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父と娘のふたり旅って、ほんとはどうなの? 娘の本音。

つい先日、父と年一回の恒例の旅行に行ってきた。70代父と40代娘のふたり旅行。
母が亡くなった翌々年に、はじめて父とふたりで旅行に行った。父はまだ勤めていて、わたしも社会人2年目の年だった。
それからなんとなく、毎年ふたりで旅行をすることになった。たしか、1番初めは西伊豆で、そのあと数年間は沖縄が恒例だった。
そのうちに台湾やトルコにも行った(いま思えば、トルコはふたりの大冒険だった!)
車の運転を交代しながら2泊3日で岩手、秋田、青森まで行き、それがふたりで行った1番の長距離ドライブとなった。
今思えばその頃までは、父はとても元気だった。一緒にたくさん歩き回ったし、沖縄ではダイビングもした。
「毎年ふたりで旅行している」なんていうと、仲良しなんだと思われるかもしれないけれど、父とは決して仲が良いとは言えない。
趣味嗜好はこのうえなく合わないし、一緒にいたり話していたりすると苛々してしまうことのほうが多い。
父の行動や発言は、ときにわたしを絶望的な気持ちにさえさせる。
わたしの父へ対する感情はとても複雑で、恨むような気持ちも大切に思う気持ちも、とにかくいろんな相反する気持ちが、ごちゃ混ぜだ。
でもこれはきっと、世間でもよくある感情だと思っている(そんなことはない?)

旅行の行き先はいつも父がきめるのだけど、ここ数年は、決まった温泉宿に行くことが多くなった。足が痛いせいか父は前ほどアクティブではなくなってしまったし、もしかしたらだけれど、娘が嫁に行ったことをやっと実感して遠出は遠慮しているのかもしれない。

最近の旅のスタイルは、前日にわたしが、電車で2時間ちょっとかかる父の家に行き、翌日朝、父の車でだいたい3時間くらいの場所にあるお宿に向かう。途中、お昼なども含めて1,2か所どこかに立ち寄る。
道中、わたしたちは7,8割が無言だ。旅全体を通しても6割は無言だと思われる。話したいことはないし、そもそも話しだすと、もの見方や考え方の合わなさを痛感する。
では、何を話すかと言えば投資の話が一番盛り上がり(父はこの手の話が大好き)、次に、わたしが知ったり見たり体験した話を適当にふり(たまにズレた答えが返ってくるけれど、そこそこ続く)、あとは目の前のことについての感想を(いい景色だとか、美味しだとか)言いあうくらいだ。
父は車の中でNHKラジオか、むかしからずっと聞いているお気に入りのCD(ほんとうにずっと昔からおんなじ曲を聴いている、飽きないのかと不思議なくらい)をかける。わたしはどちらも嫌いなので、何気なく音量を小さくしていき、いつのまにかフェイドアウトさせるのだけれど、父も何げなく音量を戻すので、いつもその攻防戦になっている。(かといって、自分の好きな曲をかける気分にもなれない)

せっかく行くのだから楽しみたいので、わたしは出かける前日の晩や旅の途中で、なにか面白いところや美味しそうなお店がないかちょこっと調べている。いつもだとそれは夫の役割で、夫はわたしの希望をもとにすべて完璧に調べておいてくれる。が、父との場合はどちらかというとわたしがその役割を引き受けるのだけれど、たとえばお昼を食べる場所とかをフィーリングで決めても、なんとなく、そこそこうまくいっているような気がする。おおらかな性格の父とだと、ハードルが低いからか、こだわりすぎないところが案外良いのかもしれない、とおもう。(評価とかスマホでなんでも事前に調べちゃうけれど、流れに身を任せるのも良いよね)

父は意外と人懐こい性格で(元は田舎のひとなので警戒心がないというのか)旅先で話しかけたり、かけられたり、お店の人などともお話することがある。今回の旅でも、訪れたある公園の職員さんとおはなしをした。
作業をしていた彼女は、わたしたちが通ったら「こんにちは」とあいさつをしてくれた。もしこれが、夫とふたりの旅行なら、挨拶だけで終わっていたかもしれない。一緒の方向に行くので、しばらくおはなしをしながら歩いた。こうして旅先でおはなしする方たちはだいたい優しくて、わたしたちに「いいですねぇ」という。
そういう方にとっては、わたしは親孝行している優しい娘に見えるのだろうか。だけれど、別の場所ではもしかすると、すねかじりでわがままで口うるさい娘に見えたひともいるはずだと、わたしは思っている。
一緒に過ごしていると父との感覚の違いにどうしても不機嫌になってしまうことがあるし、納得のいかない父の行動にいらだってしまったりもする。
父の性格は、よく言えば周りをまったく気にしない、とても自然体な性格だとおもう。きっと、わたしは反対で、人の目や周りのことばかり気にしてしまう。だから、父の行動にヤキモキしたり、ハラハラしたり、イライラしたりしてしまうのかもしれない。
そういう父を「ユニークなひとだな」とか「あははっ」て笑って済ませられたら良いんだろうけれど。(血のつながりがあるからなのか、自分の一部として見てしまっているからいけないのだろうか?)

旅が終わるとホッとする反面、なんだか少し寂しさや後悔が残る。
それから、父と過ごした時間にうんざりしているくせに、たしかに、安心に近い心地良さがあったようにおもう。
父の家から自宅に戻ってくると「着いたよ」と、いつも電話をすることにしている。
そこでやっと、わたしは素直になれる。
父は「(わたしのおかげで)良い時間が過ごせた、ありがとう」と言ってくれる。子供の頃は、父から「ありがとう」となんて言われたことなかったのに。
つい数年前までの父との旅行を思い出してみると、不思議なことに、すべてが懐かしく感じられる。あの頃の父は足も元気で、わたしは父が年をとるなんてぜんぜん考えていなかった。

あぁ、悔しいけれど「わたしたちはやっぱり親子なんだなぁ」と思う。
来年も、再来年も、ずっとこうしてわたしは父と旅行に行きたい。

ランチに食べたピザ
違う種類のピザを頼んでシェアして食べた
景色が良くて父が喜んでた!
わたしの大好きな【藤城清治美術館】に連れて行ったら、
作品より、お庭と窓から見える景色に夢中になってた😓
父はお好みじゃなかったようで。
わたしは藤城先生の作品大好きなんだけどな〜
まっ、仕方ないよね〜



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