近年の小学校お受験試験内容の動向7 集団テストの内容 お受験合格への道2022
今回は近年の小学校お受験試験内容の動向の第7弾として集団テストの内容についてお伝えさせて頂けたらなと思います。
集団テスト
集団テストは10名から20名位のグループで、部屋に置かれている遊び道具、ボールや縄跳び、積み木や輪投げなどを使い、各人が自由に遊んでいる様子や、先生のまねをして踊ったり、熊や象などの動物のまねをしているところを観察するものや、話を聞いて、話の続きを想像して絵に描いたり、全く条件を与えられないで好きな絵を描いたりするテストです。
集団テストの狙い
集団テストの狙いは、
・遊んでいる様子→自発性
・何かを作ったり、絵を描いたりする→表現力や創造力、巧緻性
などを評価しています。
巧緻性は、手先の動きを使って作業が、きめ細かく上手にできているかを評価します。つまり、日常生活で両手を使用した作業を行っているかを観察しています。
家族の手を借りずに、どの程度、自分自身でできるか、自立心も評価されます。さらに、基本的な家庭の養育環境下での生活習慣も関わっています。もちろん、積極的に参加する意欲や自主性も判断材料とされています。
一方で、クリスマス・ツリーなどを作る課題を与えられ、5,6名の友だちとグループを組み、相談をしながら、自分の考えを伝え、相手の意見にも耳を傾けながら、協力して制作する問題もあります。これらは社会性や協調性が培われているかを見る行動観察型のテストです。
集団テスト【自由遊び】
「好きな道具を選んで、自由に遊びなさい」
と、集団テストを実施する場所で試験の担当者が受験者に伝えます。そして、各々が好きな玩具を使って自由に遊んでいる場面を観察するテストです。
テストを実施するとなかには戸惑う子もいます。その原因は、家庭で日常生活の管理環境が強いことが考えられます。
家族の指示どおりにしないと、𠮟責されたり、嫌な顔をされることで子どもが過敏に行動を抑制してしまいます。
これでは、学校側が求めている自発性や自主性を育むのは難しいと思います。現在の日本の乳幼児教育は自由保育ですので、この様な管理された養育環境下で育ったお子さまは特に異質に映る恐れがあります。
遊んでいるときは、子どもの本来の姿が表れますので、そこを学校側は観察・評価します。
他の子が自分の好きな遊びに熱中しているなかで、何やら不安気に、ボーッとしていると、育児が過保護や過干渉であると判断され、良い評価を受けることは難しいと思います。
一方で、今、ボールで遊んでいたと思ったら、今度は縄跳び、と思う間もなく輪投げ。集団テストの開始から一ヶ所にジッとして居られません。
これは、幼児期に認められる子どもの成長を現す一面で、目移りではなく、好奇心が旺盛と言い換えることもできます。
しかし、次から次へと志向性を変え、人が遊んでいるおもちゃを横取りしたり、いくつも独占したり、散らかしっぱなしにしていると、単なるわがままか、飽きっぽいだけで、養育が過保護になっていると評価されてしまいます。
遊ばせると、子どもの養育環境は判断・評価できます。幼児の試験に適しているとも言えます。子どもたちは、無意識で養育環境を露わにしてしまいますので、無心に遊ぶ、ちょっとしたしぐさから、家庭の養育に対する姿勢が観察・評価・判断されてしまいます。
集団テスト【身体表現】
試験担当者の動作をまねる、身体表現のテストです。
例えば、アザラシの歩き方をまねたりします。両手で体重を支え、両足をそろえて伸ばし、両手を交互に出しながら前に進みます。
腕力と腹筋を使いますから、かなりきつい動作です。もちろん、あざらしそっくりにできればいいのですが、それだけではありません。これも積極的に参加する意欲があるかどうかも含めて観察・評価されています。
幼児は自分の考えを表すときに、言葉だけで表現できない場合、身体全体を使って表現しようとします。
これは表現する対象をよく観察していないと当然できません。仮にお手本をしっかり観察していても、ぎこちない動作になってしまいます。
しかし、観察をすることで
「どこが、どう違うのかな?」
と観察を自己投影し自分の動作としてスムーズに取り入れていきます。
大切なのは、興味・関心を持ち、自身に投影させていく能力です。興味があれば、細かいところまで見極めようとしますし、他の動物との違いを見つけられれば、素晴らしい学習になります。
これらの学習は、同じところと異なったところを見つける、「類似差異」の見分けといいます。
