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【連載】家族会議『実家の習慣の違いでバトル編』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まった家族会議エッセイ!録音記録をもとに連載で書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議2日目#3|実家の習慣の違いでバトル編
結婚後、いいこともあったとは思うけど「今出てくるのは嫌だったこと。」という母。
母:結婚したばっかりの頃、お父さんが実家の習慣の違いを、なんだろうな・・・わたしにとってはちょっとバカにしてるって感じかな。比べて何か言うときの感じが、わたしはバカにされたような感じがしてたの。
わたし:うん
母:お父さんは、自分の実家のやり方を得意そうに言ってるように感じてたのね。
わたし:うん
母:覚えてるのが、わたしたちの結婚式に、うちが呼んだ親族に対しておかしいって。こんな人招待すんのおかしいって言われたときがあって。
それを言われたときに、わたしは一生懸命こんな理由で呼んだんだよ、あんな理由で呼んだんだよって。一生懸命言い訳してたっていうか説明してた。
それに対してさらに言われたりすると、どんどん言い合いになって喧嘩になることがよくあった。
父:誰がそんなこと言ったの?
母:お父さん…。
父:俺そんなこと言った覚えないな。そんなの、呼ぶ基準なんて知らんもん俺。
でた!「キオクニゴザイマセン」。
父は自分の発言を覚えていないことが多すぎる。まぁ政治家と違って意図的というより本気で忘れていることが多いのだけど。いや、意図的なのかな?
母:なんか、自分のほうは兄弟が多いからだと思うけど、夫婦で呼ばれてるから結構な人数になるじゃないですか。うちは、わたしの兄弟は弟ひとりで結婚もしてなかったから、おじさんおばさんを呼んでるわけ。
父:それって数合わせでよくやるから。
母:だからふつうだと思うんだけど、そのころお父さんおかしいって言ってたのよ。
父:おかしいって?・・・。
不服そうな父。
わたし:それさ、今はお父さんの感覚的におかしいって思ってないわけじゃん?「なんでそんなこと言ったのかな」って感じなわけじゃん?もしかしたらおばあちゃんとか、おじちゃんから言われたとかじゃない?
父:それはないな。
と即答。父はこうして人のフォローをばっさり切り捨てる。覚えてないのにどうして「それはない」とハッキリ言えるのか…。
わたし:誰かから言われて、それを言ったとか。
父:まったく記憶にないわけよ。
はいはい。記憶にないで押し通すわけね。
母:わたしもなんとなくそうじゃないかなって。終わった後、親しい人の中で出てきた話を言ったのかなって。それは思ってるけど、実際のところはわかんないけど。
わたし:何回か喧嘩したってことなの?
母:そうだね。この件でもそうだし、細かいことは覚えてないけど、なにかうちのやり方と自分の実家のやり方の違いをお父さんが言ってきて、やっぱりちょっと嫌な感じを受けたから、それをわたしがこうだよ、ああだよって説明でもなく喧嘩っぽく言ったり言い訳したりしてたかな。
母:「実家のことでよく喧嘩してた」っていうのはお父さんも言ってるんだけど、なんだろ、とにかくわたしがそのとき取った感じとしては嫌な感じがしてた。
わたし:まぁ、実家のことを言われるのはお互いに嫌なことではあるよね。親のこととかさ。自分が親のこと恨んでたとしても、人からは言われたくないから。結構タブーな話題というか。そういうところでよく喧嘩してたんだね。
母:あと、これは別に嫌ではなかったけど、味噌汁のお椀がうちでは割れるものを使ってた。お父さんがそれに対して、「自分たちはお椀にしたいな」っていうからいいよって感じでお椀になって。それを親に言ったら、うちの実家でもお椀にしたのね。
わたし:そうなんだ!?
母:だって、お父さん来ることあるでしょ。
わたし:そっか!
母:まぁでも珍しいと思う。昔は味噌汁用のお茶碗っていうのがあって。
わたし:へぇ~!
母:なんかうちの実家のほうが、そういうのを聞いて合わせてるって感じではあった。お父さんたちが碁をするっていうのを聞いて、おじいちゃんが一生懸命勉強したり。
わたし:なんか必死・・・。必死だったんだね。おばあちゃんもおじいちゃんも。まぁ娘のことを思ってっていう感じなのかね。
母:うん。なんかとにかく、受けた感じとしては、お父さんは疑いなく自分の家のやり方がいいと思ってるって感じで、自分の家が正しくて、わたしの家はなんか変わってるみたいな。
母:いくつかそんなことを言われて、それで喧嘩したかな。最初の喧嘩ってそんな感じだったかなって思うね。
わたし:でも確かに、育ちの違いは言うもんね、お父さん。
母:なんだろ、なんかちょっと「バカにしてる」って感じてた。
わたし:うんうん。
母:で、それに一生懸命抵抗してた。で、そのうち喧嘩。
わたし:うん。そうなんだね。
父は沈黙している。母が父に対し「嫌だった」ことを言うと、父はみるみる不機嫌になる。否定や批判にすこぶる弱い。
わたし:お父さんもお父さんで、習慣の違いで嫌な思いしたこととかあったわけでしょ?お父さん?
