温熱療法について
炎症の起こっている部位(患部)は熱が貯留しています。そしてその熱により人体の構成物質であるタンパク質が変性します。
そのため急性・慢性に関わらず炎症の起こっている部位は、その熱を奪うために氷水で冷却する必要があるのです。
昔から慢性の症状(慢性炎症)に対しては温熱を加えた方が良いと考えられ、様々な温熱療法が施されてきました。
これは温熱刺激によって痛みを和らげたり、患部の血流を良くしようと考えたからです。
しかし、温熱刺激によって痛みが和らぐのは神経の感受性が低下する(痛みが感じにくくなる)からであって、良くなったり治ったりすることとは無関係です。
また温めることで局所の血流は速まりますが、毛細血管網は細く複雑なので、単純に流速が速まれば循環が改善されるというわけではありません。
そして温めることで傷んだ細胞や組織における代謝が亢進するため、その分必要となる酸素や栄養の量も増加します。必要となる酸素や栄養量に対して供給量はそれほど変わらないため、相対的に酸素や栄養が欠乏する状態に陥ってしまいます。
それでは何故昔から温熱療法が行われ、それなりに効果してきたかというと、昔から行われてきた温熱療法、例えばこんにゃく湿布、びわの葉温灸、よもぎ蒸しなどといったものはみな湿性(湯気や蒸気が出る)の温熱療法だったからです。
湯気や蒸気が出るということは気化熱によって熱が奪われるということです。温熱刺激により鎮痛鎮静を図り、筋緊張を和らげ、その上で患部の熱を奪う。伝統的に行われてきた温熱療法はそれなりに理にかなっているわけです。
しかし現在、医科などで広く行われている温熱療法は極超短波(マイクロ波)や赤外線、超音波などの乾性の温熱療法です。これらは患部に熱を加えるため、タンパク質の変性や破壊を助長してしまいます。
もしご家庭などで日々の養生として温熱療法を取り入れる際は湯気や蒸気の出るものにして頂ければと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?