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ふたり ♯3
段々、蘇ってくる記憶を辿って、少し険しい県道を辿る。
思い出してみれば、この土地には龍神が存在するらしい。私は小さい頃、少しばかり存在を見たことがある。
祖父は、よくそれは子供が神さまに近いからと言ってたが、神が宿る土地で、大人になって、遠い存在になったのを感じる。
平野の小さな起伏は美しかったと思う。岩山をくりぬいたトンネルは、神が赦してくれたのか少し疑問である。
大きな夕焼けは、今日の宿を思い出す。
チェックイン何時だっけ、ボーッとドラックストアの駐車場でタバコを吸ってお茶を飲んでた。
ゴッツイバイクが停まっていて、同じ様にボーッとしてる髪が真っ黒な女と目が合った。
レザーのジャケット、ソバージュの髪、大きな瞳、峰不二子みたいだ。
会釈をして、目を逸らした。
その女はふと香水を塗り出した。
なんの香りかわかんないけど、多分花の香り。いい香り。
「お姉さんどこか行くの?」
声をかけられてびっくりした、私にかけられてるその声は、香水の香りに良く合う艶のある声だった。
「私ですか」
「あなた以外誰も居ないじゃない」
笑った彼女は困ってる様だった。
「旅館に行きます。」
「へえ、私もそうなの、なんてとこ?」
わたしのスマホの地図を見て、大きな目を更に大きくしていた。
「ここ、私も泊まるの」
唇を尖らせた女は、やっぱり困ってて、笑ってた。
「あー奇遇ですね。変な縁」
「袖触り合うも多少の、でしょう。あなたこそ変な子。私さき行くわ。」
彼女は私の返事を聞かずに、バイクに乗ってしまった。小さな影になっていく彼女もよっっぽどおかしかった。