに並び、洋服をハンガーごと持ってくる。ハンガーから洋服を取り、着ている服の上からきる。ボタンを1つかける。ボタンを外し、着た服を脱ぎ、ハンガーにかけテスターのところへ持って行く。
【早稲田実業学校初等部】
靴を脱いで絨毯に上がり、お手本を見て封筒を作る。作り終えたら机の中から雑巾を出して手を拭いたあと、机を拭き、たたんで机の中にしまう。
【田園調布雙葉小学校】
持参した服に着替え、着ていた服を風呂敷で包む。
【横浜雙葉小学校】
お友達と床に正座して、おしゃべりをせずに、持参した弁当を食べる。
【日出学園小学校】
ふわふわボール6個を箸でつかみ、弁当箱に入れナフキンで包む。
まとめ
近年の小学校お受験で学校側は、上記の様な行動観察型の試験を通じて、受験者に基本的な生活習慣が、きちんと身についているかを評価・判断していると言えます。
そして、基本的な生活習慣やしつけは、ご家庭の養育環境や姿勢として学校側に映ります。
「しつけや言葉遣いは、生まれる前に刷り込まれているわけではないから、強制的に教え込まなければならない」
※東洋英和女学院小学部の寺澤東彦前部長
「訓練されていない個性は野性である」
※国府台女子学院の平田史郎学院長
どちらも宗教教育を行う女子だけの小学校ですが、ご家庭の教育に何を求めているのか、受験対策のポイントは何なのかが、これらの言葉に集約されています。
つまり、知識だけ身についた偏った子どもではなく、知・徳・体の三つの能力が、年齢相応にバランスよく育った気力のある子を望んでいると言えます。
したがって、小学校受験でもっとも大切なことは、就学前の子どもにふさわしい基本的な生活習慣やしつけ、挨拶、言葉遣いなどを、きちんと身につけておくことが重要です。
そして、そのためには早くからしっかりと計画を立てて、一つ一つ階段を上るように、地道な努力を積み重ねていくことが大切です。いわゆる、付け焼き刃などは、ボロがでてしまうことが多いのです。
あるミッション系の小学校説明会で、校長先生の発言として
「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、受験準備、こと足れりとお考えになるのは、間違いであることに気づいてほしい」
ともありました。
泥縄式とは、「泥棒を見てから縄をなうことで、事が起こってからあわてて、その対策に手をつけることをあざけていう言葉」ですが、特に、幼児の小学校お受験の場合、これからの毎日の生活の積み重ねが、来年の秋に実を結ぶことに繋がっていくのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のコラムも私の個人的な知見に基づくものですので、必ずしも正しいとは言えませんし、他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、大切なお子様のお受験に役立てて頂けたらと思います。
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