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スナックおもてなしの夜

流行り病が蔓延するさなか、不安な気持ちを抱えてとぼとぼと夜道を歩いていると、向こうに明かりが見えた。
「スナック おもてなし」。
営業自粛のお触れが出ている中、開店を強行したのか。ならばここで気晴らしでもするか、そう思って扉を開けると、店内には小さなステージがあって、ちょうどマリオの扮装をした男が開演の挨拶を済ませて退場し、踊り子たちが登場するところだった。この店は世界各国から踊り子やパフォーマーを集めているようで、さまざまな踊りや、超絶的な技巧の曲芸が、次から次へと繰り広げられた。
感染の不安などすっかり忘れ、ステージに釘付けになった。夢中になって声援を送りながら、和服姿の小池ママにすすめられるままに盃を重ねていたが、気がつくと窓の外は白んでいた。
ガタイのいいドイツ人のオヤジがやってきた。
「さあ、おひらきね。お会計は10万3929円デス。」
そんな金は持っていない。
「高すぎる、ママを呼んでくれ」
と文句を言うと、すごまれた。
「御冗談デショ?ママは次のお座敷があるって言って出かけましたよ。お客さん、さんざん楽しんでたじゃないですか。ちゃんとお勘定は置いていってネ。」
そして強烈なパンチ。

目を覚ますと、野原の真ん中で横たわっていた。風に舞う枯れ葉が一枚。
「さてはタヌキに化かされたか・・・」
ふところを探ると、財布がない。そして何やら寒気がする。流行り病にやられたのではと不安になり、医者を探して次の村への道を急ぐことにした。

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