中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/01/29-2021/02/04_5w
こんにちは。
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
まずは事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることは予めご了承ください。
※本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
※本noteは速報の位置付けとしています
※投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
2020年までの投資動向の概況は以下をご覧ください。
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第5週目である1月29日〜2月4日における、
日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
1月29日〜2月4日の週では、毎日資金調達が行われており、
合計95件となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は485件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、1月29日〜2月4日の週では、
公開金額合計で49.2億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は712.8億元となりました。
なお、今週の95件のうち60件が金額非公開のため、
単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の95件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、法人向けサービスの資金調達が最も多く、24件となりました。
次いで、医療・健康、新工業、Eコマースが上位に入り、
上位4業界だけで今週の件数全体のうち70.5%以上を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界の法人向けサービス、新工業、医療・健康、ローカルライフサービスだけで、全体の61.2%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、
今週は医療・健康、ゲーミング、Eコマース、法人向けサービスの順に多く、
上位4業界で全体の73.9%を占めています。
なお、ゲーミングやEコマースが上位にランクインするのは今年で初めてです。
1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、
物流、法人向けサービス、医療・健康、自動車・交通の順に多く、
上位4業界だけで全体の69.2%を占めています。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の95件を都市別に見ると、
今週もいわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)での資金調達が多いことがわかりました。
今週は上位4都市だけで全体の66.3%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで68.7%を占めています。
5位以下は広州、蘇州、南京、四川、武漢、合肥(安徽省)が安定的にランクインしています。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、北京、広州、杭州、南通(江蘇省)の順にランクインしました。
今週は上位4都市だけで全体の71%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
先週に引き続き、北京、深圳、上海に集中していることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)に大きく偏っています。
上位5都市だけで全体の87.4%を占めています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の95件では、シリーズAが36件で1位となり、
次いで、戦略投資が29件で2位になりました。
また、これら上位2つのラウンドだけで全体の68.4%を占めています。
今週はシードやアーリーステージでの資金調達に偏っているため、
資金調達金額が先週までの規模よりも小さいものとなりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
先週に引き続い、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、
アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、
シリーズBが最も多い20.1億元となり、全体の40.9%を占めています。
次いで、戦略投資が15.2億元で2位となり、全体の30.9%を占める形となりました。
この2つのラウンドで全体の71.8%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
徐々に偏りが出てきたことがわかります。
現状、シリーズA、シリーズF、戦略投資の順に多く、
上位3ラウンドでの合計は全体の63%を占めています。
※シリーズFは件数は少ないものの、1ショットが大きいため、
金額ベースでは比率が大きめになっています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週は1社が新たにユニコーン企業になり、
中国のユニコーン企業数は2021年2月4日時点で273社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
企業名:能链集团
業界:自動車・交通
拠点:北京
設立時期:2016年5月
バリュエーション:10.0億米ドル/65.0億元
主要な投資家:
洪泰基金, 愉悦资本, 招银国际, 蔚来资本, 小米集团, KIP韩投伙伴, 中金资本, 国家中小企业发展基金(国中创投), 建设银行
企業HP:http://www.czb365.com/
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
次に、2021年1月29日〜2月4日に資金調達を行った企業リストを見ていきたいと思います。
今週のメイントピックは、能链集团による資金調達だと思います。
今回のラウンドで1億米ドル(約6.5億元、約105億円)を調達し、
ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
既存の株主には、EV大手のNIOのベンチャーキャピタル(蔚来资本)の他、
シャオミ、中国建設銀行、国家中小企业发展基金、招银国际(CMB International Capital)などがいます。
同社はエネルギーのIoT(EIoT)やエネルギーのニューリテールを推進しており、ガソリンスタンドや充電スタンドののデジタル化などを手掛けています。
2/6時点での同社HPによると、1,700以上の都市で事業を展開しており、
手掛けるガソリンスタンドは2万(市場シェア20%)を超え、
充電スタンド数は50万(全体の76%)を超えているようです。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週14件の投資を行い、
先週に引き続き1位にランクインしました。
今週の投資先の業界は、ゲーミングが最も多く5件でした。
次いで、法人向けサービスが多く4件でした。
その他、金融、メディア、医療・健康、新工業、教育1件ずつの投資がありました。
セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は4件となっており、
法人向けサービス、金融、Eコマース、医療・健康に1件ずつ投資しています。
今週注目する投資家は、
9位にランクインした、毅达資本(Addor Capital)です。
同社は、南京にある政府系ファンドのGovtor Capital(高投集団)から派生して設立されました。
ファンドサイズは2021年1月時点の累計で1,137億元に達しています。
1,137億元は約1.8兆円(1元=16円で換算)なので、
かなり大きいファンドであることがわかります。
その資本力を活かし、投資先は2021年1月時点の累計で957社に達し、
うち205社はIPOしています。
投資分野は大きく7種類あり、投資するステージもアーリーからレイターまでと幅広く投資をしています。
<投資分野>
・クリーンテクノロジー
・健康産業
・文化産業
・消費/サービス
・TMT(テクノロジー・メディア・テレコム)
・新材料
・先進製造
投資実績が中国ベンチャーキャピタル業界で大きく評価されており、
「中国VCベストTOP10」や「中国の最も競争力のあるVC」など多くの賞や格付けを受けており、同社は中国ベンチャー投資における影響力が最も高いVCの一つとして認知されています。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01