4エリクソンの発達段階論『幼児前期』

 今回は、エリクソンの発達段階論『幼児前期』について投稿します。

 幼児期とは児童福祉法では、満1歳〜就学前までをいいます。エリクソンの発達段階における幼児前期は、18ヶ月頃〜3歳頃をいいます。この幼児前期における発達課題は、「自律性」です。
 現代社会では、自分の衝動をコントロールできず、キレる人が多くなってきました。これがエスカレートすると様々な犯罪に繋がりかねません。では、自分で自分を律する「自制心」を育むには、どうしたらいいのでしょうか?
 
 自律性を育てるには、「すぐに出来るようにならなくてもいいんだよ」と伝えながら、コツコツと繰り返し教えてあげることです。エリクソンは、「誰でもいつかは出来るようになるから、心配しなくていい。いつからできるかは自分で決めればよい。」と絶えず言っていたそうです。
「まだできないの?何度言えば分かるの?」などと、知らず知らずのうちに言っていませんか?これは、他律です。親が子どもをコントロールしていることになります。
 自律性を育てるために、いつできるようになるかは「自分で決める」というメッセージを伝えながら、出来るようなるまで根気強く、何度も教えてあげましょう。

 補足ですが、前回の投稿で、乳児期の発達課題は「基本的信頼」であると書きました。この「基本的信頼」が育っていなければ、「自律性」は育てられません。基本的信頼が育っている子ほど、自分をコントロールできるので、しつけがしやすくなります。基本的信頼が育っていないのに、これができなくちゃ!あれもできなくちゃ!としつけや訓練をしてもダメなのです。乳児期に十分な愛情を受けず、基本的信頼が育っていない子どもにしつけすることは、とても難しいのです。

 ここまでの内容をまとめると、幼児前期の心理社会的危機、いわゆる発達課題は、『自律vs恥、疑惑』です。いつまでも待っていてあげるから、いつするかは自分で決めなさい。という気持ちで育ててあげることで、「自律性」が育ちます。そして、自分で決めるという「意志」を得られます。
 一方で、いつになったら出来るようになるの?また失敗した。などという言葉をかけると、子どもに自分の存在に対する「恥と疑惑」を与えてしまいます。こういう子たちは、たびたび強迫的になります。この典型的なものが、完全壁、潔癖症といった思春期強迫神経症です。ある行為をしないではいられないことを強迫行為といい、たとえば、不潔に思い過剰に手を洗ったり、戸締りしたか?ガスを消したか?など、何度も確認せずにはいられない行為のことです。
 こうならないためにも、子どもに「自分で決める」ということを学ばせ、できるようになるまで気長に待ってあげましょう。そうすることで、幼児前期の発達課題である「自律性」をクリアでき、自分の意思というものを獲得することができます。

 次回は、エリクソンの発達段階論『幼児後期』について投稿する予定です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


参考文献・Webサイト
・佐々木正美,『子どもの心が見えてくる』,2021年,KTC中央出版
・多湖輝,『子どもの心理法則』,1996年,株式会社ごま書房
・https://bsc-int.co.jp/media/4231/

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