父:うーん。あったんだろうね。
父はもう投げやりだ。怒りで頭がいっぱいになると話し合いにはならなくなる。だからわたしはフォローする。
わたし:おそらくバカにしてたつもりはないんだと思うんだけど。
父:だから自然とでる上から目線でしょ。
わたし:うん…。なんかそうなっちゃったんだね。
父:ただ、今(言われて)思い出したけど、味噌汁のお椀と茶碗。茶碗ていうのは知らなくてさ、お椀しか知らないんだよ。あれ?っと思ってさ、びっくりした。
わたし:ある意味純粋って言うかさ、お父さんて。純粋に「他にこんな家庭があるんだ」っていう、自分との違いにただただびっくりするみたいな?それ以外にいろいろあるってことを知らずに育ったというか。
わたし:純粋にそうだと思って育ってきたから、結婚して他の家庭の内情知って、いろいろ衝撃受けてびっくりして、「え?それってありなの?」みたいな。「味噌汁茶碗じゃ熱くないの?」みたいな。そういうところがあったのかな?
純粋と私が連呼したのが良かったのか、共感したのが良かったのか、父の気持ちが緩んでくる。声のトーンが明るくなり調子を取り戻していった。
父:あとびっくりしたのは、結婚したての頃ね、お母さんのほうの親戚の家に連れて行かれるんだよ。それで御馳走になったり。
わたし:遊びに行ったときってこと?
母:結婚したばっかりの人を、親戚のうちで紹介するみたいな感じ。おじさんやおばさんの家に呼んでくれて、そこで御馳走になって。
父:ちょっとした宴を催すわけだ。
わたし:へぇ。それは、お父さんの家にはない習慣?
父:ない。
母:今はあんまりやってないと思う。嫁呼びとか婿呼びとかって。
父:昔の風習を継承してんのがお母さんの実家なんだよ。うちはもう、俺が知ってる限りで全くしてないからそんなの。「えー」って思ってさ。きっちり呼ぶんだよ。正直苦痛だった。笑
わたし:普通に緊張するもんね。
母:そこに住んでたらだけど帰ったときだから、大変だったかもね。結婚した次のお正月とかだから。
わたし:そっか。地元で家を継いでる人たちの間でやるならいいけどってことね。まぁだからこそ必要ってことだよね地元では。きっちり紹介して仲を深めておく必要があるんだけど、地元にいない人にはそんなに必要ないっていう。
わたし:お母さんは呼ばれてないんだね?お父さん側の親戚の家には。
母:呼ばれてないね。そのことは気にはしてなかったけど・・・。
わたし:うん。呼ばれないほうがいいしね(笑)。その数時間、どう過ごせばいいのって緊張するし。(お父さん)よく頑張ったね。断るわけにいかないしね。
父:断れないよ~笑笑
わたし:でもなんか、苦痛だなとも思いつつ、今ってそういうのがなさすぎるから、素敵な習慣にも思える。
地元にいないからこそさ、全然親戚のこと知らないから、そういう機会って大事なものでもあるよね。面倒だけど。
今ってそういうのが全部排除されちゃってさ。結婚式も上げなかったりするしね。
わたしは長いことウェディングプランナーをやっていた。そこでいつも感じていたことがある。結婚式当日、親族や友人などが一堂に会すると、ふたりのこれまでの人生を一気に見せられているような気分になるのだ。
新郎新婦さんとは何度も打ち合わせをするから人となりはわかる。でも見えていない奥行きの部分があって、結婚式当日になると「あぁこんなご友人に囲まれて過ごしてきたんだな」「こんなご親族に見守られて成長してきたんだな」って。
欠けていたピースが見つかってパズルが完成する感じ。
今は結婚式を挙げない人も多いし、婿呼び嫁呼びとかもほとんどやっていないらしいけど、こうした風習は相手の背景を知れる貴重な機会だとわたしは思う。
話は脱線してしまったけど…機嫌が良くなった父は、もうひとつ昔の風習の話をしてくれた。
父:あとそういう風習でね。思い起こせば初めての正月に、(母の実家で)杵で餅つきをやってくれたの。あれよかったね。あの風習は。
わたし:わたしが物心ついたときには電動のやつだったけど。
父:あれは残したい風習だと思ったけど、みんな歳とるからなぁ。
わたし:重労働だもんね。お父さんのうちはそういうのやってなかったの?
父:小さいころはやってたよ。やってたけど歳とってやんなくなったなぁ。
父は7人兄弟の末っ子だから、親は祖父母であってもおかしくない年齢だ。時代背景もあり、母の実家より早めに餅つきの習慣はなくなったらしい。
合理化されていく世の中で、風習を行う意味までも失われていくことに、心は行き場をなくしてしまう気がする。
- 話が脱線したところで今日はここまで -
家族会議ではそれぞれが抱えてきたわだかまりを解消することが目的だけど、そればかり話していると険悪になるし息が詰まる。だからこうして昔話をすることは、よいアイスブレイクになる。
なにより、こういう話を聞くことが、父と母の奥行きを知ることにもつながる。
日常会話の中で自然と思い出話ができる家庭もあるだろう。でもわが家では『話す場』を設定しなければならないのが現状なのである。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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