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嫌われた監督

嫌われた監督 ー落合博満は中日をどう変えたのかー 鈴木忠平著

読了。
夏休みにいくつか本を読みましたが、心に留めておきたいため、自分へのエールも込めてこちらをアップします。

ー福留の頭には、たった一つのことだけしかなかった。バットを振る。振り切る。かつて自分とこの球団をつないでくれたスタッフが
解雇され、落合への怒りや失望が生まれたのは確かだ。ただ、グラウンドでは感情を排した。目に焼き付けた前田智徳のスイングと共に追い求めるイメージだけを浮かべてきた。今はただそれを実行するだけだ。落合の声が耳に蘇る。
「一流ってのはな、シンプルなんだ」

ー落合がコーチたちに独自のルールを通達した。
 「選手が訊いてくるまでは教えるな」「選手と食事には行くな」「絶対に選手を殴るな」
 落合がはかつての自分とがそうだったように、自立したプロフェッショナルを求めていた。

ー落合が求めていたのは若さがもつ勢いや可能性という曖昧なものではなく、確かな理と揺るぎない個であった。

ー「この世界に年齢は関係ない」

ー理解されず認められないことも、怖れられ嫌われることも、落合は生きる力にするのだ。
万人の流れに依らず、自らの価値観だけで道を選ぶ者はそうするよりほかのにないのだろう。
監督としての8年間だけではない。野球選手としてバッターとして、おそらく人間としてもそうやって生きてきた。
血肉まで染み込んだその反骨の性が、落合を落合たらしめているような気がした。
そして私を震えさせたのは、これまで落合のものだけだったその性が集団に伝播していることだった。
いつしか選手たちも、孤立することや嫌われることを動力に変えるようになっていった。

ー球団のため、監督のため、そんなことのために野球をやるな。自分のために野球をやれって、そう言ったんだ。。勝敗の責任は俺が
とる。お前らは自分おしごとの責任を取れってな。

ー怪力を金に変えるべく助っ人という立場でこの国にやってきたトニブランコがまるで幼少期の夢を叶えたように飛び跳ねていた。

ー(就職活動中の学生を見て)かつての自分(著者)を見るような思いがした。前を走る誰かがいなければ不安で、いつも横ならびの誰かがを探していた。
(中略)そんな私が順番を待つことをやめたのはいつからだろう。(中略)「お前ひとりか」振り返ってみれば、あの瞬間からわたしは自分の輪郭を描き始めたのかもしれない。私は落合という人間を追っているうちに、列を並ぶとことをやめていた。(中略)落合はどの序列に属することもなく、個であり続けた。落合と言うフィルターを通して見ると、世界は劇的にその色を変えていった。
この世にあらかじめ決められた正義も悪もなかった。列に並んだ先には何もなく、自らの喪失を賭けた戰いは一人一人の眼前にあった。孤独になること、そのために戦い続けることこと、それが生きることであるようにに思えた。

ー「俺が監督のになった時、キャンプ初日に紅白戦をやるって言ったよな。あれ何でだかわかるか?」(中略)「ひとりで考えて練習しなかったか?誰も教えてくれない時期に、どうやったらいきなり試合のできる身体を作れるのか。今までで一番考えて練習しなかったか?」

ー「(中略)お前はこれからいく場所で見たものを、おまえの目で判断すればいい。俺は関係ない。この人間がいなければ記事がかけないというような、そういう記者にはなるなよ」

#読書
#嫌われた監督

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