【国宝探訪】空海と密教美術展@東京国立博物館

この探訪記は、2011年7月24日のものです。
上野の東京国立博物館へ「空海と密教美術展」を見に行ってきました。
まだ始まったばかりで、閉館2時間前(土日は18時まで開館)に行ったので、すごい展示なのに空いていました。まぁ、すごい展示と言っても、東寺のいわゆる立体曼荼羅を構成している仏像は全21体のうち8体しか来ていないというように全部揃って来ているものはほとんどなかったので、そういう意味では中途半端と感じる人もいるかもしれません。実は私もそう思っていたんです。東寺も何度も訪れて、立体曼荼羅も何度も見ているので、そんなに期待していませんでした。この展覧会のポスターもずいぶん前から駅などで見かけましたが、売りはその立体曼荼羅のようで、「ふ~ん、でも全部は来ないんでしょ」って感じだったんです。
でも、出品目録を見たとき、立体曼荼羅以外に素晴らしい仏像や空海直筆の書や貴重な史料など密教に関連する文化財がこれでもかという程やってくることがわかり、かなり期待して行きましたが、期待どおり、いや、それ以上の展示でした。

第1のテーマは空海の絵や書だったので、人もまばらでしたが、おかげでじっくり見ることができました。人気のある展覧会はだいたい入り口から激混みというパターンが多いんですよね。あれでいきなり疲れてしまうんですが、今日は元気なまま第2のテーマの部屋へ。

第2のテーマは空海が唐に行き、密教と出会うということで、空海が唐から持ち帰った袈裟や密教法具、絵画が展示されてました。
その一角に兜跋毘沙門天立像が展示されていたんですが、1体で広く空間を取っていたので、見ごたえがありましたね。全身を鎖帷子のような鎧で包んでいる他では見られない姿の毘沙門天です。兜跋毘沙門天立像ってあんなに背が高かったかな?
この仏像は東寺の宝物館にいるんですが、そこで見たときは他の仏像の脇侍のように片隅に置かれてましたので、この仏像を目当てに行った割にはあんまり印象に残らなかったんです。宝物館より展示方法も良いし、じっくり見られました。これだけで行った甲斐がありました。

第3のテーマは唐から帰国した空海と密接な関係のある神護寺、高野山、東寺の文化財でした。ここで本日一番印象に残ったものと出会いました。高雄曼荼羅と呼ばれる曼荼羅図なんですが、すごく大きかったです。大きさというかスケールに圧倒されてしまいました。紫の地に金銀泥で描かれた曼荼羅図の緻密さにも目を見張るものがありました。

第4のテーマは密教がいろいろな寺院に伝わっていく過程で遺された文化財でした。そこに一番見たかった獅子窟寺の薬師如来像が展示されていました。顔立ちは精悍な雰囲気でしたね。衣文がシャープな線で表現されていたところがよかったです。
そして、神護寺で見た五大虚空蔵菩薩も選抜メンバー2体が来てました。柔和な表情に癒されました。あと、5体それぞれに塗られた彩色がうっすら残ってるんですよね。選抜メンバーは赤と白でした。そうなると、やっぱり5体揃ってる方がいいなぁ。仁和寺の阿弥陀三尊像の光背が綺麗でしたね。

あと、東寺の秘仏・西院の不動明王に付属している天蓋と大壇も来てました。あくまでも上と下で、不動明王そのものは来てません。けれど、それが秘仏の雰囲気を醸し出していて、どんな不動明王なのかを想像するのが楽しかったり・・・。

そして、最後に立体曼荼羅が8体で再現されてました。スロープを登るので、なんと立体曼荼羅を上からの目線で眺めることができるのです。今までもこういう展示方法を見てるのにもかかわらず、思いつかなかったので、これにはやられたと思いました。
全体の照明を落としてあり、1体ずつに照明をあてているので、上から見ると浮き上がって見えました。今まで立体曼荼羅がすごいと思っていましたが、こうして1体ずつ改めて見ると1体1体どれも素晴らしい仏像でした。
特に持国天の表情は説明に「最も恐い表情の四天王」と書かれているだけあって、新薬師寺の伐折羅大将を思い出させるようなものすごい迫力でした。
後ろからも見ることができて、とても満足しました。三面顔があると思っていた降三世明王の背後に何気なく回った時、正面の顔の真後ろにもう一つ顔があったのには本当に驚きました。東寺であの角度で見るのは無理ですから、ありがたかったです。

何度も訪れている東寺でも見られないような展示方法になっていたり、山の中腹にあり、予約制ということで行くのを諦めていた獅子窟寺の薬師如来像を拝観することができたり、大満足の展示でした。

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