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日々の養生 -熱と冷却について-

人間は恒温動物です。自ら熱を産生しています。 代謝や運動によって生み出された熱は最終的にどこへ行くでしょう? それは体外に排出されています。

人の体は大まかに分けると70%程度が水、あとはタンパク質と少量の無機塩類で構成されています。

何故水がそのほとんどを占めるかというと、水は温度変化が少なく体温を一定に保ちやすいからです。人間の体温は大体36.5℃±1です。低温域は25℃位でも生存は可能ですが、高温域になると42℃位からタンパク質が変性し始め、44℃で凝固壊死します。
もともと人体は熱に対して強くないということです。


この点では人間も自動車やパソコンなどの機械と何ら変わりはありません。どのような機械であれ使い続けていれば熱を帯びてきます。その熱を外界に捨てられないと、すぐに壊れて使えなくなってしまいます。その熱を捨てる機能構造をラジエーターと言います。

人間にも当然このラジエーター機能があります。というかラジエーターだらけと言っても良いと思います。頭髪や体毛、毛穴、汗、(副)鼻腔、肺、毛細血管や静脈叢、血液、脳脊髄液、関節液、筋ポンプ、大小便など挙げればキリがないです。
生物の場合は機械と違って、1つの器官であってもいくつもの役割を与えられていますが、ほぼ全ての器官にはラジエーターの機能が備わっています。その精巧さ、創造の妙に驚かされます。
熱を捨てることは生きることに不可欠なのです。

そして人体に起こる問題のほとんどは本質的に言えば、排熱が上手くいかず熱が溜まってしまっていることに起因しています。
例を挙げれば白内障も肝硬変も熱によるタンパク質の変性がその本態です。
そして人体の各部位に備わっているラジエーター機能を上回る熱が溜まっている状態を『炎症』と言い換えることができると思います。
ですから炎症が起こっている部位は積極的に排熱させる必要があるわけです。積極的な排熱とは冷却するということです。

冷却というとあまり印象は良くないと思います。私も臨床の現場で冷却処置を施す際、たいてい患者さんは良い顔をしません。理論を尽くして説明するのですが、やはり感覚が先に立ちますから「冷たくて痛いからイヤ」とか「身体が冷えるから良くない」と言われることが多いです。

確かに冷たくて始めのうちは痛く感じます。ただ痛みや不快感を感じることが必ずしも身体にとって悪いことでしょうか。「良薬口に苦し」という言葉もあります。また快感を感じることのみが身体にとってプラスに作用するとするならば麻薬などはどう考えたら良いでしょうか。感覚などは案外あてになるものではありません。

身体が冷えるという点についてですが、確かに身体の冷えは心臓などの循環器系に多大な影響を与えますし、万病の元ですので避けなくてはなりません。
ただ治療における冷却は炎症が起こっている部位だけを冷やし身体全体は保温に努めます。よって身体が冷えるということはありません。
体温に影響するほど冷却するには体表面積の9%以上を冷却しなくてはならないので、それほどの広範囲を冷却することはありませんし、全く心配はいりません。

ただ、ひと口に冷却と言っても色々な方法があるので、正しい方法といくつかの注意点を守って実施してください。

一般に市販されている氷のうで構いませんので、その中に氷水を入れて炎症部位(痛みや腫れ、熱感のあるところ)に当ててください。
凍傷を起こす恐れがあるので保冷剤やゲルなどは使用しないでください。水をくぐらせた氷は0℃を下回ることはありませんので凍傷の心配はありません。
1度に冷やすのは2部位まで。心臓部と前頚部は特別な注意が必要になるので、ご自身では冷やさないでください。また眼を冷やす時は濡れタオルを間にはさんでください。
1度当てたらできるだけ氷が解けきるまで当てておいてください。
寒さを感じるようでしたら、上着を羽織ったり、毛布をかぶるなどして身体全体は保温に努めてください。

大まかな方法、注意点は以上ですが、寒冷アレルギーのある方や、循環器系に疾患をお持ちの方などは特別な注意が必要になりますので、詳しいことはお問い合わせください。細かくお伝えします。非常に手軽で経済的ですし効果も大きいので、ぜひ日々の養生法の一つとして取り入れてみてください。

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