つらつらと楽園追放2.0 楽園残響—God speed you—について語る
はい、感想第二弾です。今回はタイトル通り、映画オリジナル作品の楽園追放の続編にあたる小説作品、楽園追放2.0 楽園残響—God speed you—について語っていきます。
楽園追放を見る機会として、期間限定でとあるチャンネルから配信されていた時期がありました。その機会を狙ってみて、世界観感に駄々ハマりし、続編はないものかとインターネットを彷徨い、見つけたのが小説という形態での続編でした。この時の自分はどんな形であれ続編が観れるということが嬉しさでいっぱいでした。
軽く楽園追放の概要を説明すると、遠い未来、科学を発展させた人類は未曾有の大災害ナノハザードを引き起こし、地球の生態系は悉く崩壊します。そこで人類は宇宙に作り上げた巨大なサーバーの集合体であるディーヴァに電脳体として生きるようになった時代のお話です。
主人公はアンジェラ・バルザック。釘宮理恵さん演じる、ディーヴァのエリートです。彼女も電脳生まれ電脳育ち。楽園追放ではディーヴァに地上からの不正なハッキングが行われており、フロンティアセッターを名乗るその人物は外宇宙探査を呼びかける映像を流している。そのハッキングしている人物を突き止めるのがアンジェラの任務です。
地上はナノハザードの後、生態系が著しく変貌しましたが何とか人類も生き延びており、アンジェラはそんな地上に、クローン技術を駆使して作られるマテリアルボディと呼ばれる肉体で調査に向かいます。
電脳育ちのアンジェラが初めて体験する地上の生活、その中で触れる仁義。SFロボットものとしてだけ見るのにはもったいないいい作品です。アンジェラが後半に進むにつれて人間味を取り戻していくのもいい点ですね。
さぁ、ここからは楽園追放2.0に語っていきます。続編という性質上、ネタバレ祭りなのでご注意ください。
はい、ではいきましょう。今回楽園追放2.0、今後はサブタイトルでもある楽園残響で話していきます。
舞台は映画から数ヶ月後の世界。フロンティアセッターの正体は高度な進化を遂げたAIであり、外宇宙探査についても出鱈目ではありませんでした。前作の最後でフロンティアセッターは無事外宇宙に旅立ちましたが、ディーヴァはフロンティアセッターを危険視しており、撃墜の計画を実行してきました。しかし謎の原因でたびたび失敗。ディーヴァはこれを、フロンティアセッターの攻撃として解釈し、アンジェラがディーヴァに残していたバックアップからアンジェラの複製、アンジェラ・ダッシュ(長いので以降ダッシュで。)を生み出して、その捜索と撃滅を命じます。
一方で、ディーヴァにおける職業訓練校に通っているライカ・アリストラ、ユーリ・アルヴィン、ヒルヴァー・ブラウンの三名は生身の体での宇宙機雷の排除作業を命じられます。この3人はディーヴァ内では非効率と言われ、メモリの無駄遣いとして咎められた創作活動を、当時のまま行い、そのことでディーヴァ管理局からの罰として今回の作業を命じられます。しかし、作業中に大型戦艦を発見したことでその運命は大きくねじ曲がってしまいます。
3人の行く末とは?ダッシュとアンジェラの確執はどうなるのか。フロンティアセッターは無事、外宇宙に旅立てるのか〜と言ったのが楽園残響のプロローグですね。
全部のお話を語っていくとめちゃんこ長くなるので、今回はライカ、ユーリ、ヒルヴァーと、アンジェラ・ダッシュの1人と3人の主人公達にに焦点を当てて語ります。
〈アンジェラ・ダッシュについて。〉
この人、最初っから最後まで悲しさと怒りに満ち溢れた人でした。それがどう解消されるのかも見どころでしたね。
ダッシュの元であるアンジェラの前作での行動はディーヴァ上層部からは叛逆であるとみなされています。そのため、ダッシュに対してもディーヴァ側はかなり当たりが強いです。序盤からかなり可哀想で、ディーヴァ絶対ぶっ壊すマンは多数生まれたことでしょう。僕もその1人です。
