【国宝語り】国宝絵画(仏画)

国宝の中で、絵画は162件、今年、そこに新たに4件加わりました。一言で絵画と言っても、「鳥獣人物戯画」「伴大納言絵巻」のような絵巻物、曼荼羅図や仏や高僧を描いた絵のように仏教に関するもの(仏画)、水墨画や、狩野派、琳派など多岐にわたります。日本で描かれたものだけではなく、牧谿筆の「観音猿鶴図」のように中国で描かれたものもあります。

今回は、これまで見た国宝絵画のうち、仏画の中で特に印象に残ったものについて書こうと思います。

「孔雀明王像」(京都・仁和寺)と「普賢延命菩薩像」(京都・松尾寺)は仏画の中で、特に繊細で優美で、いつまでも見飽きないものです。これらの絵を見るまでの私の仏画のイメージは、「堅苦しいだけで、美しいとは思わないだろう」というものでした。その当時、仏画として思い描いていたのが、いわゆる「黄不動」(滋賀・園城寺)「青不動」(京都・青蓮院)など美しいというより迫力があって怖い絵、または高僧を描いた絵のイメージだったこともあります。

「孔雀明王像」は2000年に東京国立博物館で開催された「国宝展」で初めて見たのですが、孔雀の羽の繊細さと孔雀明王の端正な顔立ちがとても印象に残り、その後、仕事の関係で京都を訪れたとき、同僚たちの清水寺に行きたいというのを振り切って、一人で仁和寺に見に行きました。その後、2014年の東京国立博物館での「国宝展」で再度見ることができて、その時も美しさに感動しました。

「普賢延命菩薩像」はメモによると2006年に京都国立博物館で見たのが最初だったのですが、それ以降なかなか見ることが叶わず、昨年やっと京都国立博物館の「聖地をたずねて展」で再び見ることができました。柔らかな色使いが印象的な美しい絵です。

この二つの絵以外にも「阿弥陀三尊及び童子像」(奈良・法華寺)や「吉祥天像」(奈良・薬師寺)も美しさが印象に残っています。変わっているところでは、「明恵上人像」(京都・高山寺)と「絵因果経」(京都・醍醐寺、上品蓮台寺、東京・東京芸術大学)を挙げたいと思います。明恵上人が木のまたで坐禅する姿が描かれた「明恵上人像」については、友人と京都に旅行に行ったときにどうしても見たかったので、お願いして計画に入れてもらったのですが、実際にこの絵を見たとき、友人は「これ見に来たの?」と怪訝そうな顔をしていました。「絵因果経」はお経の内容を絵で表した絵巻のようなものですが、動きがコミカルで、効果線のような表現もあり、奈良時代からマンガのような表現がされていることに驚きました。

また、「子島曼荼羅」として有名な「両界曼荼羅図」(奈良・子島寺)は紺地に金銀泥で描かれた巨大な曼荼羅で、曼荼羅を構成する一つ一つの緻密さが素晴らしく、近寄って見たときに鳥肌が立つほど感動しました。

国宝探訪を始めた頃は、たいして興味のなかった仏画ですが、いろいろな仏画を見た今では、仏画にも様々なタイプがあり、国宝絵画全般の中でも印象に残っているのは仏画が多いと思うようになりました。

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