見出し画像

信頼すること/信頼できないこと


人との関係について

カウンセリングに訪れる人の悩みで多いのが人間関係でしょう。
知らない人には警戒をします。相手のことを知らない、こっちのことも知らない。人との関係では少しずつ距離を見ながら相互的に深めていきます。
ただこの関係の築き方というのが、なかなか難しいです。

カウンセリングの中でも、「親しい人を作るのが苦手です。」「雑談が苦手です。」などよく聞きます。

以前、わたしは精神科のデイケアで働いていた時、発達障害の方向けに人との関係の築き方について木の年輪を使って話したことがあります。

外側はあまり知らない人。
内側は親しい人。

それぞれに関わり方が違うということを話しました。

ここのところはあまり普段意識しないで行っていることですが、人間関係ではこのぼたんの掛け違いがおきやすかったりします。

発達障害の人がよく言われる相談内容の中に、人との距離感がわからない、雑談ができないというのがあります。自分の年輪の位置がわからないし、相手の年輪の位置がよくわからないというのです。

また境界性人格障害など、他人と自分との境界を持ちづらい人もここの距離感が弱かったりします。親密な距離、一体感ある距離を求めてしまって、自分と他人が違うということは極端な拒絶や隔絶感と感じて、違うというところになかなか身を置けなかったりします。

また、成長過程においてトラウマ体験をした場合、ある時からここの加減がわからなくなるということがあったりします。

年輪は、外側にいる時は、浅いところの話を、年輪の内側にいる時は深い話をしあえるという関係です。
健康な状態というのは、ここのところを使い分けたり行き来できる状態です。
人間関係に行きづまっている時というのは、ここのどこかで固着が起きているという状態でもあります。

相手との関係で傷ついたら、いったん距離を置く、でも親しくしたい人とは、少し打ち解けた会話をするようになる。自分と相手の年輪の位置を見あいながら調整をしてお互いに居心地のよいところを探していくのが、健康的な過ごし方ともいえるでしょう。


ただ、人を信頼する、人に信頼されるという関係づくりというのはなかなか一筋縄に築けるものでもないです。
生きていく限り人にとっての永遠のテーマと言えるくらい、人生の中で壊れたり作ったりを繰り返していきます。


セラピーで扱うのは、この年輪具合を見直していくということをします。
ぼたんの掛け違いが起きていることを一緒に考えて行きます。
ある年輪だけにとどめさせているのは何だろうか。
何かの体験がきっかけに起きているのかもしれない、もしくは小さいころ体験したことが影響しているのかもしれない。
そうであれば今いるところより少し過去のことから見直すことが必要だったりもします。


どうしたらもうちょっと楽に関わっていけるのか。
自分と相手を大事にする仕方ってどうやっていったらいいのか。
執着して離れられないのは、どう手離していくか。
そんなことをセラピーでは考えて行きます。

セラピストは、過度な期待や補償にこたえるでもなく、万能的にふるまうまでもなく、すこしずつ扱えるところを扱っていく。そういった地道な作業をしようという存在です。

そういう意味でも、木の年輪なのです。

年輪が少しずつできるように、成長するには時間がかかります。

時折、セラピストはスペシャリストだから、人間関係ではそんなに悩まないしうまく築けるのだろうと思われることもあります。

そんなことはありません。結構悩んでいたりします。
だからスーパービジョンという個人指導を受けたり、自分がセラピーを受けたりとトレーニングを受けてもいるのです(トレーニングには個人差はありますが)。
なので、お金がかかることであったり、時間がかかることであったり、そんなに簡単にいかないことであったり、でもその中で感じ方の変化を感じたりというのをトレーニングの中で経てきています。

精神分析的な精神療法というのは、人のこころにある理屈ではどうもならない感情や、こうした人との関係での悩みを扱うのには適しているのではないかと私は思っています。

自分のことを知りたい、また人とのことを考えて行きたいという方の、なにかお役立ちになれるかもしれません。

まずはご相談にお越しいただければと思います。

こころの木カウンセリングルーム柏

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?