vsカラス
何年前か忘れてしまうほどの昔、建設現場でアルバイトをしておりましてね。
冬の大雪予報が出された日で、どうしても翌日以降に回せない作業がありましてその日は朝の7時から早出をしようという事で、現場から徒歩圏内に住んでいた私が早出部隊に選ばれてしまったんであります。
しがないアルバイトなのに……
都営バスも行き交う幹線道路沿いの商店街を20m程進んでコンビニの向かい側の路地を突き当たりまで入ると現場となります。
いくら徒歩圏内に住んでるとは言え作業開始が7時となると朝食を食べてからでは間に合いませんので現場から程近いコンビニで買い込んで現場の休憩所で食べよう、と。
パパッと済ませようとおにぎり1個にお茶、そして“揚げ鶏”を買い込みましてね。
現場と言いましても先ほどご案内したのは倉庫や資材置き場のある裏口でありまして、ゲートを潜りますと右手が事務所や休憩所が設けられた二階建てのプレハブで左手がサイコロ状の物置小屋が整然と並ぶ倉庫群。
中央は赤ちゃんの拳大の砂利が敷き詰められたちょっとした広場になっておりますわ。
で、アルバイトの私は着替え等が入ったリュックを倉庫に入れねばなりませんので休憩所で食べる食糧は砂利の上に置いてから倉庫のシャッターをガラガラ~と開けてリュックを中へ放り込み再びシャッターをガラガラ~閉めてパッと振り返った。
……こんなんものの30秒もかかっちゃいませんよ。
そこで私の目に飛び込んで来たのは!
私が置いたコンビニ袋にガラスが頭突っ込んで中を物色しとる惨状(泣)
まずは持ち運びには重たすぎるお茶のペットボトルを袋外へ引き摺り出し、食べるのに邪魔なフィルムでがっちり覆われたおにぎりはくちばしでヒョイと放り出し、揚げ鶏だけを器用に選び出している姿。
「揚げ鶏て……と、共食いやんか」
クワァ!
カラスの野郎は揚げ鶏を咥えたまま一鳴きすると空の彼方へ飛んで行ってしまいましてね。
「口に物入れたまま喋べっちゃなんねぇ、とお袋さんに習わんかったんか!?」
その時に、時間的にコンビニに行き直す余裕も無く、ガラスが持て余したおにぎりをお茶で流し込んでいる時……そら~、味なんてしませんでしたわな(泣)