笑ってはいけない大宴会⑧~終末~
しかしですね。
後々振り返りますと、この“御歓談の時間”という名のカラオケ大会、実に2時間にも及んだそうなんですが、“任侠ソング”ってそんなに曲数が無いんですよね。
そこで、あらかた出尽くした頃合いで司会者さんが割って入ります。
「ここで御紹介させて頂きます。舞台中央にございます、こちら、広島のオジキから頂きました美酒でございます!!」
……おい、司会者。ラベルに『多満自慢』って書いとるぞ!
それ、東京は三多摩地区の地酒じゃね~か!?
ど~考えても持ってきたんじゃなくて、コッチに上京してから“間に合わせ”で手配したんと違うンか!!
ちなみに、その舞台中央に据えられた酒瓶というのが通常より明らかに太くて長い。
それもそのはずで、通常は1升瓶ですが、ここにあるのは2.5升瓶。
升というのは「ます」と読みますから、それが2升と半分で「ますますはんじょう(升)」っていう語呂合わせの縁起物なんであります。
まぁ、注文品ではありますが、別にこうした世界に限らず財界の古式ゆかしいセレモニーでも用いられる品ではあるんですがね。
さて、司会者の1ブレイクの後、カラオケ大会は任侠ソングから軍歌、浪花節へと曲調を代えて行きます。
ま、皆さん“漢”を売る商売ですんで、意地でも『男と女とラブゲーム』だの惚れたはれたソングへは流れんゾ!と。
そして宴も最終盤、再び司会者さんがマイクをとります。
「さぁ、楽しかった宴もいよいよ最後。トリはいつものこの方に締めて頂きましょう!川崎の兄貴。唄いますわ……『小指の思い出』!!」
……♬ババ~ン 「I塚、O久保、T…アウト~ッ!!」
またね、よせば良いのに川崎の兄貴ったら、女性になりきって身をくねらせながら、でも顔は至って真面目に熱唱されとるんですわ。
地獄ですやん!?そんなん。
ジャンル的に『小指の思い出』は反則でしょ~が!
♬ババ~ン 「全員、アウト~!!」