雑日記 : ニューノーマル・サプライズ
先日、誕生日だった。
年齢のインクリメントは今やどうでもいい。
ただし、家族が祝おうとしてくれう気持ちは
ありがたく受け入れたい。
あと、おいしいものを食べられる大義名分なら
いつだって大歓迎である。
ということで、
ふだんよりすこしいいところに外食に出かけた。
予約してくれた夫に確認した。
「もしかして、あれ、頼んだ…?」
答えは、イエスであった。
過去にも何度か利用したお店なので知っている。
私が懸念する「あれ」とは、
誕生日の客へのデザートプレートサービスのことだ。
気持ちはうれしい反面、
ほんのすこしだけ憂鬱になりつつ、
食事は食事で、家族で楽しくおいしく堪能した。
さて、食事も終盤にさしかかったころ、
いよいよ「あれ」が運ばれてきた。
上品にほの暗い店内で、
ろうそくの灯ったデザート盛り合わせが練り歩き、
お誕生日のサービスですと
当人の前に皿が置かれる。
そして、
「お祝いに、歌ってもよろしいでしょうか」と、
数人のスタッフにより、
ブラジルポルトガル語でハッピーバースデーが歌われ、
周りのお客さんも流れで一緒に手拍子を送り…
フーッ!パチパチパチパチ…どうもどうも…
というのが、今年は!なかった!!
デザートプレートは、運ばれてきた。
ただし、1人のスタッフによって、静かに。
歌はなかった。
身構えたところへの肩透かしに
すこしだけほっとしつつ、気づく。
あ、感染拡大防止の対応か、と。
知っていたはずのイベントだったけど、
逆にサプライズになった。
声高に誕生日を主張するのは
ちょっと躊躇ってしまう中年なので
こっそりと済むこちらの方がありがたい。
ろうそくの炎は長男がよろこんで吹き消し、
みんなですこしずつケーキを分けた。
こうして、今年も穏やかに誕生日の食事を終えて、
マスクを再びまとって、席を立った。
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