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五感を鍛える

あらゆる感覚刺激は一瞬で脳に記憶され、また、その記憶が刺激によって引き出され、理解や意味づけ、反応、行動となって表出し、そのデータがまた脳に蓄積されます。

どのような刺激を、どう感じ取っているか。
マインドフルネスの実践法は、今この瞬間に気付く力、「気付き力」「覚力」を高める方法です。

先日、ある農業大学の教授から「うちの学生はどっしりとしている学生が多い。というのも、幼い頃から野山を駆け回り、大地に触れながら育ってきているから」といった話を聞きました。

幼い頃から豊かな自然に触れ、五感を鍛えることはとても大切で、それにより豊かな人間性が育まれ、非認知能力も高まるのでしょう。

令和元年7月21日付の愛媛新聞「道標」の記事は、まさに五感を鍛える重要性を伝えており、とても共感しましたのでご紹介します。

編集工学研究所所員(当時)の渡辺文子氏は、自身の海で遊んだ記憶から次のように述べています。(一部抜粋)


海が苦手な子どもが増えているらしい。ベタベタする、波が顔にかかる、水着の中に砂が入る、裸足で歩くのがこわい、海の中が不気味、フナムシが嫌い。しかし、私にとってはそれこそが海の面白さだった。

・・・(中略)・・・

貝殻を踏んで痛い思いをしたり、得体の知れないもの(海草やクラゲが多かった)に触れて悲鳴を上げたりした。陽に焼けた砂浜や石ころはやけどするほど熱く、ピョンピョンと跳んで海に入り足の裏を一気に冷やす。

足の裏の皮膚は、ゴツゴツ、トゲトゲ、ヌルヌル、ジンジンというたくさんのオノマトペ(擬音語、擬態語)を感じ分け、脳にガンガンと指令を送り、快と不快、安全と危険の境界をさぐっていた。海は、私の中にある無数の触感を想起させ、隠れた神経に刺激を与え、無意識のうちに五感を鍛えてくれていたのだろう。岩場での体重のかけ方やバランスのとり方、海中での歩き方を覚え、私は海と仲良くなっていった。

feeling(フィーリング)という英語は、「あの人とはフィーリングが合う」のように、「気持ち」「雰囲気」などをイメージして使うことが多いが、「皮膚感覚」「触覚」という意味も持っている。「肌で感じる」という日本語は、実際にその場に行って感触を認識することをいう。テクノロジーの進化により、人と人は簡単につながることができるようになった。しかし、「実際に会ってみるとイメージが違った!」ということは誰もが何度も経験している。インターネットや電話は、海で履くシューズのように直接の痛みからは守ってくれるが、安心を得るかわりに、本来人間が持っている触感をひ弱にしているのかもしれない。

令和元年7月21日愛媛新聞「道標」渡辺文子氏著


夏休みのみならず、また子どもだけではなく我々大人も五感をフルに活動させ、隠れた神経に刺激を与えて、感性そして人間性を高めたいものです。


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