命の通り道を見た話
(心理カウンセリングにて)
きょうも、目を閉じて体を整え、イメージの中で階段を降りていった。
階段の周囲は、常夜灯のような淡い光だった。
階段を降りきると、人がいた。以前にも会った人だ。わたしを外界から守ってくれている人だ。仕事をそつなくこなし、人間関係を円滑にやり過ごしてくれる。この人のおかげで、わたしは社会生活を送れている。
この人は大抵パソコンに向かっているのだが、きょうはいすを立って、ほほえみながら、奥の方を手で指した。
奥へ進むと、重たそうな木のドアがあった。
開けてみると、黒い空間だった。壁も天井も床もない。
「そっと足で探ってみましょう」とセラピストが言ってくれ、やってみると、わたしは固い足元の上に、立つことができた。端から見れば浮かんでいる。
星々がきらめいている。きれいだ。
「そこに何がありますか?」
「胎児が浮かんでいます」
わたしの目の前には、尻尾のある、丸まった胎児が浮かんでいた。
「話しかけてみましょうか」
わたしは、なぜそこに居るのか聞いてみた。
何も答えない。
その時、わたしは突然、その星々の空間は、命の通り道だと察した。太古から、命が連綿とつながる道なのだと察した。
そこに浮かんでいる胎児はわたし自身だ、と気づいた時、胎児はわたしの胸の中に居た。
わたしは、太古から連綿とつながる命のひとつなのだ。
わたしは、この胎児を通じて、太古からの命いのちと繋がっているのだ。
わたしは分断された命ではなかった。
そう察した。