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「リリィの総て」は本当の生き方を探す女の子の物語

映画、リリィの総てを見た。

直訳のタイトルはデンマークの女の子という可愛いもの。
リリィという女の子が自分の本当の生き方を探すお話しだった。

以下ネタバレ有り


風景画家のアイナーと肖像画家のゲルタ、
ある日ゲルダがアイナーに肖像画のモデルを頼んだことがきっかけで、
アイナーはリリィという女性として目覚めていく。
ゲルタは戸惑いを感じながらも、リリィを支えていく。


作中でゲルダは夫のアイナーがリリィに変化する事について激しく葛藤する余り「バカなゲームはよして」と問い詰める。
とても切実でやりきれないものを感じる。


ゲルダの個展が開催された時に登場する、幼馴染のハンスにはリリィのことを打ち明けた。
そこで夫婦は自分たちで息苦しさを完結させずに、悩みをオープンにして行ったと思う。
それはもう、ゲームではなく、二人の苦悩を解き放った瞬間だった。


ゲルダはアイナーを献身的に愛していた。

ゲルダはアイナーの悩みを友達に話すことで、病院を紹介され、性転換手術を受けることになる。

私はゲルダが「夫のアイナーは、リリィで女だと思う」と言ったシーンが印象的だった。

葛藤の中にも、リリィを尊重したい気持ちがあったからだ。
それは夫でありリリィでもあるアイナーへの深い愛だと思う。

一度目の手術は失敗に終わる。でもリリィは、絵画を描くことを辞め、ブテイックで働くようになる。
「パリでは香水を空中にかけてくぐるのです」そう得意気にお客様と会話を交わすリリィは、まるで本当の女の子のようだった。

「私の事は放っておいて良いのよ」と言うリリィに「あなたの世話を焼くのが趣味みたい」というゲルダは、よき理解者でもあった。

クライマックスでは、リリィは手術が失敗し命を落とす。
「素晴らしい夢を見たの、母が私を抱き上げて、リリィよ、女の子だわ、と言うの。」
ただリリィは穏やかな笑みを浮かべて、息を引き取る。

リリィが巻いてたスカーフは空高く浮かんで行く、一度だけでも本当の女の子になれたリリィは幸せだったのだと思う。

私はそのとき、リリィの総てはアイナーとゲルダの愛の物語だけではなく、
リリィという女の子が、自分はどう生きたかったか、その答えを探す、真実を探す物語にも見えた。

風で飛び上がったスカーフは、リリィの生き様そのものだった。

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