序盤ではディーヴァにかなり翻弄され、自爆覚悟の特攻まがいの先方で敵を仕留めようとしたり、かなり冷めた印象です。すごい荒れてました。怖い。
中盤ではガッツリ出番がなく、若者3人がメインになります。
終盤では3人の離反に対して敵対することになります。ここもディーヴァに対する疑念や、3人を助けたいという葛藤が見えて、あぁ、やっぱりダッシュもアンジェラなんだなぁ、と。
それゆえにブラウンとの問答、その結末は悲しくなりました。本当はさっくりライカとユーリと一緒に外宇宙に旅立って欲しかった。それが1番幸せだったと思う。でも、そうしてしまうと助けに来たアンジェラの安否は保証されない。残るべくして残ったのだと思いました。
ブラウンとのやりとりや、オリジナルとの戦いを通じてダッシュも「アンジェラ」としてディーヴァと戦います。ここの戦闘シーンはアンジェラ同士が息の合ったコンビネーションがとても熱く、文章だけで宇宙空間で戦うアーハンがありありと見えました。
死の間際、オリジナルに世間の扱いの酷さを涙ながらに訴えられた時、「あの子達を宇宙に送るために、私が2人必要だったんでしょ?」ってセリフだけでもう…彼女も確かにアンジェラ・バルザックだったんだなぁと思いました。
〈ライカ、ユーリ、ブラウンについて〉
今回の楽園残響は、この3人の青春群像劇からドロドロ愛憎劇に変わって世界創生までがメインです。
ライカは創作に目覚めたユーリが好きな女の子。ユーリは変わり者でライカにいつも怒られてる弟分。ブラウンはクレバーに自分の利益を優先できるやつ。
この3人の中で変わらなかったのはライカだけ。他の男2人はどんどんすごいことが発覚して変わっていってしまいます。特にブラウン。
詳しいことは省きますが、ユーリは秘密結社により生み出された人造の生命体。これが明かされた時、とてもびっくりしました。それ以上に、それをも受け入れる懐の深さを見せつけたライカにもびっくりしました。
ブラウンはダブり、転生者と呼ばれる存在でした。ディーヴァに入る際、今までの人生の記憶を抹消し、新たな人生を生きる。それを選択したブラウンは刈部一矢とよばれた戦災孤児でした。さらにライカはその妹である刈部来夏という徹底ぶり。ここに転生もの要素もぶっ込まれました。これで破綻してないんだから設定すごい。さらには現在のライカは記憶を失う前に、一矢が来夏をもして生み出した娘。
一矢はライカからすれば兄であり、父であり、
来夏はブラウンからすれば妹であり、娘である。
転生ものといえば別世界に行くのが現在の当たり前ですが、一昔前の転生ものといえばこういう「前世で近しいものが立場を変えて近い位置にくるけど、当人はどちらも気がついておらず最後の最後に発覚する」というのが大好きでした。
今回、この3人は運命を捻じ曲げられましたが、終着点は腑に落ちました。
父として兄として、ライカを送り出して死んだブラウン=一矢
過去の全てを投げ打って、夢を追い求め、愛を育んだライカとユーリ。
悲しいけれど、最後には2人を助けたブラウンや、それを忘れないで居ようというライカとユーリの姿勢。最後までこの3人は苦労が絶えませんでしたが、結末の満たされる感じはたまりませんでした。ライカとユーリがしっかり結ばれて、ブラウンの墓を建て、世界にあの名前をつける。全てが結実したよい終わりでした。
〈総評〉
最高。続編としても、ライカ、ユーリ、ブラウンを主人公とした青春ものとしても完成度が高いです。こっち読んで映画見るのもいいんじゃないかな?しっかりまとまったいい完結編でした。
おすすめの楽しみ方は、まず楽園追放をみて、世界観設定の解像度を高めて映像化できる知識をつけたのちに楽園残響を読みましょう。脳汁溢れてたまらんですぞ。