それらの体験から、新しい意欲や知識が備わってきます。これらのテストの目的は、生活体験、自分を取り巻くものへの関心や、そういったものに対する観察力であるといえます。
そして、幼児に大切な教育は、教え込むより、疑問や関心の芽を育ててあげることです。
集団テスト【共同制作】
クリスマス・ツリーを作ること問題が出題されたとします。
折り紙、モール、きびがら、発泡スチロール、リボン、厚紙などの材料から、セロテープやのりなどの接着剤、はさみ、穴あけパンチ、ホチキスといった道具が用意され、相談しながら制作しなければいけません。
要は共同制作です。
「制作、得意なんです、私に任せといて!」
「苦手なんだ、はさみを使うの。手を出さないで見てよう!」
そうはいきません。みんなで相談しながら作ります。自主制作ではありません、共同制作というところがポイントです。
以前、日出学園小学校では、4,5人のグループで模造紙1枚とクレヨン1箱だけ用意し、相談しながら絵を描かせる課題が出題さました。ある年は「弁当箱」でした。クレヨン1箱ということは、同じ色は2本ないことです。
さあ、いったい、テストはどうなってしまうでしょう。
このテストは、本当に大変です。考えてください、全員、今日、初めての場所で出会ったのです。
幼稚園や保育園、幼児教室や近所の気心の知れた友だちではありません。名前もパーソナリティーも能力も趣味も、全く、わからない集りです。
そのため、養育環境が露わになります。
「自分のことは自分でしなさい!」
と、家族が自主性を培う育児に徹していれば、一本しかない黄色のクレヨンをどうすれば使えるかを自分で考えます。
過保護、過干渉な育児では、果たして自分の考えを言い、積極的に参加できるでしょうか。学校側の狙いは、ここにあります。
子どもには解決困難な出題をして、そこから新たな答えを創造する、そんな評価をしているかもしれません。
集団テスト【お絵描き】
過去の小学校お受験の集団テストで以下の様な出題がありました。
受験者に教室に紙を貼ったイーゼルを立てかけておき、その前に数種類の絵具を用意し、絵を描かせました。
学校の狙いは、何でしょう?考えてみてください。
これらと同様なテストは受験者のマインドを図る試験と言ってもいいかもしれません。
本格的な話しになっていくと長くなりますので、別の回で色彩と心理動向に関する精神的状態などを深掘りしていきますが、誰にも強制されない中で使用する色彩感覚は、受験者の生活環境と精神状態を表しているとも言えます。
無意識に使用する色がダーク系の色なら生活環境が明るくないものと示唆していると評価者は受け取ります。
これらは、実態ではなく、発達心理学の統計学を用いて解を導きだしますので、当たっている家庭もあれば、当然、当たっていない家庭もあります。
小学校お受験で良い評価を受けることは、子ども本来の能力や特性を伸ばすというよりは、発達心理学上の有力な仮説に基づいた群に含まれているか、いないか、の方が重要な要素と言えます。
まとめ
今回は、特定のキーワードがあったため、小学校お受験の観察・評価・判断に関して、ネガティブな論調にもなりましたが、お受験を否定しているわけではありません。
旧来の暗記学習のみの成績評価の状況と比較すると改善されている部分も散見されます。
ペーパーテストが減少しているのもその一端かもしれませんが、やはり、まだまだ教育の改革は遅いままです。
しかし、様々な法的な制約のある中で改革の動きがあるのは次世代を憂うものとして嬉しいことではあります。
この様なコラムを書かせて頂いているなかで、子どもの教育に何が最善なのか本当に混迷することもあります。
それは、子どもにとって最善な教育と、お受験に合格するための教育には少なからず乖離があり、それらに左右され、優秀な家庭までも子どもの最善の将来を導けない現実があるからです。
商用的な乳幼児教育が一端となって加熱した無責任な教育論理が大切なお子さまの将来を台無しにしないことを切に願います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のコラムも私の個人的な知見に基づくものですので、必ずしも正しいとは言えませんし、他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、大切なお子様のお受験に役立てて頂けたらと思います。
「フォロー」や「すき」をして頂けると励みになりますので、ご迷惑でなければ宜しくお願いいたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?